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紙の本
チャレンジャー教授の最後
2002/03/01 00:53
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投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コナン・ドイルが晩年、死後の世界と心霊術をテーマに、自らの生命が尽きてしまうことを恐れながら執筆していたという長編小説。
チャレンジャー教授の娘イーニッドは、チャレンジャー教授の友人として幾多の冒険に参加したギャゼット紙の記者マローンと共に、心霊協会を取材した。公正な態度で取材に望もうとはしていたものの、心霊現象などまったく信じない二人だったのだが、降霊会の最中に今は亡きサマリー教授の例が現れ、チャレンジャー教授への伝言を託されてしまう。
年老いても未だに勇猛果敢なチャレンジャー教授は、例のごとく爆発的な攻撃を心霊学へ行うのだが……。
シャーロック・ホームズを崖から突き落とした殺人者、としても名高いコナン・ドイルは──一部のシャーロキアンの間では、糾弾の対象ともなっている──、本作『霧の国』でまたしても自らが生み出した創作上の有名人を殺してしまった。今回の被害者は、チャレンジャー教授。
利己的で、超をつけてもいいくらいの個人主義者である彼は、強烈な個性を周囲の人間におかまいなしにぶつけては、新たな発見や重大な問題の解決を成し遂げてきた英雄的な人間。そんな彼に対してドイルが選んだ方法は、もしかすると他のどんな殺人の方法よりも──毒蛇を使った殺人『まだらの紐』や石橋を使った殺人『ソア橋』などよりもずっと──残酷なものかもしれない。チャレンジャー教授は、自らの生みの親によってチャレンジャー教授らしくあることを辞めさせられて、この物語が終わる頃には自分というものを完全に失ってしまうのだ。
正義感といい豪胆な人柄といい、チャレンジャー教授がホームズと同様にドイルが自分の性格を切り売りして創作した人物の一人であることは明らか。簡単な結論だが、ドイルは自分の一部を自ら欲して殺しているとも考えられる。一度ならず、二度までも。
晩年、心霊学の聖パウロと呼ばれるまでの貢献を果したドイル。彼をそこまで奮い立たせた理由は、一説には息子を戦争で失ったからだといわれている。彼の伝記を読んで人柄の一面を知ったとき、ホームズの死が彼にとって必然であったことがわかったような気がしたことを思いだした。チャレンジャー教授の死も、ドイルにとっては欠かせない出来事だったのだろうか。
創元SF文庫に収録されているが、SFというよりは幻想的な物語ともいうべき作品。ドイルの悲痛な叫びが物語となって鳴り響いているようだった。
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