紙の本
マンの快作
2019/03/26 01:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
休暇でヴェニスを訪れた作家アッシェンバッハ。そこで出会ったポーランド貴族の少年タジオ。アッシェンバッハは少年の美しさに心奪われる。精神的、ギリシャ的なあこがれ。老いた作家は少年の姿を追い求めるうちに命を差し出す。その最後の場面は比類ない。最高傑作と断定するほどこの作家を読んだわけではないが傑作であることは間違いない。それにヴィスコンティの映画も有名だとはいえ、やはりこの原作の方がはるかに良いと思う。名作の名訳。
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美少年に陶酔する初老の作家の話。翻訳小説独特の読みにくいさで、世界に入り込むのが難しかったが、少年を通す美しさの意識や、少年と老人の対比、物悲しさやせつなさを「感じとる」小説だと思う。全体的に美しい。
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ただひたすらに美しい。映画も大好き。芸術作品や何か創作活動をした人なら老いてしまった時、探求の末にたなぼたラッキーもラッキーで現れた答えに必然的に選ぶものは決まってて。遅いよタージオ。
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飛切りの美少年タッジオに魅せられた初老のアッシェンバッハの話。豊富に鏤められた修飾が美少年を描写するのに大きな効果を挙げているように思う。しかし、冗長に感じられる部分もある。
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作品そのもののせいか、それとも訳のせいかは分からないが、個人的にはとてつもなく読みづらかった。それゆえ内容もほとんど頭に入ってこなかった・・・。機会があれば再読したいが。
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ヴィスコンティ監督の映画「ベニスに死す」もよいが、原作も最高!
トーマス・マンの小説技術を堪能できる。
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たまには洋モノも。地位も名声も手に入れた初老の作家が、休暇先のヴェニスで出遭った美少年に恋し、行動の節度を失って、最終的に死に至るという物語。「芸術とはなんぞや」がテーマになっているようです。難解で、良くも悪くも飾り立てられた文章なのですが、美少年タッジオの容姿や行動の描写には、西鶴先生以上の力の入れようで、絵画を見ているかのような読書感があります。そしてめちゃくちゃエロティシズムを感じます。個人的にタッジオとその下男「ヤアシュウ」の関係が気になります。
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タイトルにしても、本文にしても、とても訳がきれいだった。
芸術と実生活をテーマにした作品。老人が滞在先のホテルで出会った美少年に心を奪われる。その行動や心境は、芸術の世界に身をおき、美を求めてやまない芸術家達を象徴しているようだった。
(以下、作品の内容と感想。ネタバレ)
自分を律し、まじめに生きてきた才能のある初老の小説家、アッシェンバッハ。滞在先のヴェニスのホテルでポーランド人の一家を見かける(正確には女家庭教師と子供たち)。そのなかで、ひときわ彼の目を引いたのは、ギリシア美を象徴するような美少年、タッジオ。緊張が緩んだ瞬間、今までの理性的な生活は一転、ずるずると欲望のままに破滅し、最後には一言も声をかけられないまま死んでしまう。
色々な見方があるけれど、平たく言えばいい年したおじさんが恋に盲目になって、ストーカーになってしまう、ともとれる。けれど、表層的なストーリーの裏に、少年と老人を象徴として、いかに芸術家が美を追い求めるか、そして破滅していくかということを表しているのではないかと思う。
作中で、最後ソクラテスは語る。人間は精神的なものへゆくために感覚を通らなければならない。詩人を高めるものは情熱であり、思慕は恋愛なのだ。だからエロスの神が芸術家たちを案内する。人は自然に奈落にひきつけられ、詩人も美を現そうとするがため、陶酔と欲情により、奈落に引かれる。這い上がる力はなく、できることは踏みとどまること。
少年の美をギリシア美で現したのにも、なにか理由があるのだと思うけれど、私が理解したのは、だいたいこんなところ。
個人的に、恋をした小説家が、少年のためにまめに美容院に行って、若くなろうとするところがかわいいと思った。
最初は見ているだけ、それからもっと例の美少年のことが知りたくなる。目が合うだけで、一喜一憂。微笑んでくれたら真っ赤になって部屋に戻る。好かれようと、話しかけようと、若作りをして何度も試みる。最後は夢うつつに美少年のことを思い、死んでしまう。
でも、一喜一憂する姿がかわいかった。
