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紙の本
再読のつもりでいたら、初読かも、って思いました。1994年当時、まだ宮部人気はいまほどじゃあなかった。でも、その頃から時代小説はうまかった。器量のぞみ、なんて新作の『おまえさん』に引き継がれたりなんかして・・・
2011/12/26 19:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が読んだのは、昔出た単行本。ですから、奥付を見ると1994年7月20日 第一刷発行、とあります。要するに初版本で、状態はかなりいい。ふーん、この頃はまだ宮部ってブレイクしていなかったんだ、なんて思ったりして。で、です、カバーを見ながら、このヘタウマな絵は誰の手になるものなんだろう、コミックス系の人かなあ、なんて思うんですが、探してみても本には、装幀/熊田正男とあるだけ。題字も含めて全部、熊田の仕事?
なんて思いながら、この本、再読だけど、ま、いいか、なんて読み始めたわけです。どうも、最近の私は村上春樹、宮部みゆき、藤沢周平ならもう一度読んでもいい気がしています。井上ひさし、北村薫、筒井康隆、半村良、松本清張、クイーン、クリスティも読み直したい。時間が許せば、潤一郎、漱石、康成も。ま、読んでいない作品もまだまだあるので、再読、っていうのはおこがましいんですけど。
で、この本。読み始めたんですが、一向に先が見えない。一篇として、です。最後までいって、あ、もしかして初読かも、って思いました。冒頭でも書きましたが、この本が出版された当時、宮部人気は今ほどではありませんでした。私といえば、ちょうど長女が幼稚園、次女が保育園に行く頃で、介護ではなくて看護婦業に精を出していた頃。とても読書どころではなかった時期で、宮部作品とはいえ、全ての作品を読もうとは思っていなかったわけです。
私が本格的に読書に復帰するのは、子育てに目途がつく2000年頃からで、その前に『理由』で直木賞をとっていますから、宮部みゆきはベストセラー作家になっていたはずです。で、天邪鬼の私は、それ以前に出た作品を遡って読むことに熱心ではありませんでした。『我らが隣人の犯罪』こそ読んでいましたが、日本推理サスペンス大賞受賞の『魔術はささやく』、日本推理作家協会賞受賞の『龍は眠る』、吉川英治文学新人賞受賞の『本所深川ふしぎ草紙』、山本周五郎賞受賞の『火車』も、読んだのはもっとあとの事。ですから、再読だと勘違いしていたんです。
それにしても、しっかりミステリしています。謎があって、それがきちんと説明される。それでいて、単なるパズルストーリーに終わっていない。無論、若干のホラーテイストが入っていることが、この小説に奥行きを持たせていることは間違いありません。それと哀しさ。善意が、愛情が捩れて思わぬ結果となってしまう。モダンホラーの定石をきちんと踏まえています。12篇の作品に出来不出来はあまりありません。どれも80点以上、90点平均といっても問題はないでしょう。
宮部は1960年生まれですから、これらの作品が書かれた1993,4年は30代前半。その若さで、このレベルの作品を書くか、残る人は違うな、と思わせずにはいません。長編を読むのに躊躇しているなら、この短編集から読み始めることをお勧めします。ミステリとしてでなく時代小説としても高い水準にあるし、なにより時代小説ですから簡単に古びませんから。以下、収められた12篇の初出と簡単な内容紹介です。
第 一 話 鬼子母火(「歴史讀本」1994年2月号):新川の一帯に軒を並べる酒問屋の一つ、伊丹屋で火事が起きた。幸い、燃えたのは神棚だけだったので、大事にはいたらなかったけれど、治まらないのは奉公して30年になるおとよ。藤兵衛が現場で見つけたという注連縄には・・・
第 二 話 紅の玉(「歴史讀本」1994年3月号):飾り職人の佐吉は、病弱な妻・お美代が元気になるように、と仕事に精を出し貧しいながらもなんとかやってきた。そんな時、老中の水野さまの改革が始まって、贅沢な飾りものは禁じられ、佐吉の腕の振るいようもない。そんな佐吉の下に・・・
第 三 話 春花秋灯(「歴史小説大全」1994年夏号):古道具屋に現われた客は、行灯が所望だという。多少値が張ってもいいという客が主に示したのは、かなりの金額。それなら十分に新しいものが買えるが、使いこまれて年季の入ったものがいいらしい。それならと主は心当たりの品について説明を・・・
第 四 話 器量のぞみ(「歴史讀本」1993年6月号):お信は馬鹿にされているのだと思った。器量よしでないことは、いや醜女であることは誰よりも自分がよく知っている。そんな自分を嫁に欲しいだなんて。しかも、そう言っているのが深川近辺では評判の美男子の繁太郎だなんて・・・
第 五 話 庄助の夜着(「歴史讀本」1993年7月号):庄助がその夜着を見つけたのは、毎年恒例になっている七夕祭のあくる日、馬喰町の古着屋だった。三十過ぎの、どこか子供のような大の男がその日から、妙に嬉しそうな顔つきで、それをかぶって寝ると、とても気持ちいいという・・・
第 六 話 まひごのしるべ(「歴史讀本」1993年8月号):その子が市兵衛のもとに連れてこられたのは、本所四ツ目の盆市がにぎわった、その翌日のこと。甘い匂いを漂わせて眠る二歳ばかりの男の子。つやの抱いている子を見ながら、本当に迷子なのか、藤吉の子か市兵衛は疑って・・・
第 七 話 だるま猫(「歴史讀本」1993年9月号):文次は大雨の中、家の外で古着の担ぎ売りをしている母の帰りを待っていた。そんな夢から目覚めた十六歳の文次は、自分が火消しをしていた去年のことを思い出した。火が怖ろしくて一膳飯屋で働く今も、夢は火消しになること・・・
第 八 話 小袖の手(「歴史讀本」1993年10月号):牛込の古着屋で、渋いけれどいい伊予染を見つけてきた娘から、その小袖取りあげてしげしげと眺めた母親は、娘を他にやっている間にそれをほごし、帰ってきた娘にその理由と「つくも神」について話し始めた・・・
第 九 話 首吊り御本尊(「歴史讀本」1993年12月号):五人兄弟の長男として生まれた十一歳の捨松は、奉公先の上総屋から家に逃げ帰ったものの、両親に叱られていやいや店に戻ることに。貧しい家のこと、母の泣く姿を思っていると、大旦那さまから突然、声がかかって・・・
第 十 話 神無月(「歴史讀本」1993年11月号):毎年神無月に一度だけ押し込みを働いて、あとの一年はなりをひそめている、しんな律儀な賊を今年も追いかける岡引は、三つ目の銚子と居酒屋の親父を相手に、五年前の事件のことから話し始める・・・
第十一話 侘助の花(「歴史讀本」1994年1月号):「実はね質善さん、あたしに、隠し子ができちまったんです」五兵衛の笑い顔につられたように要助が言った。掛け行灯をつくるとき、必ず侘び助の花を描くこと、それは昔の恋の思い出に繋がる。それを笑った人間に、ついてしまった嘘・・・
第十二話 紙吹雪(「歴史小説大全」1993年冬号):井筒屋の、たった一人の女中としての三年の月日を、ぎんは、主人夫婦にあてがわれた北川の納戸部屋で過ごしてきた。そんな暮らしも今日で終わる。仕事を追え、戸締りをした彼女はふくらんだ袂のなかのものを始末するために・・・
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