1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジュニア新書は子供向けだと思いがちだが、さにあらず。侮れないほど解説と内容が盛りだくさん。公民権運動の代表者としてのキング入門書だ。
投稿元:
レビューを見る
アメリカにおける人種差別が、たった50年前の出来事であると思うべきか、それとももう50年も昔の出来事だったと思うべきか、人それぞれだろう。しかしその差はとてつもなく大きい。アメリカ人の中には(特に在米日本人の中には)人種差別など過去のことで、その改善は日々進んでいるとおっしゃる方々もいる。しかし制度上、外見上は改善されたように見えても、人々の心の中に潜む人種差別の底なしの暗さはなくなっていないように思えてならない。現代アメリカ社会における貧富の差の拡大化、人種間の対立の構図の広がりを見るとキング牧師の行ったこと、その精神をもう一度省みる必要があるのではないか?小中高生向きに書かれたものとはいえ、成人が読んでも牧師の業績は感動をよぶ。
また師の業績をわかりやすい文章で紹介した共同作者の一人である辻内鏡人氏が非業の死を遂げられたのは残念でならない。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
アメリカ公民権運動の指導者として、非暴力抵抗運動の先頭に立って闘い、志半ばで凶弾にたおれたキング牧師。
「私には夢がある。それは、いつの日か、かつての奴隷の息子と、奴隷所有者の息子が、兄弟として同じテーブルにつくことだ。」
人間愛に満ちた社会の実現をめざし、三九年の生涯を燃焼した、その足跡をたどる。
[ 目次 ]
1 牧師への道
2 歴史の舞台へ―バス・ボイコットの勝利
3 非暴力をかかげて―公民権運動の高まり
4 私には夢がある―ワシントン大行進
5 栄光と苦難―ひろまりゆく対立
6 私たちの進む道―アメリカよ変われ
7 最後の巡礼―ヴェトナム反戦と「貧者の行進」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
黒人人種問題についての彼の活動はすばらしい。個人的に尊敬する人物だ。同種の活動の他の活動家マルコムX等と比較してみるのも良いと思う。(マルコムXを否定してるわけでは無いです)
投稿元:
レビューを見る
ジュニア新書なので非常にわかりやすくキング牧師の生涯が描かれていてました。おおまかな知識を得るのには役立つと思います。
若干キング牧師寄りな書き方なので、ニュートラルな立場で公民権運動時のことが知りたい方は他の文献も合わせて読むことをお勧めします。
投稿元:
レビューを見る
(2014.10.26読了)(2008.12.10購入)
副題「人種の平等と人間愛を求めて」
【ノーベル平和賞受賞】
1863年の奴隷解放宣言によって、アメリカ南部の黒人は、奴隷状態から解放されたのですが、白人と対等の扱いになったというわけではありません。
南部では、選挙権は与えられず、隔離政策により、学校、トイレ、食堂、水道、等、白人と黒人は、一緒のところを利用することはできませんでした。バスや映画館などは、白人用の席と黒人用の席が分離されていました。バスでは、白人用の席がいっぱいになると黒人は立たされ、白人に席を譲らなければなりませんでした。
北部では、黒人に対する給料や住む地域の差別が行われていました。
公民権運動は、黒人に対する法律的な差別を撤廃させる運動です。その先頭に立って戦ってきたのが、キング牧師たちです。
運動の始まりは、1955年のバス・ボイコット運動です。その後、学校の共学の実現、レストランでの隔離座席の撤廃、等、順次、法律上での差別の撤廃を訴えて行き、1964年の公民権法の成立で、法律上の差別はほぼなくなりました。キング牧師は、この年にノーベル平和賞を受賞しています。
ベトナム戦争により、問題解決は先延ばしになるので、戦争反対を訴え、貧困の問題をどう解決するかに取り組んでいた、1968年4月、キング牧師は暗殺された。39歳。
【目次】
プロローグ
1 牧師への道
2 歴史の舞台へ-バス・ボイコットの勝利
3 非暴力をかかげて-公民権運動の高まり
