紙の本
様々な文面が凝縮
2019/02/18 08:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の論説文や、ベートーベン自身からの手紙、ベートーベンを取り巻く人たちからの手紙など、種々の文面が1冊に纏まっています。
ベートーベンといえば耳が聴こえない病と闘って・・・、というのは知っていましたが、その悲痛さが本書からひしひしと伝わってきました。音楽家にとって耳は大切な要素です。
著者自身はかなりベートーベンに傾注した人物でしたが、著者の論説自体は私にとってそれほど強い印象は残りませんでした。手紙の文面からの訴えの方にインパクトがあったからかもしれません。
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著者ロマン・ロランという人はベートーヴェンを愛してやまない人だと思います。訳が少々読みづらい硬い文章ですが、それでも、ベートーヴェンという人間が確かに生き、素晴らしい曲がこの世に生まれた事実をロマン・ロランが渾身の想いで書いています。よりベートーヴェンの曲に理解を深めたい方へ。
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ベートーヴェンという天才は、他の天才的芸術家の例に漏れず、健康問題、人間関係、貧困という苦難にもまれながら名曲を残していった。
ベートーヴェンというと、まず、難聴の天才音楽家というイメージが強いが、それによる精神的な問題以外は屈強な身体をしていた。この点が、音楽の戦闘的な戦慄、激しさ、雄雄しさにも反映されているように感じる。
もちろん難聴という障害が彼の生涯、精神、作風に与えた影響は語りつくせぬものがあるであろうが、著者の記述からはそういった側面はあまり感じられない。耳の障害とベートーヴェンという天才、その音楽についてロランは、むしろ耳が聞こえなくなったことが一層、ベートーヴェンの自然に対する愛を深めたというように積極的に捉えているように感じる。
一方で、彼自身は自身の才覚を意識し、「救済者」、音楽を通じて人々を救うという使命間にも似たものを背負っていたようだ。
たとえばそれは、「俺は人類のために精妙な葡萄酒を醸す酒神(バッカス)だ。精神の神々しい酔い心地を人々に与える者はこの俺だ。」という彼の光栄の時期における発言にも感じ取ることが出来る。
またその使命感は、家族に対する愛にもつながる。ベートーヴェンは甥カルルを引き取って正しく育てようとしたが、彼の愛は甥には必ずしも通じず、生涯を通して天才はこの問題に苦悩した。
そしてベートーヴェンは家族愛だけでなく、恋愛にも没頭した。ジウリエッタやテレーゼといった女性を愛し、とくにテレーゼとの幸福な恋愛は彼の楽曲創造に大きく影響を与え、別かれた後も彼のより所となっていたようだ。彼はテレーゼを、「あなたは本当に美しくて偉大だったね。まるで天の使いたちのようだったね。」と表現している。
不埒な父親や、自分の愛を受け止めない甥など、必ずしも家族愛に満ちていたとはいえないが、恋人、そして友人シントラーなどの彼の理解者は常に存在し愛にも満たされていたと思われる。
この『ベートーヴェンの生涯』の著者、ロマン・ロランは『ジャン・クリストフ』というベートーヴェンをモデルにした大河小説によってノーベル文学賞を受賞しているが、この『ベートーヴェンの生涯』は、それが発表される以前にかかれたものである。
従って、ロランは小説の格好のモデルとしてベートーヴェンという人物に興味を持ったのではなく、ベートーヴェンという人間に惹かれ、そしてその音楽を愛していたからこそ『ジャン・クリストフ』という大著が完成できたのであろうと察せられる。
この『ベートーヴェンの生涯』は、ロランのベートーヴェンに対する愛にあふれる視点から、感情の起伏とその時折に創造した楽曲を含め彼の人生が描かれている。したがって、この著作を読みながら楽曲を聴いて、ベートーヴェンという天才の生涯に思いを馳せてみるというのも非常に楽しいベートーヴェンの楽しみ方ではないかと思う。
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完全にファン向け。ベートーヴェンについて、俺のような一般的な知識しか無い物にとっては、良く分からない。と言って、何か得る物や頷ける物があるかと言ったら、そうでもない。つまりファン以外は読む必要も無い。以上
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この本を読んでいる間のほとんど、私は何の音楽もかけてはいなかった。
だが、もしベートーヴェンに親しんでいる人が彼の音楽を聴きながら本書を読むとしたら、しばしば読むのを中断しなければならないほどの感動に襲われるかも知れない。
ロマン・ロランの文章は、神を賛美するような情熱と愛情に溢れていた。
それは予想を上回る情熱だったが、読み終えた今、もしそう書かれていなかったなら、胸を締め付けられるような感動を得ることは恐らくなかっただろう。
ベートーヴェンの生涯は想像しがたいほどの苦悩に満ちていた。
しかし、彼の魂は、その苦悩を生ける神としての芸術を創造するという歓喜へと至らせた。
そして、その芸術が彼のためではなく、人類への献身的なものだということが、ベートーヴェンを、昨日の、今日の、明日の悩める人類の友とならしめているのだ。
苦しみにおしつぶされそうになったら、ベートーヴェンの魂に触れて慰められよう。
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ロランのベートーヴェン観は、「苦労している人々にベートーヴェンの音楽はこの上のない励ましを与える」ということになると思う。いってみれば、クラシックの頑張れソングな訳だが、現代のロッカーと違うのは、ベートーヴェンが本当に辛酸を嘗めながらも、膨大な曲々を(人々に?神に?)捧げ続けたことなのだと思う。
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「人生というのは、苦悩の中においてこそ最も偉大で実り多くかつまた最も幸福である。」
このフレーズがどうしても頭を離れない。
言葉の定義は人それぞれで、幸福の定義も三者三様。
ただ、上記の定義が限りなく真実に近いのであれば、
自分自身が感じている幸福というのは何なのだろう?とも思う。
ベートーヴェンの音楽を聴きながら読むと、
彼の熱い思いが、心に強く訴えかけてくると思います。
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(1966.10.22読了)(1966.10.12購入)
内容紹介
少年時代からベートーヴェンの音楽を生活の友とし、その生き方を自らの生の戦いの中で支えとしてきたロマン・ロラン(1866―1944)によるベートーヴェン賛歌。20世紀の初頭にあって、来るべき大戦の予感の中で、自らの理想精神が抑圧されているのを感じていた世代にとってもまた、彼の音楽は解放のことばであった。
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ベートーヴェンの音楽には、彼自身の人生の足音を聞くような感覚があります。ベートーヴェンを好む人はみんなそうなのかもしれないと、この本を読んで感じました。
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これじゃなく角川文庫の同名本を読んだんですが…、途中ギブアップ!
