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1995年刊行。
出雲大社の存する島根県出雲地方は、大国主の国譲り神話など、古代期において巨大な権力が存在したことが想定される地域。
その出雲荒神谷遺跡で、銅鐸と銅矛とが同一場所から発掘(日本唯一)された。
のみならず、そこから僅か数メートルしか離れていない所から発掘された銅剣の数は350本を超え、従前に日本全国で発掘された銅剣の合計数を凌駕する夥しさ。
そもそも銅剣と銅鐸は、大正期以降、同一遺跡からも発掘され続け、和辻哲郎の提唱する銅鐸文化圏と銅剣・銅矛文化圏との二項対立論の限界・限定性は明らかだった。
少なくとも時期と地域を無視した、和辻の如き単純な発想は成立しないが、それを完全に明示したのが本発掘の考古学的意義とのこと。
また、発掘銅剣の豊富さ、その化学組成の分析、そして近隣の自然銅の豊富な産地の存在から、この地域が青銅器製造の一大センターだった可能性があり、これが本発掘の考古学的意義の一のよう。
しかも、より細かい銅剣種の比定と分析によれば、北九州との関係性と、そこからの離脱も見て取れる。
ともあれ、BC2~AD1(弥生期)の祭器、副葬品の在り方、地域間の関係性と交易を考えるのに不可欠な遺物の概要が、本書から読み解けるだろう。
著者は
足立克己(島根県教育委員会文化財課勤務。荒神谷遺跡発掘調査概要)、
宮澤明久(島根県教育委員会文化財課勤務。銅鐸・銅矛調査)、
渡辺智恵美(㈶元興寺文化財研究所保存センター出土金属製品保存処理室室長。銅剣保存)、
平尾良光(東京国立文化財研究所保存科学部化学研究室長。青銅品の化学組成)、
久保田裕子(東京学芸大学博士課程?。青銅品の化学組成)、
二宮修治(東京学芸大学助教授。青銅品の化学組成)、
久野雄一郎(奈良県立橿原考古学研究所指導主事。製造地)、
岩本省三(奈良国立文化財研究所主任研究官。考古学的意義)。