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紙の本
穏やかなユーモア漂う大傑作
2009/03/16 23:00
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:祖師谷仁 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな本を一冊書けたらいつ死んでも悔いはないだろう、と思えるほどの大傑作。だが「大傑作」なんて大げさな言葉はこの本には似合わない。それほど、淡々とした、それでいてユーモアのある調子で書かれたエッセイ集なのだ。坪内祐三はこの本について、ポストモダンといった流行の文章に悪酔いしたあとで、行き当たりばったりに開いた二、三篇を読んだ、と書いていた。駄作は一篇もなく、そういう読み方がこの本には似合う。
好きなフレーズだらけだが、とりわけ最後の一文に好きなものが多い。「気が附いたら、ちぇっ、登高なんて笑わせるない、と呟いていて、こうなるともう梯子酒は避けられないのである」(「登高」)「犬の挨拶に答えて頭を撫てやったら、お向いの奥さんが顔を出して、チエスがいつもお世話になりますと云うのである。これには何と挨拶していいか判らない」(「犬の話」)「手洗から戻って来たら、痩せた女は別の客と何やら愉しそうに話合っていた」(「小さな手袋」)。ただ一つの欠点を挙げれば、小澤書店の元版は正字・歴史的仮名遣いの美しい本だったのに、文庫化で新字新かなになり、版面の美しさが失われたことだ。本当に、このエッセイの素晴らしさを語る言葉が見つからないのが悔しい。
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