紙の本
一種の中毒性のある本
2001/12/23 01:09
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投稿者:カノン - この投稿者のレビュー一覧を見る
少年たちの愛憎が交じり合ってドロドロしているのにひどく儚げで美しい。目が離せなくなる作品。いろんな愛しかたやいろんな幸せがあるということが思い知らされる。
電子書籍
大人向け
2023/07/23 11:00
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつもながらの温度感のない透徹した淡々とした文章。
妖しくうごめく禍々しさの中にも、なんとも言えない透明感のある世界。
しかし、内容は残酷でえげつない。
ひとのこころの移りげなこと、そのほんの少しとも言える気持ちの変化によって運命が変わってしまうひと。
そうして、弄ばれるとも言える状況の中でも、したたかに生きていく、あるいは人ではない先に行き着く。
そういう意味でかなり気持ち悪く、アリスの頃のような本を期待していたら、もう無理!と投げ出したくもなると思う。
実際、これとは別の本を読んで、しばらく長野まゆみさんの本から遠ざかっていたことがあった。
文庫版巻末の松本侑子さんの解説にもあったように、今の作風に至る過渡期の実験的作品と思う。
そう読むと、豊富な語彙による表現や世界観など秀逸なのだ。
自分が年を経たから、読めるようになった本でもあるかと思う。
紙の本
残酷御伽草子。
2001/10/16 04:14
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投稿者:ゆうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯に「残酷御伽草子」とあるが、まさにその通りだ。儚い夢を描きつつ、少年達の美しさと色香を描いている。これは少々直接的な性的表現が見られるので、そういうものが苦手な人は読まない方がいいだろう。
しかし、全三話が収録されているが、そのどれもに恐怖と官能の美しさを感じる。恐怖とはいってもホラーなどの類ではなく、過去の不条理さや、悲痛といったものだ。
また、この作品には様々な色彩の名が登場し、豊かに情景を描いている。同性愛色が強いものの、それを淡々と描く文章が巧みで、実に読み易い作品に仕上がっている。同性愛が強いため、もしかしたらコバルトや角川ルビー文庫といった類のボーイズラブ小説を読んでいる方でも楽しめるかもしれない。
紙の本
残酷な綺羅の世界。
2002/07/26 00:55
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投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて読んだ長野まゆみ作品。主に美少年を中心とした同性愛色があるということは知っていたが、初めて読んだこの作品からして直接的な同性愛色が強く、内容も耽美的でありながら残酷風味もあって、少し驚いた(後で他の作品を読むと、宮沢賢治のような童話風のものが多いと分かったが)。日本の中世のような世界を舞台にした、まさしく「雪花(きら)」の物語たち。私はボーイズラブ系は苦手なのだが(実際の同性愛者に偏見は無いが)、それでも読むことが出来た。好きな人は本当に好きになる作品だと思う。
紙の本
綺麗な汚濁
2017/09/16 17:25
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しいタイトルが気に入って手にとったが とにかくオチがことごとく胸クソ悪いのが嫌だなあ。ひたすら 皆幸せにはしません!って意思だけはよくわかった。
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奈良〜平安くらいを舞台にした妖怪もの。「白薇童子」「鬼茨」「蛍火夜話」の三話。不気味だけど硬く美しい世界観です。
