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お上の刺客をなんとかかわし、一行は8月霜柱立つニシベツで折り返した。喘息の発作に見舞われながら、息子の一途な恋に心を砕き、はたまた弟子の片思いから母娘の仇討ち事件に首を突っ込み、“臆病剣”達人の命の洗濯の会を開くなど、奥州111次、“全き善人”忠敬の一歩は事件をかい潜りかい潜り江戸へ。
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北海道の測量を終え、帰る道すがら
今度は探検隊員たちの身の上にさまざまなことが起こる。
御上の測量方という身分のために政治に巻き込まれたりといそがしい。
相も変わらず分厚いのにあっという間に読み終わってしまう面白さ。
今回は江戸帰郷後のお栄の挿話もあって
すこし目頭が熱くなる。
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ヲホツナイ(大津)からニシベツ(西別)へ向かい、そこで引き返し江戸帰着まで.悪者退治はしないが,だんだん水戸光圀みたいになってきたぞ.
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各巻600頁超もあるものだから、この第3巻あたりまで来ると、感想仲間も数えるほどの淋しさ。しかも、蝦夷地からの帰路とあって、新鮮味にも乏しい。さらには、お供の者を4人連れての忠敬の旅は、すっかり水戸黄門状態。ましてや、母娘の敵討の助太刀をするに及んでは。それでも、ともかくここまで読みすすめて、全5巻の峠も越えた。第4巻は、面白いらしいので、それを頼みに長丁場を乗り切ろうか。
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(*01)
テクストが重層する。
原基のテクストに忠敬の日記がある。第二に忠敬の時代のテクストがある。第三にこれら二つに解釈を施した井上のものと他の史学者らが記したテクストがある。第四にこれら三つを踏まえた上でこれら三つに記されなかった部分を井上が創作したテクストがある。第五にまえがきやあとがきとなる第四までの創作を記しての自己批評的であり私事的なテクストがある。
第一と第二の関係は、正統的な歴史理解と照らし穏当に読むことができる関係にある。歴史物として、忠敬周辺と近世後期に現われた新たな経済関係や文化諸相に対する知識を深めてくれるもので、コンテクスト-背景として読めるものでもある。
厄介が生じるのは、第三と第四のあたりで、井上の主観やそれに基づく創作が混じり、第一第二が正典ないし聖典となり遊びの余地を孕まずにカテキズムとして作用した反動として、物語と堕する。戯曲をよくする井上としての真骨頂はこの物語パートであり、固定化された正典を脇に置きつつ遊んだ結果のテクストともいえる。
ただし、現代感覚からすると、この物語は黄門的であり、やや近代的な苦悩が絡んだ漫遊記の様にも読める。つまりは、この物語部分は普通に読むと、安定的につまらないものである。事件がある、陰謀がある、色や女がある、孝行がある、忠義がある、貧富がある、しかし、それらの物語は、定めし平板である。
中盤の蝦夷の道のりは長く、アイヌと和人との交易やいざこざ、ひっくるめて未開と文明のコミュニケーションの問題に、創造の翼を広げて筆を大いに振っている。これは当時のアイヌに関する記録、北辺北方に関する資料が、化政文化や地方資料などに比して少ないため、創作の余地が生まれたと解することができよう。
それにしても、当時の文化の交差点として歩き続ける男忠敬を配したのは面白い。山東京伝、松平定信、山片蟠桃、菅江真澄、木食上人、間宮林蔵、平山行蔵、十返舎一九、葛飾北斎、二宮尊徳、鶴屋南北といった多士済々が、虚実はともかく、忠敬の旅程で交錯する。また、街道の宿場、後背地/搾取地としての農地、漁船や通商船が行き交う沿岸、こうしたそれぞれの場を舞台として、経済を営む民、そして徳川政権を筆頭とする権力としての武家などがしっかり描かれており、やがて近代を迎える、あるいは近代化を遂げつつある総体としての社会を読み物として学びとるテクストとしても有用である。
もちろん、忠敬の晩年に専門とした星学とその応用である測量と地図のあれこれについても教えられる。忠敬の一歩一歩と四千万歩は、地球における国土の相対的な位置を読み取り、歩測により正確に国土の姿をとらえる行為であった。地をテクストとして、忠敬は歩により読んでいたことになる。伊能地図とは表現である前に、読みであった。
私たちは地図を読むことはできるが、地を読むことのできるほどの学を修めていないし、一字一字一歩一歩読んでいる暇もない。伊能忠敬の偉業は、地図を表したことの前に、地を読んだことにあった。
本書を読むことの意味はそこにある。井上は伊能に習い、忠敬の一歩一歩を読みつつ、読み物としてのテクストに表したかったのだ��うと思う。果たしてその試みは、自称するところ、1/7で頓挫してしまった。
井上に継いで、この先の伊能忠敬の足跡を読み著す者がいつかは現われることと思う。伊能忠敬の一歩一歩は詰まらないが、一歩一歩が紡いだ全体の図像と物語には読み解くほどの価値がある。
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蝦夷地の測量の旅をつづける忠敬たちは、敵討ちをこころざす母娘に出会い、彼女たちと同行することになります。さらに、忠敬とともに旅をしていた松前ノ吉助の出生にかかわる秘密が明らかになり、息子の秀蔵がお初という女性に惚れ込み旅を止めると忠敬に申し出るなど、あいかわらず数々の事件に巻き込まれていきます。
ようやく役目を果たした忠敬は、完成した地図をたずさえて江戸へもどります。しかし、そんな彼に師の高橋至時は、さらなる計画を用意していました。早くも次の旅へと心を動かされる忠敬でしたが、一向に家のことを顧みない彼に、妻のお栄の愛想も尽きてしまいます。
あいかわらずの自由なストーリー展開ですが、とりあえず本巻で忠敬の最初の旅はひと段落となり、次巻からはいよいよ日本全国の測量の旅です。
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幾多の妨害や刺客に狙われながらも蝦夷地測量を続け、ニシベツにて折返し、ようやく江戸に戻り、お上に地図を届け無事に役目を終えるかと思いきや、まだまだ一件落着には至らず。物語は続きます・・。