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『ポストモダン・フェミニズム―差異と女性』(勁草書房)以後に発表された著者の論考を収録しています。
著者は、「個人的なものは政治的である」というフェミニズムの主張や、やはりフェミニズムによってその広範な影響の広がりを解明することが課題とされてきた「家父長制」の概念、さらには上野千鶴子のマルクス主義フェミニズムとそれに対して巻き起こった批判など、フェミニズムの画期をなすような研究成果を振り返りつつ、新しい時代のフェミニズムがよりいっそう繊細な課題へと批判のまなざしを向けていかなければならないことを論じています。そのうえで著者は、「身体」の問題が新たなフェミニズムの主要な問題領域となるだろうという見通しを示しています。
また、『キッチン』や『TSUGUMI つぐみ』といった、よしもとばななの初期の作品に対して、これまで何人かのフェミニストが、そこに描かれている家族像や少女のイメージを批判しています。しかし著者は、ばななの作品に登場する「少女」がみずからの置かれている問題に対する冷徹なまなざしをもっていることを指摘し、ここにも新たな時代のフェミニズムがとりくむべき課題を見てとっています。
そのほか、1989年の参議院選挙での女性議員たちの活躍やその後の政治的な状況についての著者の意見を表明した文章などが収められています。