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カトリックの司祭であり、大森曹玄のもとでの参禅の経験をもつ著者が、「道」というテーマをめぐって哲学的・神学的考察を展開している本です。
本書における「形而上学」ということばには、「メタ・エチカ」と「テオ・ロギア」という二つの読みかたがあります。「道の形而上学(メタ・エチカ)」は、道元の思想を手がかりにして構想された概念で、道元の「典座教訓」において顕現しているのは「道」そのものであり、しかもそれは出会いないし対話の根底にあるということから、「エチカ」に対する「メタ・エチカ」すなわち「超・対話」の意義をもっていると著者は論じています。
他方「テオ・ロギア」とは、聖書におけるイエスと弟子たちとの対話によってもたらされる、「言葉にならない超・対話」を意味しています。著者は、「求道の旅」をつづけた松尾芭蕉や道元における「道の形而上学(メタ・エチカ)」を手引きとすることで、従来の西洋における神学思想のなかで十分に展開されることのなかった「道の形而上学(テオ・ロギア)」の可能性を開拓しようとする試みをおこなっています。