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美しく、妖しく、悲しい話はやはり長野まゆみさんだなぁと思いました。さすがです。タイトルからして綺麗ですよね。ただ、こういう話すごく苦手な人とかいると思うので強くおすすめはしません。『鬼茨』が好きです。一番妖艶だけど、一番純粋だと思います。
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鬼が笑い、女狐が哄う怪異の夜々、少年たちのみだらな行為が淫靡に光る大人たちのための残酷おとぎ草子。官能と霊気渦まく幽玄の都に誘う三篇、「白薇童子」「鬼茨」「蛍火夜話」を収録
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運命に翻弄される少年たちの一生を垣間見たい方は、是非。
残酷さの中に美しさが織り込まれている長野版、御伽草子。
「行ってみたいなよその国」は外国文学のパロディだったけどこちらは和の、完全創作ストーリーで全体的に妖艶で幻想的な雰囲気が漂ってる。長野節もきいてて好きだな。
『鬼茨』と『螢火夜話』が特にいい味出してる。他一遍。
登場人物が、自分の力じゃどうにもできない出来事に、抗って抗って必死にもがいて堕ちてゆくような、そんな類の救われない泥沼話が好きなので、上記のタイトル2つは「そうそう、こうゆうのが読みたかった!」って本の前で思わず膝を叩いいてしまった。
ラストに幸せを求める方は読まないように。
とりあえず蝉丸が可哀想すぎて涙。
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珍しく、近未来ファンタジーでも現代でもない、和風で古風な色香漂うおはなし。なるほど、こういうのも長野先生はよく似合いますね。先生のあのきれいな字で書かれた原稿はさぞかし美しいのだろうなあ。少年愛もあり。
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デビュー時の数作は読んだものの、無理繰りの旧字体・旧かなといい宮沢賢治志向といい、どうにも才気煥発やおい少女の若気のスノビズムが鼻についてその後自然と手に取ることはなくなってしまったのだが、最近、装丁が綺麗だったのでなんとはなしに手にとって読んでみた。 …………ら、これっておもいっきり「やおい」ぢゃねゃかよっっ。思わず真夜中に一気読みしちゃったじゃないかぁッッ。
そういえば高校の頃、同級生と彼女の作品の話をしていた時に「でも長野まゆみって、今『JUNE』そのものみたいなのばっか書いているんだよねぇ」みたいな話を聞いたことがあるが、なるほど、確かに奥付の発行日を見るに間違っていない。このあたりから完全「やおい作家」に転向していたのか、彼女。それにしてもここまでまごうことなきやおいを書くようになっていたとはおニィさんは思いもよらなかったよ。もっと野阿梓みたいな高踏的なやおいなのかと思ったら、ズブだもん、コレ。
この作品は伝奇系和風中世JUNEっつうか御伽草子JUNE。頭んなかでは完全に木原敏江のキャククターになってました。ほとんど「夢の碑」のノリ。あぁ、エロい。
各作品を軽く解説。
「白薇童子」
女と見まごうばかりの美貌の少年琉璃若は母をさらった仇、白薇童子を討つために雷の山獄、鬼の宮処へ辿りつく。しかしそこに待っていたのは妙によそよそしく冷たい母、朱の葛といつでも討つがよいと泰然と構える美貌の主、白薇童子。白薇童子の妖力が衰えるという冬至の夜、琉璃若はいよいよ討たんと白薇童子の寝所を襲うのだが……。
夜叉で半陰陽、見た目水も滴る美青年で平和を愛する白薇童子というキャラクターがエグすぎますぜ。萌えキャラとしかみれない。それにしても「母子相姦」かつ「やおい」ってひと粒で二度おいしい作品なわけで。母子との相克とやおいって切っても切り離せないけれども、こうするとひとつでまとまるのかぁ、と妙に感心した。
「鬼茨」
申楽の一門の少年小凛と将軍家の家臣の生まれの少年朱央は身分を超えた親友である。しかし、弓遊びに誤って打ち殺してしまったネコが原因で2人は修羅の道への道連れとなる。愛猫を殺された将軍の愛息、蜜法師は新たな戯れにと彼らを蹂躙するようになる。「恨みが募りついに鬼になった時はこの退魔の小太刀で我を討て」と小凛は肌身はなさず持していたそれを朱央へと渡すが……。
