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王国北部にある巨大な湖「淡海」。そこでは自治権を与えられ、連綿と受け継がれる女王が人々の崇拝を集めていた。隣国との戦争が泥沼化し、北部にも軍隊が常駐する。そんな中で行なわれる嬢の交代。そして龍王が顕現するという噂が流れ出すのだった。
ファンタジーと機械文明が融合した世界。龍王は竜巻の姿で顕現し、それを鎮めることができるのは女王だけ。しかしそれは女王の命と引き換えの儀式。
ようやく姉が女王の任期を終えたと思ったら、次は恋人が女王となり、心乱される少年。女王をひとりの女性として愛する王太子。飛行機械の開発に熱中する技術工。龍王を憎む中隊長。女王に就任し喜びと不安がない交ぜとなる少女。登場人物それぞれが、それぞれの想いを抱き行動する。
心地よい世界観が展開される裏で、着実に迫り来る戦争の恐怖。そして龍王顕現に対する想い。
予定調和な展開はあっさりと覆され、為す術なく運命の濁流に飲み込まれる人々。
それなのに虚無感だけではない読後感があります。それは登場人物それぞれの想いが為すものかもしれません。彼ら彼女らの想いで紡がれたからこそ、この物語は悲しいだけでない美しさがあるのでしょう。