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吉村昭はこうして世にでていく
2021/08/05 16:54
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、平成2年から2年間にわたって刊行された全15巻に及ぶ「自選作品集」の月報に連載された「私の文学的自伝」が基になっている。
「自伝」と謳ったものの、ここで書かれているのは、吉村昭さんが作家としての道をこじあけるきっかけとなった『星への旅』が1966年に太宰治賞を受賞したところまでのため、改題したとこの本の「あとがき」にある。
ただ、「文学漂流」というのは、あたっているようで、そぐわないような感じもする。
あたっているというのは、吉村さんが太宰治賞を受賞するまで、実は芥川賞の候補に4度選ばれるがいずれも受賞に至らず、一度は受賞の連絡を受けたのちそれが間違いであったという辛い経験もしている。
あるいは、妻である津村節子さんが芥川賞を受賞し、周囲の冷ややかな目にされされたこともある。
あるいは、生活のために兄の会社の経営に携わって、一時執筆活動から遠ざかったこともある。
そういうことでは、「漂流」であったかもしれない。
しかし、どのような時であっても、吉村さんの文学観はぶれていない。
芥川賞に選ばれない時も、「それぞれに人間には個性があって、小説を読む眼も異な」るのだから、仕方がないと考える。
だから、「自ら充足感をおぼえるような小説」を書いてゆくことを思う。
また、吉村さんは作品を絶対的なものとも考えていなかったふうでもある。
「読む人もいるだろうが、大半は読んでくれない。それが作品のもつ宿命」と本書の中にもある。
そんな作家の生きてきた道を「漂流」とはいわないはずだ。
それが、このタイトルに感じたそぐわなさだ。
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