という、人として扱われない小凛がかわいそ過ぎな作品。
それにしても蜜法師の鬼畜ぶりが理解不能。なんで彼が狂っているのかいまいちわからない。したがってなんでこんな話を作者は作ろうとしたのかわからない。てことでただの妄想作品の範疇からはでられてないっぽい。いたぶられる美少年にジーンとくればそれでオッケーってノリなんだろな。
ともあれわたしは「蜜法師、許さん。お前らが出来ないならわしが殴り殺してやる」という気分になったぞ。完全に逝っちゃってる蜜法師のトラウマにぐぐっと入りこんでいく形に話を作り変えていけばもっと長くもっと濃い、意味のある作品になるような気がするんだけれどまぁ。
それにしても小凛に的を持たせてウィリアム���テルバリの危険な弓遊びを興じたり、朱央の目の前で小凛を強姦したり、というのはお約束としといても、生きている昆虫や咀嚼途中の唾液まみれの菓子や菓子に見立てた犬の糞を食わせるのはきちゃないですよぅ。
「蛍火夜話」
暗黒とりかえばや。将軍家の正室、二蝶に生まれた双子の世継。後々の禍根を絶つ為にと一方はその場で殺されることとなる。嬰児の殺害を任された侍女の苅安はしかし、その児を殺さず密かに川に流した。将軍家の児である証とともに。それから15年後の夏、世継として育った蝉丸と二蝶、苅安の3人は、避暑に涼野という山間を訪れる。そこで美しい少女、蛍姫と出会う。彼女はまるで蝉丸を生き写したかのような、美しい容姿をしていた。苅安は帯留めの房に15年前嬰児に与えた証をみる。しかし、彼女は葦名の中将、藤の宮の姫君であるという。それぞれ秘密を含んだまま、蝉丸の苅安2人は藤の宮の館に蛍狩りへと赴く。
って、なんじゃこりゃ――――っ。なんですか、このやおいでエロエロの話は。
藤の宮の館は「やおエロスの館」ですか。もうなんでもありですな。蛍姫が少年なのはもちろん、藤の宮とは関係を結んでいるわ、藤の宮の正室の白萩とも通じているわ、っていうか実は白萩は男性なんだよね、というのもあったり、いやいや藤の宮は女性が愛せない人だっていうのもあったり、さらに藤の宮の妹御の蕗草と蛍姫ともエロースな関係だし、しまいには館に仕える下男風情とも蛍姫はつながっていたり、と、乱れてます。乱れ過ぎです。おねぇさん頭痛いわ。蛍姫、魔性の美少年過ぎ。
それにしても、藤の宮が将軍家の落胤を少女として育てるにいたったのか、という根本のところがまったくわからないわけで。なんかそういったツメの甘さが「ただのヤオラーの妄想なのかな」と思わせてしまうのが勿体無い。これは「鬼茨」でも感じたことだけれども、これは尚一層。思いっきり大魚を逸しているぞ。
それに姦計に嵌り、蛍姫ととりかえられ世継としての寵を失った瞬間に蝉丸が自殺して終わりってのは、つまらない。つまらないぞ。ひたすら不幸な蝉丸くんがただカワイソなだけだし。もっとこれは話を大きくすべきでしょう。
今度は蝉丸が藤の宮のエロス館で女装させられ、蹂躙されまくられ、泥水のみまくって、悪の華を心に育てて、自分に成りすまして御曹司顔をしている蛍姫に最後リベンジするって流れにしなきゃだめでしょ。でもって一方で、藤の宮の権力に対する欲望とか、いつかの日のためにと蛍姫を扶育したその仔細とか、この物語のフィクサーである彼の闇の部分をしっかりでっちあげる、と。
そうすれば最終的には引き裂かれた双子の愛憎のドロドロの果てにみな殺しってところまでいけるんじゃないか、と。これで「紫音と綺羅」のような一大やおい浪漫にはなるんじゃないか、と。って、そうならないと栗本薫のファンは納得いかないです。……ってなんだそりゃ。
わたしだったら、藤の宮と蛍姫がぐるになって、(女装して蛍姫を演じさせられている)蝉丸を(蝉丸のフリをしている)蛍姫の妻に迎えるようにしむけさせて、その末に将軍家がぶっ潰れるほどのカタストロフを起こさせるけれどなぁ。 (……と、しばし妄想するわたし)
それにしても蝉丸と蛍姫の簪を媒介した濃厚なくちづけのシーンにジーンと来てしまった私はダメですか、そうですか。
と、3作を読むに、デビュー時のストーリーがあるんだかないんだかよくわからない「実はいうと特に意味なし」系雰囲気モノの世界よりは明確なストーリーを背景に感じさせるし、独り善がりっぽい旧字体・旧かなの読みにくい文章もここでは改めているし、全体でみると、彼女は以前よりも広い世界に出て小説家として成長したといえると思う。
