紙の本
オーウェルの思想の変化
2018/05/26 10:55
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
オーウェルは、その当時世界の注目を集めたロシア革命と社会主義に肯定的でした。かれは、スペイン内戦に反ファスズム(人民戦線)側で戦います。人民戦線には、ソ連など社会主義派から義勇兵が来ていました。ナチス・ドイツなどはフランコ側です。オーウェルは、人民戦線もファシズムと同じ臭いがすることに気づきます。その当時、ソ連に紹介され、調子に乗ってソ連体制を賛美した西側作家や知識人(バーナード・ショウなど)と違って、自分で真実を体験し判断する能力がありました。その判断を示したのが、本書です。
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筑摩書房版より良さそうだ
2018/05/24 22:54
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一番最初に読んだのが筑摩書房のバルセロナに戻るまでの抄訳版(筑摩叢書やちくま学術文庫及び電子版は、これを完訳したもの)だったが、岩波文庫で復刊したので読んでみた。岩波文庫の邦訳者はスペイン語が出来るようで、底本だけでなく、オーウェルが後に書いた正誤表や全集版を参照にしているので、筑摩書房版より良さそうだ。また、筑摩書房ではオーウェルが所属していた党等をカタカナ書きしているが、この訳はアルファベットで表記している。
これはオーウェルの評価や翻訳とは関わりが無いが、スペイン共産党から「トロツキスト」扱いされたPOUMやアナーキスト達とスペイン共産党系のPSUCによる有名なバルセロナの電話局での内ゲバ(これ以上いい言葉はない)とアナーキストやPOUMなどが実践した目先だけの「平等主義」が共和国が金で買ったソ連からの武器と共にスペイン共産党が共和国への支配を広げてきた面がある。マドリード攻防戦で大統領府がバレンシアに、政府と国会がバルセロナに移転して、社会労働党とアナーキスト、共和主義者、バスクとカタルーニャの自治主義者などがスペイン共産党と呉越同舟の末に内ゲバして瓦解したのが共和国の実態だ。もし共和国が勝利していたら、当時のソ連やモンゴル人民共和国のような社会になっていただろう。ソ連から軍事顧問団と共に、お目付役だったはずが亡命してしまったアレクサンドル・オルロフが共和国の秘密警察を支配していたのだから。「一つの国家、一つの民族、一人の総統」と第三帝国のスローガンを持ち込んで、本来はカルリスタ戦争以来の敵同士の王党派とカルリスタ、ファランヘ党、カトリック教会などをフランコ将軍が彼を中心にして一本化出来た国民戦線が勝利したのは当然だ。
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あるところで、「あなたはどんな本を読んでいるのですか」と聞かれた。多読・乱読派の自分にとっては難しい質問で、ハッキリと答えられないで時間が過ぎてしまった。
その質問への一つの答えがコレ。
1936年、内戦中のスペインに取材に来た筆者。そして、「到着するやほとんどその場で民兵組織に入隊してしまった。当時のあの雰囲気では、それしか考えられないように思われたからである。」。
実際、オーウェルは、「ファシスト」と闘う民兵の一員として名誉の負傷までする。徹底した現場主義。世界の底から世界を見る姿勢。そして、世界の底で得たものが『動物農場』や『1984年』につながるのである。
こんなふうに生きてみたいものだ。
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スペイン内戦のルポタージュ。
実際の戦いに参加し、自分の目で見てきたことと、当時の報道との違いを述べている。
が、スペイン内戦についての基礎知識がないと分かりづらい。
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スペイン内乱に義勇兵として参戦したオーウェルのルポルタージュなんだけど、ファシストとの戦いは全体の1/3くらいで終わり、後の2/3はPOUMと共産党の間の闘争に巻き込まれた話で占められている。読む前のイメージと違ってた。
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戦争ってこういうものなのかと興味深い。ほんとやるものじゃないと思うのだけど、始まってしまって、始めた人は何も失わない中でスマイリーみたいな人がたくさん生まれてしまうのだろうと思うと、本当に何とかして欲しいと思う。
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スペイン内戦を表した文学の一つ。この本を読んで、バルセロナに行きたいと思い、スペイン語を勉強した。ガウディという名のホテルに泊まり、ガウディの立て始めた教会を見学した。マドリッドと、バスクとバルセロナに行ってみて、仕事をしてみないとわからないことは多いなと思った。
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スペイン内乱に労働者党の一員として参加した著者の従軍記録。
