紙の本
十二歳の少年が、シェパード犬と、そして人と心を通わせていく物語。しみじみと心を揺さぶる味わいが、とてもいいのです。
2009/03/24 22:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1942年の英国、ノーサンバーランド州を舞台に、空襲で家族を失くした十二歳の少年ハリー・バグリーが、ドイツ・シェパード犬のドンとともに、放浪の旅をして行きます。戦時下、ハリーは色んな人と出会い、多くの困難に見舞われるのですが、そのひとつひとつを相棒のシェパード犬と乗り越えながら、少年から一人前の男へと成長していくのですね。
第二次大戦の暴風雨が吹き荒れる中、少年と犬が海辺を旅してさすらう姿が、物語のキャンバスに、生き生きと、力強いタッチで描かれていたのが素晴らしかった。本の中に登場する犬がこれほど魅力的に感じられたのは、クレイグ・ライスの『暴徒裁判』以来。魅了されました。
作者のウェストールは、1929年生まれ。本書の設定である1942年当時は十三歳くらいですから、主人公の少年とほぼ歳が重なるんですね。作者は、どんな思いを胸にこの作品を書いていったのだろう。それが腑に落ちた気がしたのは、巻末の「日本の読者のみなさまへ」を読んだ時のこと。ここにはあえて引用しませんが、はっと胸を衝かれる文章です。
物語の中、時にほっと一息つくことがあっても、少年は自分に、次のような警報を発せずにはいられません。<ぼくはまた一人ぼっちになる。そういう日はかならず来る。よいことは長つづきしないものなのだ>と。
こうした寂しさを常に心に抱きながら旅を続けていく少年と、大きな悲しみに打ちひしがれた人物とが出会い、お互いの気持ちを通い合わせていくところ。その辺の描写も、味わい深い趣に満ちていました。心にしみじみと響くものがありました。
投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦の頃のイギリス。戦争で家と家族をなくした少年が、イギリスの海辺を犬とともに歩き始める。途中、親切な人、残酷さにゆがんだ人などいろいろな人と出会ってみつけた心の王国とは?
投稿元:
レビューを見る
童話にでてくる登場人物のように人はどこまでも悪人でもなければ、善人でもない。この本は子供向けだけど、綺麗なだけじゃない人間の複雑な感情を登場人物、皆が持ち合わせている。状況的にはハッピーエンドなはずのラストもハリーにとっては・・・。
生きることの苦悩と素晴しさを正面から表現した本。
日本にもこんな素敵な児童文学作家がいると良いのに!
投稿元:
レビューを見る
少年ハリーと犬の話。とりあえずホモの軍人(だったっけ)の出現に叫んだ記憶が。確かキャンプに持っていったんだ。
投稿元:
レビューを見る
結末に驚いた。最初から最後まで、夢中で読んだ。あっという間!
ウェストールにはまるきっかけになった1冊。
投稿元:
レビューを見る
小学生の頃、読書感想文のおすすめ図書みたいなので
もらったパンフレットに載っていたのがこの本。
表紙が印象的で、なんとなくこれを買ってもらって
その年の読書感想文はこれをテーマにして書いて出しました。
物語の舞台は戦時下のイギリス(たしか)。
爆撃で家族を失った主人公が一人で生きていくというもの。
たしか主人公10代前半とかだった気がする…(´Д⊂ヽ
表紙イラストにもあるように、犬と一緒に生きていくのですが
この犬も主人公の飼い犬ではなかった気がします。
出会いや別れを通して成長していく少年の物語。
フィッシュアンドチップスを初めて知ったのもこの本。
<以降ネタバレ…>
…実は家族は生きていて、主人公は最後に家族と再会します。
でもその再会はハッピーエンドではなかった。
なぜか?それはご自身で読んで補完されることをお勧めします。
主人公の成長を
「この家に入りきらなくなってしまったのだ」と表現しているところは
今でも覚えているくらい印象的です。
投稿元:
レビューを見る
小学校の新聞に卒業する小学生へ贈る本を紹介してほしい、との依頼から本を探したのですが、なかなか決めきれず・・・選んだのがこれです。
空襲で家と家族を失った12歳の主人公が、途中で出会った犬とともにいるべき場所を探してさまよう・・・という、まぁ簡単にいうとこれで終わっちゃうストーリーなのですが、そこはウェストール、読ませます!そして衝撃のラスト!
