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紙の本
読んでいる間はエリックに恋してしまいます。切ないです。
2009/10/17 00:24
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あがさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本と出逢った瞬間を今でも覚えている。
一目、表紙を見たときから、なぜか惹かれた。
手に取り、1ページを見た途端、自分のものにせずにはいられなかった。運命の出逢いだったのかもしれない。
それほどに、私はこの本に惚れている。
というより、この本の主人公エリック(ファントム・オペラ座の怪人)に惚れているのだ。
ガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」のファントムの生涯を描いたのが本書である。
エリックはなぜオペラ座に潜み、人を怯えさせ、ファントムと呼ばれるに到ったのか。
エリックは、生まれてから一度も愛を受けずに育った。母からでさえも。
原因は、その人間とは思えない醜悪な容貌のため。
誕生日のプレゼントに何が欲しいかと母から聞かれ、5歳の彼がこわごわ言い出したのは、「キスして欲しい」だった。息子がやっとの思いで言い出したその言葉から、母は背を向けた。二度とそんなことを言わないようにと彼に向かって叫びながら...。
醜い容貌を持つ彼の噂は村中を駆け回り、不吉だと暴力をふるうものも出てきた。自分がいては村人たちに忌み嫌われ、母の命さえも危ないと悟ったエリックは、わずか8歳で家を出た。愛する母を守るために。
皮肉にもその日は、母がエリックへの真の愛情を自覚したときだった。
あと1日、エリックが旅立つのが遅ければ...。
あと1日、母が悟るのが早ければ...。
それからジプシーに混じって旅をしたり、そこを離れひとりでさすらうごとにエリックは、冷たく強く、そしてある部分で弱い青年へと成長していく。
人間全てを憎むに到るだけの理由がある。
エリックは人間から人間として扱われて来なかった。
信じようとすると、いつも最悪の結末がやってくる。
それを学び、ますます人間から我が身を遠ざけるようになる。
残忍な殺人も行うエリック。
それでもなお、惹きつけられずにはいられない。
何度、この本を読み返しただろう。
読み返す度に、切なく哀しくなる。
本をそばに置いているだけで、落ち着かなくなるのだ。
著者もエリックを愛していたのだろう。
だから、エリックは非常に人を惹きつける。
上巻はペルシャで王室にとどまるところで終わる。
傲慢で我が儘で、残忍な后の欲望を満たすためにペルシャに呼ばれたのだ。
生まれつき正邪の区別がつかないエリック。
新しい殺人の道具を作れと言われれば、片手間にでも作ってしまう。
本当の彼は美しいものが好きなはずなのに。
后に与えられた麻薬に身をゆだねるようになってから彼は微妙に変わってしまった。
下巻ではさらに新たな苦しみを味わう。
あの運命の少女、クリスティーヌとの出逢いが待っている。
そこへ行くまでの旅も決して楽なものではない。
エリックに救いは訪れないのか...。
神を冒涜するエリックには、神も救いを与えないのか。
ただただ、哀しみと切なさが漂う物語である。
紙の本
これぞ、オペラ座の怪人の原点?
2001/11/10 19:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:zuma - この投稿者のレビュー一覧を見る
これを読んだとき、あたしは「これが、あのミュージカル『オペラ座の怪人』の原作ではないか」と思いました。
スーザン・ケイ氏の描写は美しく、また、訳されている北条氏も、訳本にありがちな硬い表現ではなく、柔らかく、読みやすく訳しており、それがよりよい相乗効果をかもしているのではないでしょうか。
上巻は、タイトルにもなっているファントム(本中では「エリック」という名前)が、パリのオペラ座に住み着いて「オペラ座の怪人」と呼ばれる前の、生い立ちをつづったものです。奇形で生まれた我が子を愛したいのに愛せず、奇形を隠すため仮面を作り、エリックにかぶせる母。母に冷たくされながらも、創作に対して恐ろしいほどの才能を見せるエリック。そして、やっと息子を愛そうと決意したそのとき、エリックは家を出て行ってしまう…。
我々が「普通」でないことにどれだけ畏怖を感じているか、それがどれだけ醜いものか、このファントムを通して分かる気がします。