4 私には夢がある-ワシントン大行進
5 栄光と苦難-ひろまりゆく対立
6 私たちの進む道-アメリカよ変われ
7 最後の巡礼-ヴェトナム反戦と「貧者の行進」
エピローグ
あとがき
関連年表
●人種別の学校(15頁)
1930年代のアメリカ合衆国では、黒人は白人の通う学校に入れませんでした。人種別の学校に通うというこの習わしは、マーティンが生まれるよりもはるか昔からつづいていたものでした。
●根本主義(27頁)
「ダディー」は、旧約聖書の言葉をそのまま厳格に解釈する根本主義と呼ばれる立場を取っていました。そうした考え方は、人びとが楽しみとするダンスやトランプ遊びなどの娯楽も不道徳なものとみなします。そのような窮屈な解釈に、マーティンは賛成できませんでした。
●ガンディー(32頁)
ガンディーの考えは、誰かに憎しみをもって応じるなら、それは、もっと大きな憎しみと不正義、争いをもたらすことになるというものでした。そこから導き出されるのは、イギリスの支配に、あくまで暴力を用いずに抵抗するという、非暴力不服従の戦法でした。
●憲法違反(44頁)
1954年5月17日に黒人にとって20世紀でもっとも重要な判決が、ワシントンの連邦最高裁判所で下され、ただちにラジオ放送網を通じて報道されました。「ブラウン対トピーカ教育委員会」判決と呼ばれるその決定は、人種別の公立学校は合衆国憲法に違反している、という判断をはっきり示したものでした。
●南部の白人市民会議(61頁)
いかなる手段を用いても、黒人を殲滅しなければならぬ。われわれは、次のことを自明の真理であると考える。すなわち、すべての白人は平等に造られており、生命、自由、そして黒人の死を追求する権利を持っている。
●非暴力的抵抗(74頁)
キングは、非暴力的抵抗とは悪にたいして絶えず積極的に抵抗を続けることで、何もしない臆病者になることではないと、本の中で主張しています。また、敵を打ち負かすことが目的ではなく、相手の理解を得ようとするのが非暴力的抵抗者だと、キングは書いています。さらに、非暴力的抵抗の思想の中心にあるのは、人間に対する愛で、これこそが人間の社会や共同体に調和をもたらすものだといいます。
●不正な法(101頁)
人の人格を高めるような法律は、すべて正しい法です。逆に、人格をおとしめるような法律は、みな不正な法です。人種隔離を正当化する法律は、すべて不正な法です。なぜなら、人種隔離は人間性を傷つけ、魂を堕落させるからです。
●夢がある(116頁)
私には夢がある。それは、いつの日か、私の四人の小さな子供たちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に生きられるようになることだ。
●1964年公民権法(121頁)
1964年公民権法は11の個別の法律がまとめられたもので、公共の施設における人種隔離の廃止、公立学校での人種隔離と差別の排除、連邦政府との契約のもとに行われている事業でのいっさいの差別撤廃と「差別を是正する措置」などが定められており、公民権運動の10年間の成果を集大成する重要なものでした。しかし、選挙権や住宅に関する差別、また黒人に対する経済的な差別に関しては、言及されていませんでした。
●1965年投票権法(144頁)
この法律には、選挙権登録時の読み書き試験の廃止、州や地方の選挙における人頭税の廃止、さらに、公正な登録を行わない南部の州には、登録官を連邦政府から派遣することが規定されていました。
●三位一体(177頁)
キングにとっては、ゲットーの貧困と人種隔離された住宅、ヴェトナム戦争をそれぞれ別個の問題として考えることはできませんでした。戦争・貧困・人種差別は「三位一体の悪」だったのです。
☆関連図書(既読)
「私は黒人奴隷だった」本田創造著、岩波ジュニア新書、1987.08.20
「アメリカ黒人の歴史 新版」本田創造著、岩波新書、1991.03.20
「キング牧師とマルコムX」上坂昇著、講談社現代新書、1994.12.20
「「風と共に去りぬ」のアメリカ」青木冨貴子著、岩波新書、1996.04.22
