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ホロコースト、ジェノサイドというと2019年の現在でさえ特にこの日本ではユダヤ系の被害や虐殺ばかりしか想起し得ない人も多い(子供の頃の私もそうだった)が、ロマ民族やスラヴ系民族や同性愛者、反体制派、単に権力を持つ者が気に食わない人達や、密告された無実の者、各種属性の障がい者や疾患を抱える者などその犠牲者の属性は極めて多様である。そこでユダヤ系からひとまずはなれ民族数と犠牲者の割合ではユダヤ系以上の犠牲者を出したとも言われるロマ民俗の方の生還者の体験記である本書を呼んだ次第である。
当事者の体験は凄まじいが当時子どもとして体験したからか筆致は素朴で淡々と読み進められる面もある。何よりも、非ユダヤ民族として体験した過酷な各種強制収容所の違いもわかる(彼女は最初に最も高名-殆どの非ヨーロッパ人はそこしか知らない-アウシュヴィッツの欠かせぬ付属施設ビルケナウに送られ、そこから女性専門のラーベンスブリュック、そして有名なユダヤ系少女犠牲者アンネ・フランクの亡くなったベルゲン・ベルゼン強制収容所と3つもの有名な収容所に移送、拘禁、虐待、強制奴隷労働させられている)のも良い。