紙の本
読みもらしたものが多数
2016/02/10 06:43
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投稿者:earthbound - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みもらした短編が多数有ったのですが、全集のお陰で読むことが出来ました。
また、筆者自身の解説が秀逸です。
余り自身の小説の内容について語らないので、非常に面白いです。
紙の本
我が家では本の左上、あの切手を模したデザインが評判です。この巻は短篇なのでいろいろなタイプの作品を楽しめます。個人的には「カンガルー通信」と「踊る小人」ですか・・・
2008/07/12 20:25
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装幀は和田誠ですが、本の左上、キノコの切手が可愛いです。これ以外は何もない、それで見せるわけです。あとは表紙の紙質と背の文字のレイアウト、函です。シンプルに決める、というのはある意味全集の基本ですが、切手、はないです。これだけでも装幀史に残るんじゃないか、なんて思います。
さてこの本、初版は1990年で手元にあるのは2003年で6刷となっています。派手ではありませんが、コンスタントに売れているのでしょう、ネット書店でみても古書でない本が待たずに入手できるというのは立派です。とはいえ、私はこれまで全く読もうとしてこなかったこの全集で、彼の短篇を読むことが出来ました。
中国行きのスロウ・ボート 「海」1980年4月号:記念すべき初めての短篇。タイトルが先にあって書かれたという。
貧乏な叔母さんの話 「新潮」1980年12月号:メイキングにもなっている、ある意味メタ小説。
ニューヨーク炭鉱の悲劇 「ブルータス」1981年3月15日号:ビージーズのヒットソングのタイトルありき、の小説。
カンガルー通信 「新潮」1981年10月号:カセットテープ小説として書かれたという村上お気に入りのお話。デパートに村上が苦情を言っていた、というのは笑える。
午後の最後の芝生 「宝島」1982年8月号:今回、余り手が加わらなかったという小説。こういうバイトの人、好き。
土の中の彼女の小さな犬 「すばる」1982年11月号:村上が気に入っていない、という作品。
シドニーのグリーン・ストリート 「海」臨時増刊「子どもの宇宙」1982年12月号:『マルタの鷹』にでてくる通りから思いつかれた話。
――以上『中国行きのスロウ・ボート』(1983年 中央公論社刊)所収
螢 「中央公論」1983年1月号:まとうなリアリズム小説を目指したとか。『ノルウェイの森』の元となった話。
納屋を焼く 「新潮」1983年1月号:フォークナーの小説のタイトルから思いつかれた作品。
めくらやなぎと眠る女 「文学界」1983年12月号:「めくらやなぎ」という言葉が気に入って書かれたという。
踊る小人 「新潮」1984年1月号:本人自ら創作の経緯を「謎」という、ハード・フェアリテイル。
三つのドイツ幻想 「ブルータス」1984年4月15日号:ドイツ取材に基づく作品。
――以上『蛍・納屋を焼く・その他の短篇』(1984年 新潮社刊)所収
雨の日の女#241・#242 「L’E」1987年1月号:雑誌に発表されたまま短篇集にはいらず、この全集に入った作品。
〈英訳初出誌〉
『貧乏な叔母さんの話』「ニューヨーカー」’01/11/26
『ニューヨーク炭鉱の悲劇』「ニューヨーカー」’99/1/11
『納屋を焼く』「ニューヨーカー」’92/11/2
バラエティに富んだ内容なのと、いわゆる構造がはっきりしたエンタメではなく、文学系エンタメなので詳細は書きません。ただ私の好みで言えば、やっぱりおだやかでユーモラスな探偵譚「カンガルー通信」と「午後の最後の芝生」、土俗民話的な「踊る小人」が好きです。特に前の二つは、村上以外のだれも書けない作品でしょう。
本文にあとがきはついていませんが、「自作を語る」短篇小説への試み、という月報みたいなものがついていて、そこで創作姿勢や今回、どれほど加筆修正されたかなどが詳しく述べられています。二編の短篇集では、後者のほうが手が入っているというのは、内容が難しくなっているせいではないでしょうか。
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★
「雨の日の女#241・#242」と舞城の「スクールアタック・シンドローム」の序盤にシンクロを感じました。と思って舞城読み返してみたらそうでもなかった…
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村上春樹の初期の短編が編纂されている作品集。
いくつかの作品は大幅に加筆訂正されている。氏の説明をそのまま引用すれば「読み直してみると、小説的にクリアではない部分がまだまだ多すぎるように思え」たということで、書き直したらしい。このような意図に基づく改稿は、私のような読解力に欠ける読者にとっては、非常にありがたいことだった。全体的に筋がはっきりして、エピソードの有機的な連関が理解しやすくなっている。収録作品は文庫などで既読だという人にもオススメ。
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シドニーのグリーン・ストリートが個人的に好きっていうかもう俺は羊男が好きなんですよね。心ゆくまでフィクションであります。初期独特の雰囲気のよさがいい。
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中国行きのスロウ・ボート 貧乏な叔母さんの話 ニューヨーク炭鉱の悲劇 カンガルー通信 午後の最後の芝生 土の中の彼女の小さな犬 シドニーのグリーン・ストリート 螢 納屋を焼く めくらやなぎと眠る女 踊る小人 三つのドイツ幻想 雨の日の女#241・#242
