紙の本
血の婚礼
2020/07/18 14:30
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は理性に基づいて行動すると思われているが、この物語の中では、「血」と「土地」、そして両者と分かちがたい関係にある封建的な風土に基づいて、行動してしまう。様々な物語を読んで、腑に落ちなかったことが、これを読んで理解できた気がする。
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スペインの劇作家ガルシーア・ロルカにおける三大悲劇。
情熱や情念といった言葉がふさわしい。
主人公(あるいはキーパーソン)の女たちは
その体内に流れる血(あるいは子宮)の命ずる衝動に従って行動する。
それがまさにスペインの女のイメージそのまま。
ある必要に迫られて読んだのだが、
こういう機会でもなければ読まなかっただろうなーと思う一冊。
意外に読みやすく面白かったので★3で。
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「血の婚礼」
実際にあった殺人事件を元に書かれた戯曲らしい。
話自体は今ではよくみられるようなものだけれど、
全体的に漂っている雰囲気が熱っぽくて、
舞台もなんだかバラガンの色彩(あれはメキシコだけど)を彷彿とさせる、カラフルな体で重苦しい。
独特の雰囲気にのまれてしまう。
花婿、花嫁、レオナルドのうちこの二人が死ぬっていうのが
少し衝撃的だった。
「イェルマ」
洗濯女たちのシーンがとても印象的である。
友だちが妊娠したり子どもを連れてくるシーンなんかも絶妙のタイミングでドキっとさせられる。
妻と夫のすれ違いは色々な理由があっておこると思うけど、
そんな事情を抱える人には切な題材なのではと思った。
子どもの存在、その意義を実は静かに描いているよう。
「ベルナルダ・アルバの家」
これが一番面白かったゾ!!
これを読むと、昔のスペインのみんながみんなこーだったわけではないと思うが、あの熱い空気と同じように人々の上にのしかかっていたものを感じる。
風土論とかがどれくらい正しいのかよく知らんが、
やっぱ気候による民族の違いってあるんじゃないだろーか。
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スペイン内戦のさなかに銃殺されたロルカ。スペインの中の異国とも言うべきアンダルシア。表題作『血の婚礼』は、詩人ロルカの代表的な劇作品である。因習的な地縁と血縁の中で、そして強い光と深い影が交錯する中で行われようとしていた結婚式。劇のプロットそのものはシンプルだし、セリフもけっして多くを語るわけではない。劇の全体を一貫して支配しているのは、どうにもやるせない倦怠感とその先に展望が見えない焦燥感である。そして、アンダルシアの荒涼とした風土感であり、可視的な、また観念的な意味における「血」なのだ。
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しょうもないっちゃしょうもない話やなと思ってしまう。舞台に乗せるなら血と泥でずるびしゃにして花まきちらして群集!群集!アンダルシアの歌と踊り!
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スペイン語圏ゲイ文学論『優男たち』を読んだらロルカの悲劇が読みたくなって、「血の婚礼」「イェルマ」「ベルナルダ・アルバの家」の三大悲劇が収められたこちらを。
3作に共通する主題は、家父長制的家族の強力な規範に縛られた社会の中で、嵐のような自由への渇望をもたらすセクシュアリティの破壊的で破滅的な力である。
「血の婚礼」では、貞淑で働きものと期待されていた花嫁が、抗いがたい力に衝き動かされて結婚式の日に駆け落ちし、2人の男たちの死をもたらす。だが男たちに死をもたらすのは、統制されない女のセクシュアリティではなく、むしろ彼らが弄ぶ小さなナイフであることが、冒頭から花婿の母の宿命論的なセリフによって暗示されている。この「小さなナイフ」を、互いへの愛ではなく暴力に変えてしまう男のセクシュアリティとして解釈することもできるのではないか。
「イェルマ」では、家父長制家族においては母になるというただひとつの究極の目標にむけられるべき女のセクシュアリティの挫折が、激しい渇望と夫殺しにつながるさまが描かれる。ヒロインの悲劇は、自分をむしばむほどの巨大な欲望を自覚している一方で、家父長制の命令―ー家の外でセクシュアリティを解放してはならず、夫を介して母となることのみを目指せ―ーに忠実であることから生まれている。だから母の地位をあたえないような夫は彼女の情熱の前に焼却されるしかないのだ。
家父長制権力を遂行する母となりえず自分自身の上に破滅を招くイェルマに対し、ベルナルダ・アルバはその厳然たる権力を娘たちの上に及ぼして彼女たちの人生を破滅させている。
『優男たち』でも指摘されていたように、独裁者が死の沈黙を命じるこの家はフランコ政権下のスペインの状況を映し出して評価が高いけれど、外の規範と自らの内なる衝動の間で狂い惑うイェルマに比べて、ベルナルダの娘たちはあまりにも弱い。独裁者の支配に迎合して互いに連帯できない状態に対する葛藤を、せめてもう少しでも示してくれたらとも思うのだ。
たとえば、本当は末娘を愛していると言いながら金目当てに長女に求婚する狡い男(これも家父長制権力の兵隊だ)に対して、長女と末娘がそれぞれに怒りを抱きながら、それでもベルナルダの権力から逃れるためにこの男の愛という不確かなものに依存しなければならない葛藤が、もっと表現されていたら。
あるいは、自らの欲望と怒りを押し殺しつつ末娘を断罪する検事の役割をすすんで担う中の娘の倒錯、一生この牢獄から出られないと悟り、姉妹の恋愛を覚めた目で見る次女の洞察がもっと表現されていれば、この権力の支配下にある者たちの苦しさや交渉がもっと複雑に描き出すことができたはずなのに。
いつかそのようなフェミニスト解釈による翻案を見てみたいものだと夢想してしまう。
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血の婚礼
ひとりの花嫁とふたりの男。花嫁と過去の男は駆け落ちをし、追いかけた花婿は男と刺し違える。
夫とふたりの息子をナイフに奪われた花婿の母親は、ひとり家の中に取り残される。
イェルマ
母親になることが自分の定め。過去の男に胸を焦がしながら、愛のない夫と義理の姉ふたり、ひとつ屋根の下で孤独に蝕まれる女。仕事に逃げる夫、結婚後すぐに懐妊した友人を目の当たりにして、女はますます追い詰められていく。
ベルナルダ・アルバの家
ベルナルダ・アルバの夫アントニオ・マリーア・ベナビーデスの葬儀。傲慢で支配的なベルナルダと、彼女の5人の娘たち。誰ひとり結婚していない。ところが、突如長女のアングスティアスに結婚の話が舞い込む。相手はペペ・エル・ロマーノ。ペペの目当てはアングスティアスに継承されるアントニオ・マリーア・ベナビーデスの遺産。しかし、ペペは末妹のアデーラと関係を持っていた。
抗い難い因習に縛られた女たちの悲劇。
自由のため鎖を断ち切れば、その先には死が待ち構えている。支配的な社会制度の中では、女だけでなく男も不幸を背負う。