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童話ならいらない最後の20ページを書くのがウェストール。世界は作り笑いはしてくれない。それにしてもこの人、「妹」になんか恨みでもあるんだろうか?
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見たくない自分の弱さを見せつけられる。
ハリーの状況で、同じ子供だったら、
私は泣いて、座り込んで、動けず、大人に縋り付いて、手を引かれていくのだろうと、10ページぐらいを読んだところで、そう思った。
とにかく主人公の少年ハリーの行動、心の動きが、リアルに丁寧に
時間をとって描かれる。
食べ物、相棒、怒り、歩み、暴力、大人、親切、知識、性、弱さ、
そういうものが、繰り返し繰り返し、ハリーを叩きのめしにきて
息つく暇もない。
幸福や、絶望は、音もなく少年の前に現れる。
「けれど、ハリーにはわかっていた」
この言葉が、読み続けた分だけ、じわっと熱く広がる。
「ハリーは成長した。…パパはそれを知っている。それを憎んでいる」
この話にあったこの一文を読めただけで、
よかったと思えた。
父と息子の物語なのだと実感する。
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空襲で両親と妹を亡くしたハリーが、迷い犬を友に、さまよい暮らしていく。そのときどきで、心の豊かな人とのかかわりもあれば、心の貧しい人とのやりとりもある。
そんな放浪の中、彼は知らぬ間に「人」というものを学び、成長したが故に、思いもかけない事実と、ハリーにとっても、彼の周囲の人間にとっても、読んでいる私とっても、居心地の悪い結末を迎えなければならない。
人生とは、ままならないものだとでもいうような。
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戦時下が舞台。でも現代に通じる少年の旅――『海辺の王国』再読
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20120413/1334270373
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イギリスの児童文学で少年の成長物語。12歳の少年ハリーは、戦争の爆撃で家族や家と離れ、一匹の犬、ドンと友達になり、共に海辺に沿って自分の居場所を探しに旅(冒険)をしていく。空腹や寝床に困りながらも、様々な人々と出会い、その人々が人間の様々な部分を見せてくれる。また、自然の恐怖や素晴らしさ、美しい外見の島なのに、そこに住む人の醜さ等、この世のこと、生きていくということを、少年の視点から様々と教えてくれる。ハリーは賢くて優しく、心の強い少年であり、よく、一人旅をすると良いと言うけれど、まさに大人以上に大人な少年になる程に成長する。しかし、最後の場面で、戦争による愛する家族の変貌ぶりと、ハリーのこれからが悲しくも見えてしまう。感動し、考えさせられる傑作な児童文学でした。
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ハリーの心の冒険と成長がしとやかに描かれて、
心あたたまる話。
最後の家族との再会において、ハリーは家族よりも心が成長してしまったと思われるのだが、冒頭で家族の描写が少なく、こんな家族だったっけ?と思ってしまった。
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空襲で家族を失った12歳の少年ハリー。
普通ならそこで呆然としてしまうところなのに、ひとりで生きていこうとするハリー。お互い一人ぼっちとなってしまったの犬の相棒ドンとともに、いいことも悪いことも乗り越えて、最後にたどり着いたハリーとマーガロイドさんとの幸せの王国。しかしそこには衝撃のラストが。
男性作家ならではの男としての生き方みたいなものを感じました。
この1冊でウエストールのファンになりました。
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本来ならハッピーエンドであるはずのラストなのに、苦い読後感が残る異色の話。空襲で家族と生き別れになった少年が、家族と再会できたんだから、ハッピーなはず、なのに。男は家庭に縛られるより自由に生きるべき、ということなんでしょうか。解放から一気に束縛へ向かうラストって斬新だな。
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孤児になったと思い込み放浪の旅を続けるハリー。物語の 最後で、死んだと思っていた家族と再会する。けれど、温かく幸せだった頃の家族は 大きく変わっていた。そして ハリーもまた大きく変わっていた。
12歳の少年が一人で旅をするだろうか、と思いながら読んでいったが、
(私にとって)不自然な内容も消えてしまうような 筆力を感じるし ハリーや戦争の切なさも感じる。 家族とは 何なのかということも考えさせられる。
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優れた児童文学は続きを予想させてくれて、そこに爽やかな希望があるなあ〜。
読後にやるせなさが襲ってきて、どうしてもハリーを哀れんでしまったけど、大事なことはハリー自身が希望を捨てていないこと。彼が世界に正面切って向かってゆくところ。
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第二次世界大戦下のイギリス。 ドイツ軍の空襲があり、一足先に防空壕に飛び込み家族を向かいいれる準備をしていた少年のまわりで世界が吹き飛んだ。
父と母、そして妹を一度に失った13歳の少年は、避難所にいって可哀想な子供として生き延びるよりも、自分だけで生きていくことを選択した。
野宿生活の中で、同じように被災した大きな犬と友達になる。
様々な場所で、辛い目にあい、またとても親切にされと色々な人と出会うことによって少年は成長していく。
そして、戦争で息子を失った男やもめのマーガロイトさんと出会う...
