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現代の代表的詩人を網羅した詩集シリーズ。
先日、岩見沢市内に住む詩人の女性から借りました。
彼女も私も大の石原吉郎ファン。
というわけで意気投合し、
「じゃあ、この本は持っているか?」
「いえ、持ってません」
「貸したるわ」
って貸してくれたのが本書。
私も石原吉郎の別の詩文集は持っていますので、結構かぶっている詩はありましたが、あらためて石原の詩の世界を堪能しました。
私は詩を特別に愛好する者ではありませんが、石原だけは別。
彼の詩を読むと、何かこう、陶然とするのですね。
たとえば、晩年の作品「北條」。
□□□
いわれを問われるはよい。問われるままに、こたえる都であったから。笠をぬぎ、膝へ伏せて答えた。重ねて北條と。かどごとに笠を伏せ、南北に大路をくぐりぬけた。都と姓名の、そのいわれを問われるままに。
□□□
寡黙で折り目正しい武士の姿が目に浮かびます。
もっとも、吉本隆明にいわせると、
「でもぼくはみんなウソだって気がする。リアリティがないと思うんですよ。」
とのこと。
詩にあまりリアリティを求めるのもどうかと…。
巻末に吉本と鮎川信夫の対談が収録されていて、石原のことを結構明け透けに批判していてドキドキしながら読みました(もちろん、2人とも石原の詩人としての類い稀な才能、仕事を高く評価もしています)。
というわけで座右の書にしたいので、後で購入します。
最後に本書に収録されている石原の未発表の詩「詩法」を。
初めて読みましたが、最後の1行に撃たれました。
□□□
必要限度の誤解だけで
ととのえた行間へ
沈黙を盾に
生きのびるやつを
詩行の白昼へ
待ち伏せては
平然と主題をひるがえして
十行では なお
倒れぬやつを
十一行目で刺してころしてみよ