あー「昭和」。あー「下町」。温かい。
2011/11/06 17:08
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投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういう日本を代表する作家の本は、少なくとも1回は読まなくてはいけないよね。なんとなく縁がなくてこれまで読んでいませんでしたが、どこかの教育雑誌の「小学高学年への推薦図書」に入ってきたのがきっかけで読んでみた。
70年代から80年代にかけての東京。小岩、亀戸、船橋あたり。都心ではなく、高度成長時代に、少しだけ遅れていた地域、すなわち、いい意味での「旧」と、避けられない「新」が、微妙なバランスで成り立っている街が舞台です。短編なのでその背景はまちまちですが、小説家なのか劇作家なのか、とにかく好奇心旺盛のモノカキが、街中で拾う「コネタ」。それがまた「人間」くさいもので、というか、人間の生活そのもの。小説のテーマにもならないようなものではあるけれども、ひとつひとつの会話、行動から、その背景の推察まで、みごとに「小説的」に仕上げています。
そして、短編でありながら、最後にみごとな「オチ」が用意されているのが絶妙。ちょっと皮肉的な、でも人間だから、っていう下町的な、ノスタルジーも含めて、ホッとするようなオチが最後にやってきます。教育系雑誌の「推薦図書」としてはどうかと思うような「大人の」シュールなオチもありました(個人的にはこれが一番面白かった)。
昔を懐かしむ、ってけして悪いことじゃないですよね。昔のいい思い出(いやな思い出は意識的に或いは無意識に消されているかも)だけに固執して、現世を厭うのはどうかと思うけど、今があるのは、昔があるから、という「蓄積」という考え方に気づけば、素直に昔を「受け入れる」ことができれば、今、そして未来、ってその大切さが違ってみえてくると思う。変わらないのは、主人公たる「人」ですよね。周りは進化して、便利になったり、逆に昔を懐かしんだりしても、それらを思う主体は「人」。少なからず「進化」しているかもしれないけれど、人間そのものは変わらない。だから本書にでてくる人間模様は、30年経った今読んでも、温かくて、なんだか(うまくいえないけど)うれしいんだよね。不思議な感覚だけど、「読んでよかった」という読後感です。こういう本を読む、というのが、自分にとってプラスになる。そんな「出会い」を大切にしたいし、積極的に「読むべき本」に出会いにいきたい。
【ことば】...うまく行かないときは、このことばを思い出してください。『困難は分割せよ』。焦ってはなりません。
なんちゃってコンサルがいうと「ウソ臭い」言葉も、かつての教え子に修道士が言い含めて伝える言葉としては重い。ましてそれが「最後の言葉」ともなれば...大事な愛すべき者との別れの際、自分なら何を伝えるだろうか。そこまで貫ける愛はあるだろうか。
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知り合いに貸すと、「教科書に載ってたよね」と言われました。
そうだっけ?
井上ひさしの中ではかなり読みやすい1冊。
「ブンとフン」「吉里吉里人」もオススメ
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著者はあの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の原作者であり、吉里吉里国の建国者でもある。有名な作家。
その作家の心温まる短編集です。
「握手」は教科書に載っていました。
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懐しい町の匂いを求めて、私はときどき駅を降りてみる。四谷しんみち通り、20年前の野球少年たちはどうしているだろう。ぷーんと木の香をさせていた職人のおじさんは元気にしてるだろうか。バスの窓から見る風景も、雑踏の中で垣間見るドラマも、東京の町はすべて通りすがりの私の胸に熱く迫ってくる。
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著者自身の目線で日常を描いた短編集。『春休み』は幼い兄弟の家出の背景が、『新宿まで』は東京の都営バス車内でのやりとりが、そして『握手』では孤児院の修道士との最後の会食の場面が鮮明に浮かんでそれぞれ胸に迫るものがありました。
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「ナイン」が教科書に載っていたこともあり気になって読んでみました。
中学の時に「握手」を読んだ記憶がよみがえりました。
少しずつ繋がっている感じが面白かったです。
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「握手」ルロイ修道士が秀逸。
両手のひとさし指をせわしく交差させ打ちつける → 「おまえは悪い子だ」
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購入したのは3年くらい前だから、実際には再読。
全てフィクションだと思うのだが、まるで私小説であるかのように思わせる。
短編集であり、いくつかの作品は中・高等学校の国語の教科書に採用されている。
じんわりする心暖まる話もあれば、世の中の世知辛さを感じずにはいられない話もある。
きっと舞台は昭和30~40年代だろう。
実際にはまだ生まれていないが、昭和ののんびりした、古きよき時代を感じさせてくれる一冊である。
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ルロイ修道士の話が急に読みたくなったので注文して読んだ。
懐かしさやら何やらがこみあげてきて涙が出てきそうだ
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短編集。
掌編=手のひらにのるような、話もあれば、深く余韻を残す作品もある。
人生とか、優しさとか、そんなイメージが浮かび上がってきます。
「新宿まで」、「会話」、「握手」が印象に残りました。あと、おじいちゃんたちの話や、ちょっとしたことで運命が変わってしまう話も。
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『吉里吉里人』を昔読んでおもしろかったので購読。野球チームのナインのその後をえがく短編集。
そこはかとなく昭和の空気が漂いほっとする。特に『握手』は教科書に載った作品だそうでじんわりやられる。
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子供の夏休み読書感想文で指定されていた本です。読んでみてびっくり。思いっきりR18指定って感じの展開が随所に。表現は直接的でないものの、それを暗示する場面があちらこちらに登場。これで良いのか?と思わせられました。安心できるはなしは後半に多く、「新宿まで」、「会食」、そして感謝一杯の「握手」は良かったです。表題作の「ナイン」も良かったな。あとは大人のはなしですよね。「太郎と花子」なんて、まったくの下ねたコントだし、「傷」もやばかったな。
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夫には「あだち充じゃないの?陸上部の後輩とか登場しないの?」とか言われたが全然違う。しかし昭和のくだらない猥雑さが色濃くて、多少においは近いのだ。無駄な水着シーン、無駄な下着描写。
喫茶店で男女の会話に耳をそばだてる『太郎と花子』の感じとか、『ショートプログラム』の「喫茶店」に近い。(ただしオチはより直接的に下品)
『握手』だけなら確かに中学の教科書に載せられるけど、他が昭和の猥雑さが色濃すぎて、一冊通して読むと印象が全然違う。
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最も印象に残ったのは、タイトルにもなっている「ナイン」だった。幼い頃に感じた大きな大きな信頼は、あの頃から多くの時間が過ぎ去り大人になっても揺るがない。決して色褪せることのない当時の気持ちと光景。それはとても尊いことのように感じた。
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東京が舞台の16篇の短篇小説を収録。1987年刊。
表題作の「ナイン」は、中学の野球部でキャプテンだった正太郎が大人になって周りに迷惑をかけるも、元チームメイトたちが彼を庇うという話。夏の日差しに影を作ってくれた優しいキャプテンだったからこそ、みんなで支えようとしていた。昭和な街並みの風景がどこか懐かしい。