およそ二十世紀の戦争とは思えない牧歌的なやり取りが、却って戦場の内情を明らかにしているよう。
例えば砲弾でなく、放送の応酬の際、こちら側にバター付きのパンがあると言うだけで相手を投降させたり、質の悪い砲弾が爆発せず、毎日敵味方の間を往復していたりと、変に平和的なやり取りが為されていたりする。
むしろ、著者が頸部に銃弾を受け、その治療で病院や銃後の都市にいる時の方が、各陣営の戦闘はより先鋭的だったように思える。
また、最前線ではほとんど党派性が意味を成していなかったのに、戦闘とは程遠い都市部では、報道や政府がプロパガンダを執拗に行い、著者の属する党は非合法となってしまっていた。
党の他の人員が続々と逮捕される中、著者がスペインを脱出する時の記録も、ひやひやさせられる。
従軍記者として戦地を客観的に取材したのでなく、兵士として、時に相手を殺しもした主観的な記述なので、補遺で当時の報道と並べた時、その報道の虚飾がずっと空々しく感じられた。偏向報道というのは、もうマスコミの宿痾のようなものなんだな、と。
同じく補遺で、日本は満州で好き放題に振る舞ったと書かれてるけれど、そんな事実はないはず。それは、『紫禁城の黄昏』に詳しい。
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「キャパの十字架」でスペイン内戦に興味を持ったため読んでみた。ただ、俯瞰的な視点で内戦の経緯と進行、関係した諸勢力の状況などを知ることは本書では難しかった。
見どころは、一兵士の視点から書かれた惨めで退屈な塹壕戦の様子と、その後のバルセロナ動乱で迫害されかけた筆者の緊迫感ある数日間の描写あたりか。
本書を読んだ後にネットで当時の社会状況を調べてみて、第二次大戦前夜のファシズムに対する危機感、資本主義と共産主義の対立、コミュニストやアナーキストといった概念の違いなどの理解が深まった気がする。
読み応えは十分あるのだが、他人に勧めるには人を選ぶという点で星3つの評価。
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著者が36歳のとき、1937年12月おわりから1938年7月はじめまでの
およそ半年をスペイン内戦にアナキスト系組織POUMの民兵として
参加したときのドキュメンタリー。
執筆時の状況を踏まえた大局的な考察などといったものは省かれ、
在西当時の、1937-38の冬のアラゴン前線での塹壕での日々や
1938年5月の動乱の渦中のバルセロナや
6月以降のスペイン脱出行で著者が体験したことを描いています。
著者の身の回りのことしか描かれていませんが、
そのぶん、一人のインテリイギリス人が体験したことが
臨場感たっぷりに感じられます。
アナキスト系の思想である、
労働者は善であり彼らのことは彼ら自身に任せればよい、
というものの見方や考え方が前面に現れています。
それゆえに、戦争のプロである職業軍人を相手にした内戦は
アナキストでは勝てないだろうなということも感じられました。
スペイン内戦が終結する前に書かれた作品のため、
フランコが内戦に勝利しその後の激動する国際情勢を乗り切り国を保った、
という内戦後の歴史を知る現在では「負け犬の遠吠え」のような哀しさを感じます。
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うーむ
私に背景知識がほとんどないから分からない
セクト間の細かなところまで書いてあるのだが
ここが分からないとな
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戦争と革命が同時進行していた (どちらも帰結は悲惨なものだが) スペインでオーウェルは何を見たか。
イベリア半島とその民主主義がファシストとコミュニストに脅かされ、英国のジャーナリズムが反動に揺れていたとき、オーウェルは醒めた目で人間と向き合っていた。銃をとって立ち上がった労働者たちに「人間らしさ」を見出していた。
ファシストとの対峙、共産党による粛清という状況にありながら、スペイン的というのか、なかなか間の抜けた出来事が多く面白い。それがかえって戦場の描写を現実的なものにしている (マドリードなどは状況が異なるだろうが) 。
塹壕戦の最大の敵は敵や敵の弾丸ではなく寒さだという。撃った弾丸も飛んでくる弾丸も大体照準がうわずってなかなか当たらないらしい。
オーウェルが社会民主主義的な傾向を持ち、ソ連的共産主義に反感を持っていたのは知っていたが、アナルコ・サンディカリズムに共感を示していたのは興味深かった。バルセロナ動乱のときのセクト間抗争をしっかり理解するのは難しい。
訳者が優れている。オーウェルが何に魅せられてスペインの地で戦ったか。財と身体を投げ打つ奇特な行いは何のためであったか。訳者あとがきでようやく得心がいった。第1章の一番最初の文に立ち返るあとがきの締め括りが美しい。
訳文も非常に読みやすい。
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第111回「イベリコ豚食べ比べ&ビブリオバトル」で紹介された本です。チャンプ本。
2024.2.17