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紙の本

高杉晋作に思いを馳せる。

2006/05/17 09:18

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る

その顔の疱瘡のため「あずき餅」と周りからからかわれた虚弱な子供時代から剣術を磨き、吉田松陰に学び、イギリス大使館焼き討ちを決定するまでの上巻。読み応えがあり、高杉晋作とはこのような人なのか、という新鮮さがある。「暴れ牛」と異名を取る晋作にしては案外に物事を静謐に見ている観が強いこと。獄中に閉じ込められた松陰の勘気を最も被り、まるで子供のように心を傷めたこと。そして何より、晋作の目指していたのは頼山陽のような文人になることだったのだとういこと。いや、これは晋作が残した数多の漢詩のことを知れば想像に難くはないことだが、それにしても、この作品では晋作が他の何物をも目指していなかったことがわかる。時代が時代でなかったら…。晋作は自分の望むところを全うできていたかもしれない。しかしそれでも高杉晋作は高杉晋作である。この後、彼は疾風怒濤の勢いで時代の中へ飛び込んでいくのである。

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