が、その成長が「彼女がやおい系少女小説家にすぎない」ということを世間に露呈してしまったというのはファンとしては痛し痒しなんだろうなぁ、きっと。
彼女のファンには初期の作品を偏愛する者が多いと聞くが、こんな小説集を読むと、だろうな、と感じずにはいられない。
「あなたがいつまでも少女でいられないのと同じように作者だっていつまでも若書きでいられないんだからそのへんは許したれよ」
長野まゆみの初期作品のファンの人が目の前にいたら、そんなふうに肩をたたいてやろう。
とはいえ、この時点では物語のダイナミズムがはっきり感じられるほど弾けきってはいないわけで、その点に関してはやおい作家としても小説家としてもまだまだ。今はどうなっているのかな、と気になる。ちょっと他の作品も目を通してみよう。
それにしても、こんなモノ書いちゃ「栗本薫も森茉莉も読んだことない、知りもしない」なんて言い訳はもうできないでしょうよ。長野センセ。ヌハハハハ。
おまけ。
それにしても「水辺であの世でJUNE」ってこの三題噺はどうしてこうもオイラの心を惹きつけるのでしょうか。
水辺があの世とこの世のあわいで、そこに道祖神のように美少年(美少女でも可)が佇んでいるというこの構図。密かに愛する榊原史保美の諸作はもちろん、長野まゆみも「魚たちの離宮」という傑作以来、このイメージをどっかで引きずっているところがあるし。この「雪花草子」でも収められた3作ともに死の象徴、異界の象徴のように水辺の風景が描かれているわけで、やっぱりこのイメージってなんじゃらほい、と思ってしまう。ホント理由がよくわからん。一回きちんと整理して分析するためにも自分でコレ系のやおい小説書いてみようかしらん。
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長野まゆみさんの本で、一番最初に読みました。
『白薇童子』、『鬼茨』、『螢火夜話』の短編集になっています。
情景などの描写がとても綺麗な書き方をされています。どれも妖しく、ぞくぞくするような話です。
『白薇童子』では、夜叉の子・白薇童子を討ちに瑠璃若が夜叉の住む山に向かっていきます。
途中、その山裾の十夜峠に棲まう女狐にあい…。
『鬼茨』は、朱央と友だちの小凜。朱央は武家の子ども、小凜は舞々。
けれど、二人には身分のことはそれほど気にしていなかった。
ある日、朱王が大切にしている小魚を狙う黒い猫を見て、小凜が間違えて射抜いてしまう。
その猫は、奇行癖のある現少軍の息子・蜜法師が飼っていたのだった。
『螢火夜話』は、将軍の正室が双子のお世継ぎを生んだ。
けれど、双子であることは禍の元となるため、一方は命を失うことに。
その緑児を殺めることを云いつかった苅安。
だが、美しい緑児を殺めるには心がゆらぎ、小舟に乗せて川に流すことにして…。
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言葉が流麗。美しくて残酷な御伽草子です。
BL要素があるのが私としては少々不満ですが、不快でない程度なのでよしとします。
とはいっても登場人物は魅力的。きちんと人間の闇も美しく書き上げられている。
色の描写が毎度のことながらすごく綺麗でぐっとくる。
これでお腹がいっぱいになったりはしないけど食費を削ってでもこの一幅の絵を見たくなるという心境ですね。
長野まゆみの作品に出てくる気位の高くて繊細な少年が大好きです。
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鬼が笑い、女狐が哄う怪異の夜々、少年たちのみだらな行為が淫靡に光る大人たちのための残酷おとぎ草子。官能と霊気渦まく幽玄の都に誘う三篇。
収録作品
「白薇童子」「鬼茨」「蛍火夜話」
タイトルと文章の雰囲気がここまでマッチしている本は珍しいんじゃないだろうか。
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和風ダーク?読んだあとちょっとブルー。
でも、哀しい美しさってあると思う。
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