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1983年、韓国でプロ野球がスタートした1年目。このとき、日本球界を飛び出して韓国球界に赴いた4人の僑胞選手を追ったルポルタージュ。日本球界を飛び出してといっても、実質的には居場所がなくなっていたようなもの。ところが、新天地を求めていった韓国でも、彼らは想像以上につらい日々を送っていた様子。在日韓国人とはいえ、日本育ちで韓国語も満足に話せない彼らは、生活文化の違い、野球文化の違いに翻弄される。
「海峡を越えたホームラン」なんてタイトルはカッコいいが、その実、湿っぽく景気の悪い話ばかりが続く。野球はてんで興味がないので、いまいちよくわからない話も多いが、30年近く前の今とは雲泥の差ほどもある発展途上の韓国の様子も垣間見える。
関川氏の取材に同行したカメラマンがこう言ったとか。
「スポーツに国境はない、いうが、あれは一面の真実、一面のフィクションやね。スポーツには民族性という国境がときにはあるんや。そしてそれは自然なことなんや」
見知らぬ祖国に来た4人の選手も、おそらく自分の出自が朝鮮半島にあることが、韓国行きの大きな決め手になっていたことだろう。祖国の、生まれたてのプロ野球の成長に貢献したいという思いがあったころだろう。だからこそ、きっとつらい。まったくのお雇い外国人選手であれば、もっと楽だろうに、馴染まないのに祖国という状況はつらかっただろうと思う。彼らは結局4人とも、韓国で成功らしいものはつかめないままだった。