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セルバンテス短篇集 みんなのレビュー
- ミゲル・デ・セルバンテス (著), 牛島 信明 (編訳)
- 税込価格:880円(8pt)
- 出版社:岩波書店
- 発行年月:1988.6
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文庫
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紙の本
セルバンテス短編集
2020/06/21 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ドン・キホーテ』で知られるセルバンテスの短編集。『ドン・キホーテ』は子供向けしか読んだことが無く、セルバンテスの思想みたいなものにはあまり触れられなかったので、本格的なものとしては初めて。当時の風俗のようなものをしっかりと調べないとわからないと思うのだが、風刺や皮肉がきいていて、おもしろかった。
紙の本
行け行けエスパニョーラ
2009/06/24 00:49
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
16世紀のスペイン、それは「ドンキホーテ」の世界、と言いたいところだけど、実は「ドンキホーテ」は子供向けの読物しか知らなくて、同作者のこちらの短篇集を先に読んでしまったのです。作者の「模範小説集」から3編と、「ドンキホーテ」の挿話1編を集めたのが本書。そこは領主や金持ちが立派な屋敷を構え、たくさんの使用人や奴隷を使い、町娘に恋をしたり、嫉妬したり、ちょっと可笑しくも哀しい思いをしたりする、そういう世界。
「やきもちやきのエストレマドゥーラ人」は、新大陸で財産を作って帰国した男が、金の力で13、4歳の娘を妻にするが、その箱入りさ加減に間男したくなる男が現れる。「愚かな物好きの話」は、ある男が新妻の貞淑を試そうと、親友にある相談を持ちかける。この2作は、人間夫恋愛やら何やらの衝動のために、社会制度や慣習、良識といったものに立ち向かい、網をくぐり抜けようとする情熱のありかを描いていて、微笑ましくも危険な一線を踏み越えるスリルがある。この辺り、日本で近い時代の近松門左衛門あたりと、笑いと涙の方向性の違いこそあれ、似たようなメンタリティを感じてしまう。
「ガラスの学士」は、学識豊かな男が、彼に惚れた女のために、自分の体がガラスでできているという妄想に取り憑かれる。外出時にはその体が壊れてしまわないような装備をするため、町中の人々が珍しがって寄り集まって来てしまう。非常に現代的と言えるテーマのようでもあり、「ドンキホーテ」の一変形のようでもある。世間の枠から一旦外れた人間に対する鷹揚さが心地よいのだが、それがこの時代の風土として戯画化されているのか、異端に対する厳しさへの揶揄なのか。学士の個性が成立するまでの過程とラストの取り合わせも面白いし、やはり悲劇的だが愉快という読後感を持つ。
「麗しき皿洗い娘」では、無軌道な良家の息子が放蕩の旅先で惚れ込んだ美少女を巡る顛末。これは決まりきった展開を描写の豊かさで盛り上げる典型のような作品だが、様々な立場の人々がてんでに独善的な態度で、どんどん話が発散していきそうで、きちんと落としどころに収まるのはマジックのようでもある。同じように他の作も、古典的な神話や民話などに現れるモチーフを当世風にアレンジして、組み合わせて、作者独自のものに昇華させているのでしょう。
「ガラスの学士」がかつてイタリアを旅したように、比べてみればスペインなんてまだまだ田舎だし、保守的だし、というような雰囲気も感じられるのだが、その一方で多くの植民地を経営して覇を唱えているのも隣国イタリアではなくスペインなのであり、そのアンバランスさ、素朴な民衆のたくましさのようなところも謳われているのかもしれない。「ドンキホーテ」読まなきゃ、という気に(一応)なりました。
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