翻訳者が違うせいもあるのかよくわかりませんが、少なくとも読んだ本は一片の面白さも感じ取れなかった。
恵まれない子供時代、恋愛の破綻、孤独、不良の甥、病気、貧困などなどベートーヴェンの不幸ばかりがクローズアップされて気が滅入った。
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学生時代に読んだものを再読。無性にドイツに行きたくなります。
『ジャン・クリストフ』のロマン・ロランによるベートーヴェン賛歌。
この本を読みこなすには私のベートーヴェンの音楽に対する知識が足りなかった。
不遇な人生を高貴な魂をもって乗り越えようとしたベートーヴェン。
その孤独な姿はあたかも「リア王」、髪の毛は「メデューサの頭の蛇たち」と例えられたとか。
以下引用
人類の最良な人々は不幸な人々と共にいるのだから。その人々の勇気によってわれわれ自身を養おうではないか
人生というものは、苦悩の中においてこそ最も偉大で実り多くかつまた最も幸福である
彼は近代芸術のなかで最も雄々しい力である。彼は、悩み戦っている人の最大最善の友である。世の悲惨によって我々の心が悲しめられているときに、ベートーヴェンはわれわれの傍へ来る。
不幸な貧しい病身な孤独な一人の人間、まるで悩みそのもののような人間、世の中から歓喜を拒まれたその人間がみずから歓喜を造り出す
「悩みをつき抜けて歓喜に到れ!」“Durch Leiden Freude.”
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ロランによるベートーヴェンの伝記部分と、
ベートーヴェンと友人達の手紙のやりとり、
ベートーヴェンの思想断片、
そしてベートーヴェン記念祭でのロランの講演、
複数の角度からベートーヴェンについて書かれている本。
ただ、ロランの愛情たっぷりで少し偏っているかもしれない。
『ミケランジェロの生涯』と同じく、悲劇的な側面を大きく取り上げている。
ベートーヴェンが生み出した曲の裏側にある苦悩。
彼を最も苦しめたのは音楽家には致命的な耳の病気。
それに立ち向かう力強い姿と、孤独のうちで苦しむ姿。
筆不精なベートーヴェンが友人に送った手紙から、苦悩が伝わってくる。
ベートーヴェンは自分の障害を乗り越え、曲を残すことによって、他人に役立ちたいと考えていたという。
そしてその曲たちは現代までその役目をしっかり果たしている。
ベートーヴェン歿後100年の記念祭(ウィーン)でのロランによる講演の一節。
この勝利は孤独な一人の人間のもののみにとどまらない。それはまたわれわれのものである。ベートーヴェンが勝利を獲得したのはわれわれのためにである。彼はそのことを望んだ。p.172『ベートーヴェンへの感謝』
一番しびれたのは『第九交響曲』が生まれるエピソード(p.63-68)。
初演では聴衆が泣き出すほどの感激を巻き起こし、演奏会のあと、ベートーヴェンは感動のあまり気絶したという。まさに歓喜の瞬間。
悲劇のうちから歓喜を造りだした、熱い生涯。
ベートーヴェンについて、もっと知りたくなった。
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ベートーヴェンを崇拝したロマン・ロランの著。
ロマン・ロランといえば反戦理想主義者のノーベル文学賞受賞者として有名ですね。
ベートーヴェンの音楽には精神性が宿るとし、その艱難に満ちた人生からベートーヴェンの音楽を紐解きます。
タイトルでもある「ベートーヴェンの生涯」は案外短い文章で、さらっと読めます。
ほか、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」が読み応えあります。
自分の聾唖に絶望し、この遺書を書き残しました。
ところが、そのあと「豊作の森」と言われるエロイカなどの名作を次々と生み出します。
絶望が創作意欲に結晶したといわれていまして、その源泉を垣間見ることができました。
また、手紙や思想断片など、ベートーヴェンの内的世界に近づける著となっています。
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著者の敬愛するベートーヴェンの生涯についてやハイリゲンショタットの遺書、手紙、講演などが収められていている。貴重な史料である。遺書や手紙には厳しい人生に立ち向かうベートヴェンの強い意志が感じられ、特に良かった。ただ生涯の部分がもう少し詳しく書いて欲しかったので残念である。
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交響曲第九を聞くうちに、読みたくなった一冊。ロマン・ロランによるベートーヴェン論。伝記ではないが、彼の苦悩に満ちた生涯とその音楽を重ねて考察。ベートーヴェンへの感謝が溢れている。
『悩みとつき抜けて歓喜に至れ』