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紙の本
93歳で亡くなられた著者の、54歳の時の自伝は情熱と冷徹な思考に満ちたものだった
2019/03/03 18:42
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投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2019年1月に亡くなられた梅原猛の自伝(?)の改訂版を改めて読んだ。
もう記憶も定かではないが、初版が文庫化された頃に一度読んだことがあるはずだ。本書に詳細な年譜があるので見直してみると、『学問のすすめ』が文庫化されたのが1981年となっているので、私が大学生になるかならないかの頃だから、きっと読んだはず。
その著者が亡くなったというので、手近にあったこの本を手にした。
改めて読もうとして驚いたのは、本書が刊行された時の著者がまだ54歳だったということ。そうか、54歳で自伝か。
結局著者は93歳で亡くなったので、この本で書かれている人生からさらに40年も生きたわけだし、改訂版ですら1992年で67歳の時であり、そこから四半世紀も生きてこられたわけで、自伝とはいえ半生記といった感じにしかならない。
しかも、当時54歳ということは、個人的なことではあるが、2019年の私がほぼ同年代ということになり、ふと「そうか自伝を書くような年代になっているのか」なんてことまで思ってしまった。
別に個々人それぞれなので、だからどうというわけではないが、50代半ばで自分の人生を振り返るというのはそれなりに意味はあるだろうが、まだまだ人生先が長そうで、これから何が起こるかわからないと思ってしまうのは私だけだろうか。
といったことを思いながら本書を読み進めていくと、これがたとえ半生記であったとしても何と濃密な人生なのかと思ってしまった。
その生れ育ちからして、常人では経験し得ないような話の連続であるし、その中で形成されたであろう梅原猛という個性が類い希な存在であることを教えてくれた。
また、この世代に人達に多大な影響を及ぼしている日中戦争から太平洋戦争に至る時代の雰囲気や、そこを背景として戦後をいかに生きてきたのかというところが興味深かった。
そして、哲学者としての学問の変遷のくだりは、壮大な推理小説の一端を垣間見させてくれるような、読んでいるだけでわくわくさせてくれるような面白さがあった。
著者は本書をもともと書く気がなかったと言い、この改訂版の時点でもすでに初版から10年以上を経過していたので、その後の梅原哲学の展開のことや、国際日本文化センターのこと、スーパー歌舞伎の脚本のことなどは「はしがき」でサラッと触れられているだけだが、54歳で自伝を著したような勢いでそれ以後のことも書き留めておいてくれていたら、きっと今興味深く読むことができたのではないかと思う。さらに、晩年にでも90年になる人生を振り返ってもらっていたら、きっと梅原猛という人となりをもっと知ることができたのではないかと思い残念だ。
しかし、そうしたことをせずに常に「意味のある人生があるとすれば、これからの人生である」(p.2)といった心持で生きてこられた著者だからこそ、この54歳での自伝でも常人には及びもしない情熱と冷徹な思考があったということがわかるのかもしれない。
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