紙の本
むきだしの民族感情
2002/03/22 05:25
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投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めてとても驚いたのが、むきだしの民族感情が渦巻いていること。ゲルマン民族は世界一! ラテン民族がもっとも優秀! アングロサクソンの優越性!! などなど。今現在、こんなものを書いたら、頭がどうかしたのではと思われるだろう。この小説が書かれたのは1879年。フランスが普仏戦争の敗北の結果、アルザス・ロレーヌの割譲を余儀なくされた直後。当時の民族感情と云うものがむきだしに表れていて、興味深く感じると同時に恐ろしくもなった。
さて物語は、インド王妃の莫大な遺産を、フランス人とドイツ人の科学者が相続することになったところから始まる。その遺産を使って、人々との幸福のため、近代科学の粋を集めた理想都市〈フランス市〉を建設するフランス人科学者と、鉄鋼製品生産拠点〈鋼鉄都市〉を築き、鉄を精練して大砲を作り、各国に売りさばく死の商人となったドイツ人科学者。理想主義者として描かれるフランス人科学者サラザン博士と、どう見ても異常者のドイツ人科学者シュルツ教授。ヴェルヌ大暴走である。
理想都市として描かれる〈フランス市〉は、しかし困ったことに、あまり快適そうには見えないのだ。まだまだ純朴だった理想主義が微笑ましいというところか。反対に、〈鋼鉄都市〉の造形がすばらしい。ある種、悪の秘密基地の原型である。このガジェットの活躍をもっと見たいと思ってしまったりした。
物語は、〈フランス市〉に憎悪を燃やすシュルツによる〈フランス市〉の破壊の企てと、それを阻止せんとする主人公マルセルのせめぎ合いを軸に進む。その結末は本を読んでもらうとして、とにもかくにも、悪役の勢力の方が魅力的な物語であることよ。
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普仏戦争でフランスがドイツ(プロイセン)に負けた後に書かれた作品。
ヴェルヌは超・愛国者ですから、もともとフランス贔屓なところがありますが、
かなりこの作品ではドイツに敵対心を持った書き方がされてます。
ソーセージと、酢漬けキャベツ、そしてビール…という典型的なドイツ食に対して皮肉ってみたり、
何かを新発明するということは、基本的にはゲルマン人には向いてないとか…あららら(笑)。
あとがきで三木卓氏も書いてましたが、ふとヒトラーが説いたゲルマン人の優秀性について、
作品を読みながら考えずにはおられませんでした。どっちもどっちな事してるなァ…(汗)。
<あらすじ>
インド王妃にまつわる莫大な遺産が、二人の相続人に山分けされることになった。
フランス人のサラザン博士は、その遺産を用いて、アメリカ東海岸に理想都市
(というより衛生都市…)を建設し、科学者、芸術家などの、あらゆる教育環境を整備した。
続き→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-366.html
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タイトルや表紙の絵に期待して、神秘的な物や謎めいた物や大冒険を期待してしまったので、予想と違った展開でした。
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インド王妃の遺産をドイツ人とフランス人の科学者が相続し、それぞれ理想都市を作る話。著者の反ドイツを強く感じる。民族間の感情や民族についてあまり意識した事がなかったので新鮮でした。
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インド王妃の遺産 って何かしら?
なんてロマンティックな内容かと思いきや、
莫大な財産をうけついだ2人の科学者が それぞれ都市を建設し、理想郷と野望が対立。
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本作品は1879年に出版。普仏戦争(1870~1871年)でフランスが負けた後だったようで、ドイツ人のシュルツ教授が徹底的な悪人として描かれています。
今のドイツ人は本作品をどう思うのでしょうか。
確か1864年出版の『地底旅行』では、主人公のリーデンブロック教授は勤勉なドイツ人でした。
ウィキペディアにも言及ありますが、ヴェルヌのドイツ人描写も戦争によってひどくなったようです。
戦争は人に憎しみをもたらせます。
平和であることにこしたことありません。
シュルツ教授は殺人兵器として、すごい爆弾を発明します。
これ、実用化が検討されなかったのでしょうか。
ナチスドイツや旧日本軍が原子爆弾の製造をあきらめ、この炭酸爆弾の実用化を検討していたらどうなっていたでしょうか。
シュルツ教授の建設した鋼鉄都市は、秘密基地のようなものです。
徹底したトップダウン型で、各区画は孤立してトップの支配下にあります。
この秘密基地に主人公のマックスが潜入・調査し、脱出するというスパイ冒険が本作品の中核を占めています。
ヴェルヌは色々なタイプの名作を残しているのですが、スパイものも描いていたんですね。
軍事に特化し超爆弾を持つ鋼鉄都市が戦争を想定していないサラザン博士の都市を攻撃すればひとたまりもありません。
そんなのどうすれば防げるのかと思っていれば、意外とあっけなく終わりを迎えました。
少々ご都合主義的な展開のようですが、これはこれで仕方ないですね。
もしあのような事故が起こらなければどうなっていたかシミュレーションしてみればどうなるでしょうか。
https://sfklubo.net/500million/
http://sfkid.seesaa.net/article/473732915.html