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イタリアの小さな牧羊の村、クェルチーノ。この村に滞在して、
住む人々の生活と伝統、移牧、時の流れを描いた「生活誌」。
焦点を当てた村人のノンフィクションでもある。
序 イタリアの村から・・・村の概要と調査の意義。
I レオナルドの遍歴・・・戦前戦後の村の変遷と生活の変化。
牧夫~梳毛巡回職人~出稼ぎ~牧夫。
II 村を出たマッテオ・・・牧夫稼業を継がず出稼ぎへ。
戦中の兵士生活。戦後の出稼ぎと子たちの選択。
III 牧夫フランチェスコの一日・・・専業牧夫の一日。羊の扱い。
IV ある夏の日のカリーノ・・・村を出ず暮らす者が戸惑う村の変化。
V 司祭の試み・・・過疎からの脱却を試み、司祭は活動したが・・・。
それは果たして村人の生活に添うものだったのか。
VI 若者たちのあした、あるいは村の行方・・・村出身の若者の現実。
都会者になった村民と村に残った者との生活の違い。
1969年と1975年に滞在調査をした、クェルチーノ村。
かつては、牧夫と梳毛巡回職人が多い牧羊の村でしたが、
戦中&戦後の生活の変化は、人々の生活に影響をもたらし、
出稼ぎが増え、過疎の村になりつつあります。
各章は、立場や生活の違う村人たちの視点からの村の過去と現在、
そして未来への想いが綴られています。
これらは、30年以上前の問題でありながら、現在の日本における
過疎化の問題とも繋がるように思えました。
また、牧夫の牧畜・・・羊への関与技法や誘導羊等の古くから綿々と
伝授されたものが、キリスト教や宦官と繋がるということも
興味深いものでありました。