このラストがどうかな~と思い2,3日逡巡。その間他の方の書評を見たり、少し冷静に考えてみたりして、あ~でも本当の人生、本当の成長をリアルに描くとこうなるのか~と思えたので、やっぱりこれを紹介しました。もし、自分がヤングアダルト世代だったら、このラストが好きだったかもしれないと想像できたからです。生き続けること、大人になることのリアルが大人にとってはむごいまでに表現された1冊です。
投稿元:
レビューを見る
(「BOOK」データベースより)
空襲で家と家族を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を、犬とともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあい、親切な人や心に痛みを抱えた人、残酷なゆがんだ人など、さまざまな出会いをくぐり抜けるうちに、ハリーが見出した心の王国とは…。ガーディアン賞受賞、カーネギー賞銀賞受賞。
投稿元:
レビューを見る
冒険すること、大人になること、「どうしようもないこと」に出会うこと・・・。
そんなことを体験しながら、決して“外の世界が変わる”のではなく、“自分の内なる世界”が変わるということをまざまざと見せられる。
そして、そこで育った力こそが大きな宝になる。
大人になってからだって、こういう瞬間は、本当はたくさんある。
投稿元:
レビューを見る
もっと結末が輝いているのかと愚考していた。苦しみぬいた子供が、しかもカバーによると『心の王国』を見出すというのだ。
なんということだろう。こんなにすばらしい少年の本は、エンデのバスチアン以降はじめてだ。はてしない物語を読んだのは、私が小学校中学年ぐらいだったと思うが、その頃からある程度の理解ができた。真にうつくしい児童文学というのは、子供が読んで、わくわくしたり、なにかを感じられる。そしてその本の真相を、理解するにはまだ至らなくとも、おとなになった時、ああ読みたいと思う。読んでみる。涙がしずかに流れる音を耳にする。子供の頃を思い、涙する。そういうものだと私は信じているのだ。はてしない物語は、それに当てはまっていた。
この本は――もっと幼い頃に読みたったかもしれない。そうすると、はてしない物語のように、もっとR・ウェストールという作者をたいせつに思えたのかもしれない。
けれど今読めた。出会えた。十五歳で読めた。まだ少女に間に合った。
それが途轍もなく嬉しい。
もしも――もしも、幼い頃に読んでいたのなら、私は間違いなく結末に疑問を抱いていただろう。そうして、おとなになってから結末のすばらしさを悟って驚いただろう。けれど私は充分少女だ。この本の主人公・ハリーのように、ある程度を悟った。寧ろおとなになってからは気づけないことに、気づいているのかもしれぬ。(おそらくは、今だけ限定で。)結末は今の私になって、どうしようもなく、すばらしい。そうとしかいいようがない。
今だけ限定で。そう書いたがたとえばエンデのように、ウェストールという人も子供を保持しつづけたおとななのだろう。
そんなおとなになりたいと、心から思った。
★追記。今夏の読書感想文は、これにしましょう。
投稿元:
レビューを見る
小学生の頃、読書感想文のために読んだ思い出。
すごく印象的なシーンが多くて、最後はほんとに悲しい気持ちになったけど、少年の成長と戦争の悲しさを描いてて、とてもよかったです。
ある意味シビアというか、世の中の厳しさというか、ご都合主義に大団円とはいかない、子供の読む絵本とは違ったリアルさが、なんとも、子供心に複雑に思ったものです。
これ読んで、フィッシュ&チップスに憧れたんだ、当時…。
おいしそうなんだもの。
投稿元:
レビューを見る
小学生の頃、初めて自分のお小遣いで買った小説。
戦争で家と家族を失ったハリーと犬の海での物語。
強く成長することは必ずしも幸福に繋がるわけではない。
物語を最後まで読んだ人は、成長がもたらす孤絶と喪失の哀しみを知る。
投稿元:
レビューを見る
男の子を持つ母として、自分の子は家族がいなくなったらハリーのようにたくましく生きていけるのだろうか…?と思った。
投稿元:
レビューを見る
小5くらいの時に読んでボロ泣きした記憶があります。
好きすぎて下宿に持ってきた一冊。
戦争を通じて精神的に大きく成長していくハリー。
最後のオチがすごい印象的でした。
ありきたりなハッピーエンドじゃないとこがよかったなぁと思います。
どうしても抗えない現実と、未来への希望。
またもう一度読み返してみよう。
投稿元:
レビューを見る
小学四年生の時に母上に買ってもらった本、タイトルに惹かれて戦争ものと知らずに選んだから内容に驚いた。ポテトチップスを食べるシーンがとても美味しそうで何度も読み返した覚えがある。