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1987年、札幌で母子家庭の母親が餓死する事件が起きた。
こたつにつっぷしたまま餓死していた母親。そして3人の子供は母親が死ぬまで周囲にそのような状況を知らせなかった。
いったいどうして、このような母親はこのような悲惨な死をとげなければならなかったか。またどうして子どもは周囲に助けを求めなかったか。
その背景には、しあわせの幻想に隠蔽された、日本の貧困が見え隠れする。
特にここで問題とされるのは生活保護の実状。不正受給がクローズアップされるが、ほんとうに問題なのはもらえるべき人が受給できないことだ。
政府の小さい政府路線に従い、厚生省は生活保護の適正化をうたい、生活保護の受給率を下げようとした。役所に申請にきてもなるべく申請しないように誘導した。いや、ときには人格を否定するような-風俗で働くようすすめたり、生きていることを否定したり-対応もあったそうだ。
さらに生活保護受給者に対する世間の目の厳しさが、申請に行くことをためらわせる。
そのようにして、もらうべきひとが生活保護をもらえず、苦しんでいるのはおそらく今も同じではないか。
水島氏が述べたように、この国では苦しんでいるひとに対する想像力、優しさが欠如しているように思える。そしてマスメディアが想像力を麻痺させている責任は大きい。