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紙の本
トップ屋スゲぇ
2008/05/17 23:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和33年に週刊明星創刊、34年に週刊文春創刊と、この頃がいわゆる週刊誌創刊ブームというもので、作家修行中の梶山季之はこの二誌で創刊からルポライターとして無署名の記事を書いた。特に文春では5人の梶山軍団を率いて活躍、これがトップ屋という言葉のハシリ。その33年から36年に書いた記事を集めたのが本書。梶山は続く37年に「黒の試走車」でベストセラー作家となり、それからもノンフィクション記事も書き続ける。中には政界の裏側の暴露も多く、その意趣返しとして小説がワイセツ法違反で検挙されたとも言われている。
で、これらの記事が、さすがに鋭い。その背景にある取材の量がすごい。誰とも分からない関係者筋とかでない、渦中の人物のコメントが取れたりするのは時代もあったか。まず昭和33年、「イラク」革命から中東情勢を経て第三次世界大戦の可能性を検証。続いて赤線廃止後の若者の風俗。警職法改正を取り上げた「デートも邪魔する警職法」、治安強化の真の狙いにまで突っ込んだこの記事で批判が高まり、自民党幹事長が編集部に怒鳴り込み、遂に廃案に追い込まれたという伝説の記事だ。そして全マスコミ取材合戦の中で、皇太子妃決定をスッパ抜いた"話題小説"「皇太子の恋」。
続いて昭和34年。東急グループによる北海道開発=土地買い占め、企業買収の全貌。東京都知事選挙で有田八郎を落選させた怪文書の発行者をスクープ。戦時中に瀬戸内海で事故で爆沈しながら、国民には隠蔽された戦艦陸奥についての、初めてマスコミに登場する貴重な生存者の証言。戦後潜伏して戦犯時効後に国会議員となった辻正信への疑惑直撃。下山事件10年後の解明状況。ルバング島の小野田少尉救出(!)の動きと、中野学校の人脈。指名手配中で、共産党を除名された伊藤律の潜伏先。伊勢湾台風被害後に、救援の手の届いていない地域の現状。
昭和35年。東京タワー建設における、マスコミ各社の主導権争い。教科書採択における出版社の売り込み合戦。創価学会vs日蓮宗総本山の泥沼の抗争。安保デモでの女子学生死亡からアイゼンハワー来日中止にいたる裏事情、などなど。
取材力もさることながら、一つの事実からその裏側、裏側へと迫る洞察力がすごい。素朴な陰謀論に走ったりするのでない。事実だけを積み重ねた上で、見えてくる真実があるのだ。こうして見れば、テレビや新聞などで現象の上っ面だけをなぞって批判しているニュースは、まったくみじめそのものだ。そして昭和30年代のこれらの告発から、現代がどれほど進歩しているだろうか。それでなお、ジャーナリズムでは書けない真実があると言って作家に転じたという皮肉なオチまでついているのである。この疾走感に一体化しないと、作者の実像は捉えられない気がする。
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