紙の本
ヒッチコックという映画監督が帯びる不思議な影
2008/06/08 19:21
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きくて高い本だが 実に面白い本だ。
ヒッチコックというと ミステリーの巨匠と言われるかもしれない。確かに彼の映画でミステリーや犯罪が出てこないものは まず無い。従い 万人が見て面白いという点は言えると思う。その意味ではヒッチコック映画は娯楽映画である。
但し 単なる娯楽映画に終わっていない点が ヒッチコックなのだ。二点あげたい。
まず一点目。映画の技術をベースとした きわめて前衛的な映像作家であったという点だ。
「ロープ」の長廻し、「鳥」の音響効果、「裏窓」の舞台設定、「ハリーの災難」のブラックユーモア、「フレンジー」の殺人場面等 独創的な映画要素が盛り込まれている。これがあるからこそ 結果が分かっていても 幾度も繰り返し見てしまうものがある。トリュフォーのような ヌーベルバーグの巨匠がインタヴューをしたくなるわけだ。
二点目。
ヒッチコックの映画の底に流れる奇妙な暗さが特殊な味付けをつけている。たとえば 彼の映画には 基本的にはマザーコンプレックスが通奏低音としてある。
「サイコ」は言うまでもないが 「北北西に進路を取れ」「鳥」「見知らぬ乗客」等には必ず マザーコンプレックスが出てきている。
そもそもヒッチコック自身が 幾分 影のある人物であり それなりに屈折した人であった点は 有名らしい。「太った ウィットの効いた人物」という雰囲気は 彼なりの演出であり相当に複雑な人だったらしい。そんな彼自身の「影」が 彼の作品にも染みついている気がしてならないのだ。
ヒッチコックは 多くの映像作家にとって「先生」だったという。この本を読んだのも20年前だが その印象はいまでも強く残っている。
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ヒッチコックの映画を見るたびに読み返す。何度見て、何度読んでも新しい発見がある。映画と監督の映画作りと両方の旅を楽しめる本。マクガフィン、いつも探してしまうんだ。これ読むと。自分の人生で。
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ヒッチコックファンにはたまらない。トリュフォー監督がヒッチコックから全作品の解説とエピソードを聞き出しています
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映画書における大古典。
ただし、「脚本家の貢献を完全に無視している」(ドナルド・スポトー)本でもある。
トリュフォーが主張した監督イコール映画作家論というのは、今では弊害の方が多いように思う。
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高い本ですが、所有欲をもそそる本です。
ヒッチコック作品とともに味わいたい映画。
映画を学ぶ人にも是非。
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-ヒッチコックの映画を無視できないのは、ヒッチコックという人間と、その映画的キャリアの模範的なすばらしさに驚嘆せざるをえないからであり、その作品の豊かさを吟味してみるときには、崇敬の念を、あるいは羨望を、あるいは嫉妬を、あるいは何かをたしかにそこから得たという実感を、そしてつねに熱狂的なおもいを噛みしめずにはいられないからである-
巨匠、フランソワ・トリュフォーによるヒッチコックの映画作品論、および、そのテクニックを写真とともに細かく解説している。とにかく面白い。および、訳がいい!ヒッチコック映画、みたくなりまっせ。
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面白いエピソードと冗長なエピソードが混在しすぎていて読み終えるのが辛い。不用意に面白い。
面白いエピソードは本当に面白い。
けれど重い(物理的な意味で)。
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アルフレッド・ヒッチコックをフランソワ・トリュフォーがインタビューした、ヒッチコック映画の解説本である。映画関係者のみならず、映画フォンも必読の書。トリュフォーのインタビューが巧くて、ヒッチコックはつい乗せられて、自慢げに色々と話してしまうのだ。だから、インタビューアーにとっても必読の書と云えるか。ヒッチコックは「ロープ」という映画で前編ワンカット(したがって、劇中の時間がリアルタイムに進行していく。「24」の50年前の映画)という偉業をなしとげている。そんな彼の「映画はやはりモンタージュだ」という言葉には重みがある。