イギリスの伝統的な物語として、夏休みを過ごす子供たちの冒険譚があると思う。「海辺の王国」このタイトルから、不思議の国にでかけて冒険する物語だと思って読んでみた。
しかし、そこに描かれていたのは、戦争で肉親を失い、それでも強く生きていく人々の姿。そして、友と共に成長していく少年の姿。
一編の小説なんだけど、とても多くの要素が含まれている物語だと思う。
映画「スタンド・バイ・ミー」のように、少年から成長していく年代の子供に読ませたいと思った。
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空襲で家と家屋を失ったハリーは、犬とともに海辺を歩き自らの居場所を探すのだった。
12才の少年が戦時下をひとり生きるために歩き続ける。出会う大人たちは皆、ハリーに自分の想いをぶつける。それは善意であったり、悪意であったり、欲望であり希望であり優越感であるかも知れない。そんな様々な大人たちと出会い言葉を交わしていく中で、ハリーは変わっていく。それは少年が成長することでもあろうし、時代と運命に翻弄されて変わらざるを得なかったということかも知れない。
変わるのは少年ばかりでなく大人も時代と運命に翻弄され変わっていく。ハリーがようやく自分の居場所である王国を見付けたと思った瞬間に失意のどん底に落とされるのも、そんな変わってしまった大人によってのこと。最後の最後で読後感が悪くなるような展開なのに、決してそうはなりません。それはハリー自身の変化(成長)がそんな大人の事情を超越し、自らの力で王国を掴もうとする希望を胸に秘めているからでしょう。王国を見付けてめでたしめでたしと締めるのでなく、王国を見付けることのできる人間になったことを暗に示す。そのことによって希望の灯を見せる。そんな素敵なラストに衝撃を受けました。
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さすが、ウェストール。子ども向けの本でも安易な誤魔化しはしない。
少年の成長を描くが、出会う人すべてが現実世界に確かに存在する人物で、いかにも作家が作りだしましたという人は一人もいない。それぞれが自分の人生を抱えているが、戦争中なだけに、楽しく安らかに暮らしている人はいない。
少年の存在は彼らにとってほんの一瞬の出会いの時もあれば、かけがえのない時のこともある。
それを刹那として生きねばならなかったからこそ、短期間のうちに少年は(したくはなかったかもしれない)成長をしたんだと思う。
ラストの苦さは、しかし、子どもの頃素晴らしい人だった親が、つまらない普通の人間だと、気づいたことのある人なら誰しも納得のできるものではないかと思う。
また、マーガトロイドさんという大きな喪失とともにどうにか生きている人物が少年に希望を与えはするが、自身は更なる悲しみを抱えててしまうところが切なく、この人物こそウェストール自身なのではないかと思った。
息子を失うという辛い体験を通した、宗教観、世界観は、優しく、厳しい。
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あさのあつこさんが海外児童文学の中でイチオシで紹介していたので、読んでみた。
まるで、あさの作品「バッテリー」の巧のように、自分に誇りを持って、自分を失わない。けれども、そのまっすぐな少年と相対する大人たちは却っていろんな弱さ、強さ、醜さ、脆さを現す。
時代は、空襲でひとりぼっちになる処から始まるので、戦争文学に入りがちかもしれないが、決してそうではない。現代日本でも、貧困の中でもし12歳の少年がひとりぼっちになれば、嫌な「保護」を拒否して、これに似た物語が成立するかもしれない。しかし、果たしてこの物語のように、抑制と具体性と気品を持つことが出来るだろうか。
内容(「BOOK」データベースより)
空襲で家と家族を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を、犬とともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあい、親切な人や心に痛みを抱えた人、残酷なゆがんだ人など、さまざまな出会いをくぐり抜けるうちに、ハリーが見出した心の王国とは…。イギリス児童文学の実力派作家ウェストールの代表作。「児童文学の歴史に残る作品」と評価され、世界十数ヵ国で話題を呼んだ。ガーディアン賞受賞、カーネギー賞銀賞受賞。
2015年5月22日読了
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中学生の頃に「十五少年漂流記」を
読みましたが…必ずしも
「ロビンソン・クルーソー」の
ように一人ぼっちで生きていくという
ことがテーマにはなっていなかった
のでこのような偉大な児童文学に
多感な少年時代に出会えてなかった
ことを先ず惜しまれます。
さて、第二次世界対戦中のイギリス
を舞台に親、兄弟を戦争で失くし
はぐれた犬を共に海沿いを放浪
するというお話なのですが…
夢見がちなファンタジーではなく
超リアルなドキュメンタリータッチ
大人たちの愚かさまでも
浮彫りにする社会性が溢れた文体
で生き生きと現実味がどこまでも
追いかけてきました。
人生は「めあき千人、めくら千人」
でもあなたが思うほど悪くはないよと…
うーむ理屈では無く感じる文学です。
最後にはあっと驚く結末が待っています。
全ての少年にそして夢を失くしてしまった
僕のような冴えない中年男に是非とも
読んで頂きたい一冊!
ウェストール氏に乾杯!