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実験マニュアルで有名な黒木先生の1996年の著作。個人的に知っている内容ばかりではあるが、歴史背景をうまく絡め、時に幻想的な文章表現も面白い。ゲノム全解読の5年前に書かれたという部分を差し引く必要があるが、がんにおけるDNAの変異や分子メカニズムの発見の歴史背景など、大学/院生教科書の副読本としてオススメ。
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がんが遺伝子の異常であることは何となく判るのであるが、遺伝子の異常がどうしてがんになるのかはじつはよく判らない。がん遺伝子にはがん遺伝子とがん抑制遺伝子がありがんが発生するには複数のがん遺伝子が絡んでいるらしい。人は歳を重ねるごとにがんになる可能性を増すのだが、遺伝子の変異する確率をかけ算していくと現実のがん発生の率と比べるととんでもなく低い確率になるらしい。遺伝子がダメージを受けてもたいていの場合、修復酵素がダメージを解消するらしい。すなわちDNA修復遺伝子というのがあるらしく、こいつが変異してしまうと細胞が遺伝子不安定状態になりがん遺伝子、がん抑制遺伝子のダメージが累積しはじめがんに至るのである。
このような遺伝子の異常ががんを発生させるメカニズムを専門外のものにも判るように説明し、こういったメカニズムが発見されていく医療の歴史を概説したのが本書である。
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ガン遺伝子の発見までを分かりやすくまとめた良書。素人さんにはどこ迄伝わるかな~と言うところは有るけれども。現在ではゲノム情報はある、iPSはある、がしかし未だに全く克服できない癌に対する研究者達の戦いの初期の初期の記録。胸が熱くなります。
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がんはがん遺伝子の発現とがん抑制遺伝子の抑止の組み合わせによって発生するという知見について、その仕組みと発見の歴史を描いたもの。がん抑制遺伝子を発見するのが、がん遺伝子を発見するのと比較して難しいこともわかった。また、遺伝子を確定するだけではなく、その動きも理解する必要があり、それがまた輪を掛けて難しいようだ。
がんの死亡率は年齢のn乗で増加するが、nが4から6の間であるという事実が、遺伝子のヒット(変異)が4~6回発生することで発症することを示しているという。もちろん、小児がんなどの例外はあるが。自分の細胞ではどの程度の細胞でどのくらいのヒットが起こっているのだろうか。
がん遺伝子の仕組みとその発見については、『病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘』にも詳しい。
本書は、1996年初版刊行なので、約20年経った今は遺伝子に着目したがん研究、がん治療はもっと進展しているのかもしれない。
最終章の扉に引いた次の言葉が今でもその状況を表していると思う。「これは終りではない。終りの始まりでもない。多分、始まりの終りであろう - ウィンストン・チャーチル」
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『病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘』
上巻 http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152093951
下巻 http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/415209396X
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN14060607
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がん遺伝子とがん抑制遺伝子、そしてヒトゲノムの解読という現在の分子生物学の基礎が築かれていった80年代のルポ。
難易度が気になる方もいると思いますが、大学初級程度かと思います。バイオや化学に興味のある高校生でブルーバックスの「アメリカ版 大学生物学の教科書」などが理解できる人なら大丈夫です。
ほぼ現在の分子生物学の基礎的な部分と相違なく80年代の遺伝子研究は重要なものだったことがよくわかります。
一方でこの本が出版されてから20年以上経っており、科学系の本としてはそれなりに古いものです。しかし、今も多段階発がんモデル(第7章)は大腸がんしか(確か)無く、遺伝性のがん以外の我々の多くが恐れている普通の人が発症するがんの多くは、研究は進んでいるとはいえ完全な克服へはまだ遠いことがこの本の古さゆえに分かってしまうのは少しショックかもしれません。
また、研究者同士の鎬を削る競争の様子も面白く、退屈しないと思います。今話題のPCRについてもページが割かれています。
一番印象に残った言葉があります。「がんはわれわれ多細胞生物の宿命」という言葉です。
生きた細胞で出来た複雑で精密な構造を維持していくことによって生じた致命的なエラーであるがん、遺伝子(とその周りの機構)の性質故人間に限ってもいつかはすべての家系ががん家系になるのではないか?
ともあれ一度傷が修復されないと取り返しがつかないということは生活のモチベーションにもなる気もします。
新書で量も多くないのでぜひ読んでみて下さい。
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がん遺伝子の発見。当時の技術でいかにして発見するのか。相当量の集中力と忍耐が必要となったに違いない。自分には研究という仕事は向いていないと感じる。