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トリュフォー/ヒッチコック対談 二段組みの本を最近見なくなったなー、と思ったら、びっくりの三段組み!濃いわー!でも対談式なのでさらさら読める。各作品について年代を追ってのヒッチコックのコメントが実に貴重。なるほど、こう見るのかと感心しきり。
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映画を観ること自体も楽しいけれど、映画についての話を読むこともおもしろい。
わたしは批評がけっこう好きで、良い映画とはなんだろうという問題についてあれこれ見聞きしたりするのだが、自分ある作品について評価付けしてみようとすると「う〜ん」となってしまう。
この本はそんなわたしにひとつの評価軸を与えてくれたと思う。それは映画の「らしさ」にこだわるべきでない、という視点だ。
わたしたちは映画を観ていて、「そんな都合のいいことある?」なんて考えたりするけれど、それはちょっとマジメすぎる観かただ。どうしてそんな都合の良いことになっているかの説明を挟むことよりも、作品の緊張感をキープすることを重視した結果が生んだ疑問なのだ。もちろん、優れた作品はそんな疑問を抱かせるヒマを与えないものなのだが。
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視線は心の動き。カメラ、カットで人の心にサスペンスをつくる。やはり、小津とヒッチコックは職人であり、天才だ。
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漫画家の荒木飛呂彦氏も作品作りの参考にしていると言う、映画作家のフランソワ・トリュフォーと、映画監督のアルフレッド・ヒッチコックの対談集。トリュフォーがヒッチコックにインタビューを行い、ヒッチコックがそれに答える形式となっています。
映画のプロットの根源にある幼年期の体験。観客を惹きこませる映像の撮り方。映画に対するこだわりまで、ヒッチコックが赤裸々に語っています。「敵役が魅力的な映画は良い映画」「写実的に撮るばかりが良いとは限らない」「観客は皆のぞき魔である」など、語られた当時撮影に用いられた撮影技法や心理トリックは、今でも通じるものがあると実感します。
厚く、重いですが、映画が好きな人、映画業界に憧れる人、その他小説に漫画にゲームに3DソフトにMikuMikuDanceに、創作活動に携わっている人、興味がある人に全てにオススメしたい一冊です。
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図書館で借りたが、あまりにも量が多くて2週間では読めなかった。流し読みをしたが、それでもヒチコックの映画は計算されて作られた映画であったのだと理解できた。
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本書制作時は、映画監督50本目と大々的に公開された引き裂かれたカーテンが興行的に恵まれず、ハリウッドでは既に過去のヒト扱いされ、意気消沈の本人の前に現れたフランス人若手監督。自分に対する昨今の厳しい風評とは間逆の“ヒッチコック愛”にそうとう本人も気を良くしたのだろう普段ならジョークではぐらかすのにかなり手の内の詳細を明かしている。ましてセルズニックの軟禁状態から脱し、自身で独立プロを立ち上げ制作されたロープ、山羊座のもとに が惨敗した件では、自分は当時思い上がっていた。と素直に反省の弁を述べるなどあまり本心を明かさない彼にしては珍しい。
一時代を築いた人間は、歴史を学べと言う。つまるところ、自分をもっと崇めよ褒め称えよと云うことなのだが、ヒッチコックもトリュフォーのこのインタビューで映画作家としての自分をもっと評価してもらいたかったのかもしれない。
またヒッチコック本人も忘れているような細いシークエンスに対するトリュフォーの鋭い質問は、サスペンスの巨匠を単なるおざなりのインタビューではなく本気にさせたのかもしれない。
読み進めてゆくと二人の関係が師弟のように感じられるのが微笑ましい。
エリック・ロメールだったか、「トリュフォーの夢はパトリシアと結婚することだ。」と言っていたそう、その話を聞いた時少し背筋が冷んやりしたものだが、ヒッチコックの愛娘と婚姻関係を結ぶことでサスペンスの巨匠の(義理の)息子になることを夢見た若き映画監督の過剰なまでのヒッチコック愛に圧倒される。
本書は、手元置いておきヒッチコックの映画が繰り返し観るように読まれる本であると思う。
巻末の山田、蓮實対談は本書を補完する意味でとても重要。
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『裏窓』が大好きな私は前のめりになって読んだ。インタビュー形式なので、とても読みやすい!
ヒッチコックの根底にある考え方や遊び心にとんだ伏線など、知らなかったことをたくさん吸収できた。初期の映画とアメリカに渡ってリメイクした映画があるなんて知らなかったので、敢えて初期の作品を見て見ようと思う。