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紙の本
ホイヘンスが映さなかった叙情
2005/05/21 13:59
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
1997年に発射された土星探査機カッシーニが、2004年に土星に接近し、突入機ホイヘンスの撮影した衛星タイタンの映像がニュースとなったことは記憶に新しいと思う。1979年に書かれたJ.ヴァーリイ「ティターン」では、有人探査船リングマスター号がそのタイタンの軌道に重なるようにして土星の12番目の衛星が発見されるというところから始まる(現在では土星の衛星は、カッシーニの探索などにより40個以上発見されている、らしい)。その衛星は実は生態系を持った巨大な宇宙船だったことが分かり、そこに住む知性とのコンタクトを試みるという物語だった。
続編である本書「ウィザード」では、その数十年後、衛星を統治する「神」ガイアと地球は友好的な関係にあり、地球にはガイアの大使館がありーーティターニスという種族の大使が派遣されているーーガイアには地球から観光客が訪れている。そしてリングマスター号の生き残りはアル中のウィザード=魔法使いとして、ガイアの代理人に収まっているところへ、新たな二人の巡礼者が地球から送り込まれる。
ジャンクな設定だ。異星人の巨大建造物、それを統べるオーバーテクノロジによる知能、異生物との交流と成長する登場人物、過剰で過激なフェミニスト。まったく俗っぽい展開になるわけだが、眼前に現れるのが機械文明よりは、遺伝子工学もどきによる生物学的側面を強調された世界であり、またその中で人間が単純な成長でない何か違ったものに変わって行くのはヴァーリイならでは。
そういう意味でも、サイバーパンクムーブメントの先駆け的な位置付けに置かれるのは妥当だろう。
自分の精神的問題の解決(治療)を求めてガイアを訪れた二人の巡礼者の物語は、異テクノロジ世界の冒険としてとして雄大かつ緻密である上に、微妙なずらし感と、大いに屈折する二人や、やはりそれぞれに屈折したティターニス達のやりとりが、今にして現代的であり、また実にヴァーリイなのである。交差又イトコ婚どころではないティターニスの複雑な習慣がワンダラー。
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