- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
“魔球”とは?
2020/01/19 23:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テトラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
東野圭吾初期の代表作である本作は、実に哀しい物語であった。
この高校球児を中心に据えたミステリ。この作品の中心となる謎は、二つの殺人事件の謎でもなく、愉快犯とも云うべき東西電機での爆破未遂事件と社長誘拐事件の謎でもなく、題名となった“魔球”の謎、でもない。
天才投手と云われた須田武志そのものの謎である。
本作はこの須田武志なる人物が実にストイックかつミステリアスに描かれており、この人物無くしてはこの物語の成功はなかったであろう。
他の高校球児と特に仲良く接することなく、常に孤高の存在として振舞う。自らに妥協せず、他者とは違う次元で物事を見据えた眼を常にしている。そして自ら立てた目標に向かって嘘はつかず、また約束は必ず守り、自らを厳しく律する。自ら弱音は決して吐かない。出来ないという言葉は決して使わない。
彼の死の真相を知ったとき、正にこの男は武士であると痛感した。名前は須田武志。東野氏はこの男に武士の魂を託し、“武士の心”という意味を込めて“武志”という名にしたに違いない。
そしてこの須田家を取り巻く家庭事情など、ほとんど巨人の星の世界である。貧乏のどん底から、プロ野球選手を目指して這い上がる男、自らの努力で天才投手の名を恣(ほしいまま)にし、家族の幸せのためには自分を売ることも厭わない。
ここまでべた褒めならば星5個献上したいのだが、あまりに哀しすぎるので、その分、星1つマイナスした。物語半ばで判明する須田武志の死は、私にはあまりにもショッキング過ぎた。こういう奴を応援したいんだよと思っていた矢先の悲劇だったために、プロットのためにここまでするかと脱力感と憤慨を覚えたのである。最後の結末を読んでも、やはりあそこで須田武志は死なせるべきではなかった、そう強く思った。彼を亡くした後の須田家の哀しみを推し量るとどうしてもこの展開には反発心を覚えてしまう(また文庫表紙の朴訥としたイラストが泣かせるのだ)。
そう思うのも、ここまで感情移入してしまう登場人物に久々に出逢ったためで、正に東野氏の術中に嵌ってしまったことは否定しない。先にも書いたが本作ではそれぞれの事件の謎ではなく、この須田武志という人物の謎こそ東野マジックなのだ。
もう少し書こう。
本作でキーとなる題名にもなっているこの“魔球”の正体。この謎も実はなかなかに考えられているのである。
“魔球”というちょっと間違えば陳腐な内容になるこの題材について東野氏は実に面白い解答を用意している。そしてそれはこの“魔球”という二文字の意味がまた別の意味を持って立ち上がってくるのだ。
人が打てない悪魔のような変化を伴うから“魔球”と呼ばれるのが一般的だが、本作にはもう1つの意味が隠されている。これはそれぞれこの本を読んで確認して欲しい。
紙の本
野球観
2019/10/06 12:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校野球の、特に「投手」に関しては様々な思惑が今年も騒動の元になっていましたが、置いてきぼりっぽいひがみを感じる野手たちの微妙な気持ちと、あまりにも野球に人生を捧げすぎる人間の立場と思い・・・読み終わってちょっと辛いかも。
紙の本
執念
2018/07/29 09:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
被害者であったり加害者にしてみても、何かしらの譲れなかった執念みたいなものを感じました。人はどこまで自分を棄てることが出来るのかを問われた気がします。
紙の本
あの謎を東野圭吾はなぜ種明かししなかったか?
2004/01/03 14:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くれい爺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品で東野圭吾はミステリーとしてはちょっと不完全なことをしている。
最後まで、一つの謎の種明かしをしていないのだ。
それは、須田武志の右腕はなぜ切られたか、という疑問に対してである。
その疑問に対する答えそのものは読者には案外簡単に読み取れるはずだ。
ならば、なぜ東野圭吾はそれを書かなかったか?
それはそのことがこの作品の中核をなすもの、主題といってもよいかもしれ
ないが、それと密接な関係を持っているからであろう。
東野圭吾はあえてそれを書かないことによって、それを読者に強く訴えてい
るようだ。
東野圭吾の初期の作品であるが、こういう細工ができることは、現在の彼を
予感させるものだったかもしれない。
須田武志の右腕はなぜ切られたかって?
それは皆々様でお考えを…
紙の本
物語の世界に入り込んでいけるミステリ
2001/11/10 10:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:がんりょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ストーリを楽しむことができるミステリ.
トリックに振りまわされることもなく,物語の世界に入り込んでいける.とくに,家計を支えるためにプロ野球選手を目指す少年の一途さには心を打たれた.不況といっても,今の時代結構恵まれていると再認識した.
紙の本
綺麗なミステリ。
2000/12/07 01:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:品川夏見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り、「魔球」にまつわる学園(?)ミステリ。
殺人の形態や謎はとてもシンプルで、そして古株刑事が足を使っていくような地道な推理展開。だけどそれが全然苦にならないのだ。
無駄な肉を削ぎ落とされた、綺麗な一冊である。ミステリのアクロバット演技に疲れた方、是非。