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紙の本
だからこれは小説なんだってばさぁ
2002/07/14 01:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KON太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずもがなの清水義範の代表作である本書は、「吉川英治文学新人賞」を受賞した作品でもある。いわゆる短編集で、「国語入試問題必勝法」は7編ある作品のうちのひとつである。その「国語〜」については、ほかの書評を読んでもらうことにして、ここでは、他の6つの短編を紹介しよう。
「猿蟹合戦とは何か」は、軽妙洒脱の文章でとりこにさせてくれる丸谷才一氏の「忠臣藏とは何か」のパロディである。独特の「さういふものぢゃないだらうか…」というような古い文体なのにとても柔らか味のある文章は、誰でもすぐに真似したくなるものだが、清水氏はこの文体で猿蟹合戦を見事に説いてしまうところがすごい。
「時代食堂の特別料理」は、心にじんわりくるハートフルストーリー。裏道を入った人気のない通りにたたずむ一軒の古びた「時代食堂」。そこで出される特別料理は、その昔ながらの味とともに食べた人のかつての記憶をよみがえらせて、懐かしいあの頃の気分にさせてくれる不思議なものだった。
「靄の中の終章」は、ボケ老人が主人公の恐ろしくもやるせない話。自分が奇妙な行動をとっていることに気づかない老人は、最終的には意識が混濁して薄暗いもやの中で終焉を迎える…。
「ブガロンチョのルノワール風マルケロ酒煮」は、ミニ情報満載の料理の作り方(レシピ)の小説。愉快におしゃべりしているうちに、おいしそうな料理が出来上がっていく料理番組のようなもので、一度作ってみたくなるほどだ。しかし、材料は架空の珍品ばかりだから、食材屋さんに行って「ブガロンチョをください」と言うと恥をかくことになる。
「いわゆるひとつのトータル的長嶋節」は、エッセイ風の長嶋茂雄論。解説者としての長嶋の言動を他の解説者との対比で際立たせる。また、もしも長嶋茂雄が学校の先生だったら、ワイドショーのコメンテーターだったら、と空想して、彼が言いそうなことが書いてあるからおもしろい。
「人間の風景」は、4人の老人が書いた素人のリレー小説を、作家のはしくれが読んでいるという設定の小説である。元八百屋の青木さんは書くのに困り、元警察官の佐藤さんは供述調書風になってしまい、元新聞記者の新美さんはやっぱり新聞記事のようになってしまう。これぞ、パスティーシュ(文体模倣)小説家の真価発揮というところだ。
そんなバラエティ豊かな作品たち。清水義範の入門編に最適である。そして、どれもこれも小説なんだってことをどうぞお忘れなく。
紙の本
塾講師もうふふ
2002/04/29 11:16
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投稿者:ufufu - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学受験直後、塾講師、家庭教師のバイトを続けていた時代に、この本を買いました。もちろん、こんなユーモラスなパスティーシュとはつゆ知らず。
しかし、塾講師としても「出題者はなにを考えているのか」という問題を見続け、「こんなもん、国語力とはまったく関係がない、ただの推理じゃん」と考えていたわたしは、この作品を読んで大笑いしました。
まさに、全国の国語講師の気持ちを代弁してくれている!
受験でどうしてもわからなかったら、ここに書かれている法則を使っても、いけるかもしれません。
紙の本
入試には使えません
2016/09/13 01:39
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投稿者:ヒロユキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のあとがきにも書いてありますが、この本は受験用の参考書ではありません。小説です。受験生の皆さんは『受験・参考書コーナー』に置いてある本を買いましょう。
表題作「国語入試問題必勝法」をはじめ「猿蟹合戦とは何か」「人間の風景」など笑える短編小説集。
紙の本
気持ちよく騙されたい。
2002/08/22 11:37
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投稿者:椿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユーモアの一言、それだけでは片付けられない。清水義範のイジワるさがここに詰まっている。
短編集の中でも最も『やられた』と想わされたのは『プガロンチョのマルケロ酒煮ルノワール風』。さも美味しそうな食材を利用し、豪快に料理をつくってゆく著者。さぁ出来た、レシピは詳しく乗っている、早速私も作ってみよう、というところで我に返らされる。
騙された、と。
巧妙な文体に騙される快感を、皆さんにも是非味わって欲しい。
紙の本
人生かえちゃった本
2002/07/10 14:44
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投稿者:りゅうこむつみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は高校時代一応国語の成績だけはよかった。だからかは知らないが、国語の先生というのは受け持ってもらっていなくても仲がよかった。そんな一人の先生に、この本をイキナリ渡された。
「おもしろいから」
ただそれだけ。
私は表題作を読んで「ううむ」と唸った。
それまで実はそんなに本を読んでいなかったのに、こんなに本って面白いんだ! と実感した。
国語の先生が何故国語の得意な私に貸してくれたのか? それは国語の教師としてなのか? 国語得意と自負している私への戒めなのか?
私のように学生で「国語なんてへっちゃらさー」なんて思っているそこのあなた、目から鱗ですよ!
それを聞く前に先生は転任してしまった。
先生、いったいどーゆー意味だったんですか?
いまだに、聞きたい。
紙の本
一度試してみたくなる!?
2001/11/25 00:42
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投稿者:みやぎあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
できる人には簡単で、苦手な人には問題を読むことさえ苦痛な国語の文章問題。浅香一郎も後者のタイプ。答えどころか問題すらも理解できずに苦しむ彼につけられた家庭教師は、問題を読まなくても正解を導き出すことができる“とっておきの法則”を教えてくれた…。
国語のエキスパートである月岡が自信たっぷりに教える出題の“ルール”に笑わされ、話のオチ——浅香の手紙にまた笑う。一見もっともらしい“必勝法”、もしも私が受験生だったら出題された問題をじっくり眺め回していたに違いない。
紙の本
主人公の気持ちを十字以内で要約せよ
2001/01/31 17:01
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投稿者:つる - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本はタイトルから本当の国語の入試問題集の棚に並べられたらしい。しかしもちろんこの本もパロディである。私が読んだのが大学受験の時で、まさしく国語の問題に対し不満を持っていた時期だったので、おもしろかった。
国語の問題というのは文法以外はがいしてはっきりとした答えをもたないのがふつうで、主人公の気持ちや話の主題などというものは読者自身にゆだねられるべきだと思う。それを abc の選択式で答えろという方が傲慢だ。
私が一番おもしろかったのは、1ページ以上にわたりある女性の半生を書いて、最後に「主人公の今の気持ちを十字以内で要約せよ」とあるところだ。その答えにも納得できた。そうだよ、それしかないよ、と思った。ぜひご一読を。