少年の小説家に対する心情は書かれていないけど、少しは彼に興味を持っててくれてたらいいと思う。
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老作家アッシェンバッハが少年タッジオに偏執的な恋心を抱き、堕落して、死ぬ。第一章、第二章が難解で少し退屈した。特にアッシェンバッハの芸術観が述べられる第二章が理解できなかった。第三章以降、トーマス・マンの文章に圧されて、アッシェンバッハの狂った恋心にどんどん巻き込まれていった。
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うっかり読んでしまったラストでこれほど感動するものかと思った。
とにかくこの話がダンディーなイギリス人が雨のヴェネツィアでかっこいいこと言いながら
死ぬ話だというよくわからない勘違いが解消できてよかった。
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初老の男が美少年に恋をするということから同性愛を描いた作品だと捉えられがちですが、この作品はそれだけに止まりません。美少年、タッジオは美の化身として描かれており、それを追い続けたアッシェンバッハという、一人の芸術家を描いているのです。なかなかの名作。
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著者の腕前か、訳者の腕前か、あまりにも美しい描写。けれども残念なことに、一つ一つの描写が緻密すぎる。一文一文を味わうには文句のつけようがないのだが、物語全体を楽しむにはいささか抑揚に欠けるように思う。
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読み慣れない文章にてこずった。なにしろこの岩波文庫、図書館で借りたんだけど、1987年発行の40刷、定価が¥200というのは時代を感じさせる。訳の文体はともかく、文字の大きさ、フォントにもてこずりった。カタカナ表記部分、絶対に「−」を使わない主義らしい「トオマス・マン」「テエブル」「エレベエタア」なのだから。また、難しい言葉の使用法が独特「諧謔」(かいぎゃく)「愕然」(がくぜん)は漢字にルビなのに「のうずい」(脳髄)「せっぷん」(接吻)「せきつい」(脊椎)「まんえん」(蔓延)などはひらがな表記。単語を目立たせる手法なのかと思ったけど、いくつも繰り返されるので訳者の癖なのかと思う。
冒頭、ぐだぐだと話がなかなか進まないので読むスピードも遅れがちなのだが、老作家が少年に会ったころから惹きこまれる。
少し病身にも見える完全なる美、陽のあたる海岸に築く砂の城、熱風と石炭酸の臭い、激しく燃える太陽、すべるように進むゴンドラ。少年と老作家の言葉が通じないことで「完全なる美」の手が届かないが故の憧憬がさらに増す。ただ単に「耽美」とか「恋」とか現代風に言うならば「やおい」か「BL」風味か(違う気も)、というよりは「美」そのものを追求するあるいはせずにはいられない魂の物語、なのではないか。
手が届かなくても求めるものがあったほうが幸せか、それを知らないまま過ごした方が?私は求めたい、貪欲に。
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ある、神かと思うほど美しい少年に初老の主人公が
恋に落ちる作品。
少年の美しさを引き立てるように、
出てくるその他の人物が汚れて見えました。
少年が美しいのか、周りにいる人たちがそうでなさすぎるのか、
よくわからなくなるほど。
これは主人公の目線がそうであったからゆえの感覚なのかな。
言葉を交わすことなく、ただ「見る」事だけで
あそこまで恋しく思う気持ちって、
ただただ純粋なのだなと。
自分が中学の頃、目で追う事しかできなかった
あの感覚を、ふと思い出しました。
初老の男性が少年に心を奪われるなんて
あるわけない、おかしな展開になるんじゃないか?っと
思いながら最初は読んでいましたが、
いつのまにかそれがむしろ当然の事に感じてくる。
なんだか不思議な気持ちになりました。
先日耽美的作品のサロメを読みましたが、
こちらはとっても静かな耽美を味わえるものだと思います。
深い。理解度40%ほどです。
何度も読まなければいけないな
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ドイツの文豪トーマス・マンが30代のときに書いた作品。あるひとりの初老の作家がギリシャ神話にでてくるような美少年に一目ぼれするが、恋は叶うことなく伝染病にかかって死んでしまうストーリー。
単純明快な内容ではないしむしろ難しいが、少年が海辺で遊ぶ姿を追いかける目線から目に浮かぶ情景描写が何とも言えず素晴らしく、これを和訳した訳者の才能にはさらに驚かされる。
30代でよくこんな作品が書けたものだなと思うしドイツ文学の代表作というのでなんとなく堅そうなイメージがあったが、読んでみるとそうでもなくむしろやわらかくて繊細。一行一行、時間のあるときにもう一度丁寧に読んで見たい。