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『生活の中の楽しみはすべて自分が形作っていくのだということを、もう、私は知っていました。』
『何故、自分の好意を私だけにではなく、他の人々にも認識させたいのでしょう。私の水のような人生が徐々に壊されていくのを感じます。』
『子供のすることは予測がつかないからです。』
『女は本当に年齢が関係ありません。』
『私の家族は人の悩みを自分のものと置き換えて考えてくれる程、親切ではなかったことを思い出しました。』
『小学生の世界に絶対的な価値など存在しないのです。』
『小さくて愛らしいものや気を引かれるものを手で握りつぶしたり、滅茶苦茶にしてやりたいという欲望を満たそうとしているのです。』
『子供たちに指導をするという先生の役割。それをいったい誰が彼らに与えたのでしょう。』
『絶望。それは、人から感情を抜くものだと思います。』
『汚いものとして受け止めているからこそ、こんなことをしたのでしょう。そう思った女の生理は汚いのです。』
『もしも、彼女たちが、年齢を取った時、これらの言葉を覚えているでしょうか。いいえ、そんなことはないと思います。覚えていたら、恥しさに生きてはいけないでしょう。もしも、恥を知った大人に成長出来ればの話ですが。』
『あんな可愛いものが何故、憎しみの対象になってしまうのでしょう。』
『だから、私は彼らに一生かかっても拭いさることの出来ない恥を残したいのです。』
『だいたいねえ、いじめるなんて品格のない人間の考えることよ。』
『私の生み出した人の殺し方は、軽蔑という二文字だったのです。私は、自分たちを人間だと思っている愚かな者たちを、まず動物にまでおとしめます、そしてから、じわじわと殺して行くのです。』
「目覚めたら、きちんと目を開けて私だって確認した方がいいと思うな」
『ところが、その孤独を愛情の中から見つけてしまうと、私は気が狂いそうになってしまうのだ。暖かさに包まれると、冷静なものである筈の孤独が急に熱を持ち、私の心を痛ませるのだ。』
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1980年代前半まだデビューしたてのころの山田詠美さんの小説『風葬の教室』を読了。最近少年少女がいじめで自殺してしまう痛ましい事件がつづいていることから思いつき買ってあった本の中からいじめといじめと戦う心を持ち得た少女を描いたこの本を選んで読んでみた。彼女のお話の作り方の上手さは言うまでもないが、都会から地方都市への転校をした少女がささいなことからいじめの対象になってしまい、遺書を書くまでに追い込まれるのだが、姉の体験に基づく一言からいじめる人間を心の中で殺してしまうという技を編み出しいじめから立ち直って行く様が絶妙に少女の言葉で語られる。さすが山田詠美さん暗いテーマだが見事に消化してるなあ。
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山田詠美を読むのは十数年ぶりだった。この文庫には、短編の「風葬の教室」と「こぎつねこん」が入っている。どちらも、幼い少女が一人称で描かれている。
私には、このスタイルが合わなかった。やはり、大人が子どもの視点で書いた小説はどこかわざとらしい。子どもがこんな考え方するわけない、と鼻白んでしまう。子どもを馬鹿にしているわけではないが、もっと単純なもので、こんなに大人びてシュールでクールなことはない。
「こぎつねこん」の少女の苦悩はわかる気がした。幸せすぎると、何かを失った時の孤独が怖くなり、叫びだしたくなるのだ。
字が大きくて読みやすかった。
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おお…これは…うおぉ…
唸りながら読んだ
凄いよ山田詠美さん凄い
都会から田舎に引っ越してきた
小学校5年生の本宮杏。
可愛い服に結われた茶色い髪。
細い首に長い睫毛。
決してその地域の言葉を使わない杏は、クラスから注目を置かれる存在となっていた。
生徒に人気のある体育教師に気に入られた杏は、女子生徒から反感を買いクラス全体から虐められることになる。
…………………
杏のすでに完成された、達観したような大人びた一面。
好きな男の子に小さい紙に書いたメッセージを渡したり、一緒にトイレに行く友達がいなくて寂しく思う一面。
全ての描写が生々しく、愛らしく、辛い気持ちになる。
【踏みにじられてしまったリボン。
あんな可愛いものがなぜ、憎しみの対象になってしまうのでしょう。
私は、リボンのことを思うと泣けてきてしまいます。
ああ、人生って疲れます。
こんな毎日が人生を形造ってしまうなら、私にはいらないような気がします。】
最後は杏の復讐方法にまた舌を巻く思いだった。イケイケ、やれ、どんどんと!!
…………………
それにしても、山田さんの書く女の子は本当に可愛い。カッコいい。
女性であることを最大限に楽しみ、愛し愛されたい欲望を隠したりしない。
確かにこれは好き嫌い分かれる。
こういう女性像は大概女性には嫌われるものだ。日本では特に。
私はその振り切れ感が大大大好きだ。
男たらしと言われた妹を「あんた素質あるよ、木綿パンツのガキに負けんな」と励ますお姉ちゃん。好きだ。結婚してほしい。
彼女もかつていじめられていた。
そんなことは屁でもないという様子が本当にカッコいい。
自分が信じている道をただ突き進む。
信じるものが何であれ、その姿にとても憧れる。
「草や木は私を殺すには、あまりにも若いただの生き物なのです」
この最後の一文に痺れた…
杏は強くていい女に成長したよ…
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【再読】当時、山田詠美さんらしいと思って大好きだなと読んだ記憶が蘇る。主人公のこましゃくれた感じが当時通ってた高校が面白くなくてどうしようもなかった私を救ってくれたなー。彼女のようにいじめとかではないし、勝手に肌が合わなかっただけだから鼻で笑われそうだけど。でも考え方は似ていて、わかるわーって思いながら読んでたな。