(2014年11月1日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
アメリカ公民権運動の指導者として、非暴力抵抗運動の先頭に立って闘い、志半ばで凶弾にたおれたキング牧師。「私には夢がある。それは、いつの日か、かつての奴隷の息子と、奴隷所有者の息子が、兄弟として同じテーブルにつくことだ。」人間愛に満ちた社会の実現をめざし、三九年の生涯を燃焼した、その足跡をたどる。
投稿元:
レビューを見る
「私には夢がある」
キング牧師の有名な演説の1フレーズ。
彼は、アメリカの人種差別に非暴力で訴え続けた指導者の1人だ。
ガンジーの非暴力での抵抗に感銘を受けてる。
書籍にはキング牧師の生い立ち、各地でのデモが書かれている。
1929年、牧師の子として、マーティン・ルーサー・キング・Jr.が生まれる。
当時、バスやレストランなどの公共の場では白人と黒人の座席がわかれていた。
バスでは黒人は白人に座席を譲らなければならない。
そこは、人種差別がはっきり残るアメリカ南部。
キングは、ベトナム戦争時には、アメリカの貧困問題を抱えておきながら、多額の費用を軍事に当てる政府に不満を抱いていた。
人種差別の問題と戦争反対を強く訴えた。
1968年、テネシー州メンフィスにて39歳という若さで凶弾に倒れた。
告別式には、アメリカ各地から10万人に近い人がアトランタに集まったとのこと。
投稿元:
レビューを見る
本書はわかりやすく、キング牧師の生い立ちから運動にかかわっていくところ、そして、成功を収め、さらに苦悩を抱えながらもあきらめない姿勢を一定の速度で綴っています。キング牧師は演説を中心として、その非暴力の直接抗議行動、つまり、座り込みやデモ行進などで黒人差別、人種隔離を壊していきました。その成功のインパクト、意志の強さや誠実さ、信念で貫いた感があって、読んでいて気持ちが熱くなってくるくらいでした。それにしても、アメリカは古くから奴隷制度を根幹にして発展した国ですから、白人たちの頭には、差別意識が深いところまで刷り込まれています。すさまじい迫害や弾圧が、民衆レベルだけじゃなしに、警察や州知事、FBIなどの権力者までからもなされるのです。大統領やライフ誌、ワシントンポストなどの名だたるマスコミにだって差別が染みついている。アメリカのもっとも深い病巣ってここなんですね。自由の国アメリカは、アメリカになろうとしてなれないでいる国だ、と本書に書かれていましたが、その通りだと思いました。
投稿元:
レビューを見る
BLMをきっかけに、恥ずかしながら、名前だけは知っているけど、何した人なのかまでは知らなかったので読んでみた。もっと早くこの本を読んでいたら人生変わったまではいかないが、運動家達の犠牲と勝ち取った権利について尊敬。
投稿元:
レビューを見る
ジュニア新書ではあるが、キング牧師についてとおりいっぺんのこと(公民権運動、「私には夢がある」演説、ノベール平和賞、暗殺)くらいしか知らないかな、という場合は大人でも十分楽しめ、ためになる。
読んでいくと、既存の類書を翻訳したり知識をつぎはぎしたのではなく、この本のためにきちんと書き下ろされたものだということが感じられる。日本の若い読者に向けて要所要所でアメリカでの常識的な知識も補足しながら丁寧にキング牧師の生涯を辿ることによって、一人の人間としてのマーティン・ルーサー・キング像を知ることができる。それはまさに、キングの葬儀で流された本人による演説にあるように、どんな賞をもらったとかどんな学校に行ったとかが重要なのではなく、人のために一生を捧げ、すべての人間を愛し仕えたと言ってもらいたいと願った彼の意に叶うものであろう。
また、エピローグの部分では、彼の「罪びと」たる面(博士論文における剽窃、多くの女性関係)も隠さず記している。あえてこの恥部に触れることで、この伝記は完璧なものになった。キング牧師も弱いところのある人の子であったのだから、自分にもきっと同じことができるはずだ。そう勇気づけられる若い読者の手に渡り続けることを祈る。
なお、もう少し深くキング牧師について知りたくなったら、同じく岩波の新書「マーティン・ルーサー・キング―非暴力の闘士(黒崎 真)」に進むのがおすすめ。