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「中国行きのスワロー・ボード」、「蛍」、「納屋を焼く」・・・中国人との出会いの話は、著者と同じように、私も高校時代のクラスメートに多くおり、全く同じ経験をしたような懐かしさを感じました。駒込で分かれてそれから会えなくなった女の子の話は、ありそうで、悲しいです。「貧乏な叔母さんの話」「ニューヨーク炭鉱の悲劇」「カンガルー通信」といずれも、登場人物の名前が出てこないことはこれまで読んだ長編とも共通していることで、興味深いです。そしていずれもが「僕」が語り手ですね。「」はどう見ても阪急御影からの鴨子ヶ原行きバス、甲南病院の世界、小説の内容はともかく、その描写に興味津々でした。著者がこの本では赤塚山高校出身に変わってしまっていましたが。
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『午後の最後の芝生』,『めくらやなぎと眠る女』,『踊る小人』,『雨の日の女 #241・#242』が好き。
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中国行きのスロウ・ボート
貧乏な叔母さんの話
ニューヨーク炭鉱の悲劇
カンガルー通信
そうだ、言い忘れました。僕はこの手紙を「カンガルー通信」と名付けました。
午後の最後の芝生
土の中の彼女の小さな犬
彼女は席につくと簡単にメニューを点検し、グレープフルーツ・ジュースとロールパンとベーコン・エッグとコーヒーを注文した。選ぶのに15秒くらいしかかからなかった。ベーコンはよく焼いてください、と彼女は言った。どことなく人を使い慣れたしゃべり方だった。そういうしゃべり方がちゃんとあるのだ。
どちらかといえばやせた方だ。背はそれほど高くない。美人といえなくもないけど、唇の両端が独特な角度に曲がっているのと瞼の厚ぼったさ―強固な偏見のようなものを感じさせる―が好みの分かれるところだろう。僕の好みからいけばとりたてて悪い感じはしなかった。服装の趣味はよかったし、身のこなしもすっきりしていた。何よりもよかったのは雨の金曜日にリゾート・ホテルの食堂で一人で朝食をとっている若い女性が発散しがちなあの独特の雰囲気がまったく感じられないことだった。
「煙草をお持ちじゃありません?」と彼女は言った。
「あてていいですか」とタイミングをみはからって僕は訊ねた。「あてるって、何を?」「あなたについてです。どこから来ただとか、何をしているかだとか…そういうこと」「いいわよ」と彼女はなんでもなさそうに言った。
彼女は頬杖をついたまま僕の方を見た。「いいわよ。言ってみて。もしそれが気に入らなかったとしてもすぐに忘れることにするわ。あなたの方もすぐに忘れる―それでいいでしょう?」
「石鹸の匂いだけです」と僕は言った。
シドニーのグリーン・ストリート
シドニーでもいちばんしけた通りである。
螢
僕と彼女は四谷駅で電車を降りて、線路わきの土手を市ヶ谷の方向に歩いていた。五月の日曜日の午後だった。朝方降った雨も昼前にはあがり、低くたれこめていた鬱陶しい灰色の雲は、南からの風に追われるようにどこかに消えていた。くっきりとした緑の桜の葉が風に揺れて光っていた。日射しにはもう瑞々しい初夏に匂いがした。
「ねえ、もしよかったら―迷惑じゃなかったらということなんだけど―また会えるかしら。もちろんこんなことを言える筋合じゃないことはわかってるんだけど」と別れ際に彼女が言った。
納屋を焼く
めくらやなぎと眠る女
踊る小人
三つのドイツ幻想
雨の日の女#241・#242
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「踊る小人」のような独自の世界をつくりあげるところが気に入った。だいたいの物語の語り手は一貫して似ている。もの静かで、若干根暗であり、世の中の歯車と合わない人物像が共通している気がする。
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村上春樹の短編は、長編のウォーミングアップみたいなとことがあるが、韓国映画を見て気になって「納屋を焼く」を読み直した。ついでに、結局、一冊読みなおした。何も解決しなかった。気になったことは解決しなかった。
やっぱり「蛍」がよかった。そうなると「ノルウェーの森」を読みなおすことになるのかな?
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「中国行きのスロウ・ボード」と
「螢・納谷を焼く」の2つの本の短編が
収録された本。
村上春樹の本の良さは、
登場人物がみな魅惑的なところだなあと改めて実感。
穏やかさと健康さにはたとえ文面であれ惹かれるものだな。
「土の中の彼女の小さな犬」が好き。
自分の弱さを語りながらもそんな自分が嫌なのだろう。
一人で旅する理由も強くありたいの気持ちなのかな。
孤独に無抵抗であろうとする彼女の姿が素敵で。
またひとつ影響を受けた。
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どこからストーリーを語り始めるか。単純なようで奥が深いこの問いを、若き村上春樹は問いながら慎重に作品を書き始める。あまりにも「(ウェルメイドな)小説らしく」なりすぎないようにさり気なく、だがしかしキマった書き方をしようと……「貧乏な叔母さんの話」を読むと特に「なぜこの話を書かなければならないのか」という(多分に自問自答めいた)問いが鼻につく。だが、その真摯さというか批評家的視点があるからこそ彼が凡百の作家と(レベルの高低はさておき)違った立場に立てるのかもしれないと思うから端的に困る。なるほどユニークだが