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紙の本
不思議な味わい。
2002/02/06 00:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神西清」という作家の名前を、自分はこの本を読むまで知らなかった。これは自分の浅学ゆえかと思っていたのだが、池内紀氏の解説によると、神西清の名は、今日では僅かにチェーホフやシャルドンヌの訳者としてしか残っていないのだという。
収録されているのは、「夜の鳥」「ハビアン説法」「わが心の女」「雪の宿り」「化粧」「三つの挿話」「水に沈むロメオとユリヤ」「死児変相」「ジェイン・グレイ遺文」「青いポアン」の10編。文体がやや詠み辛い作品もあるような気がしたが、これは読者にもよるだろうか。
「死児変相」の最後の2行は、非常に印象的だった。確かに主人公──千恵の言うように、この世には偽善よりももっと恐ろしい悪があり、人間は知らず知らずのうちに、その悪に落ち込みがちなのかもしれない。
ベストセラーも良いが、たまには忘れられてしまった作家の本を読み、昔見た──もしくは見たことの無い、昔の風景に思いを馳せたいものだ。
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