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紙の本
サンプリング&リミックス・オブ・ポトラッチ
2003/10/26 09:39
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投稿者:脇博道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
贈与というキーワードがタイトルにフィーチャーされていることに
おいて、本書の通底音としてマルクスの言霊が流れていることは明
らかなのであるが、いつもながらの中沢氏の思考のジャンプによっ
て、本書においても意外な固有名詞、ゴダール、バルトーク、ディ
ッケンズなどが召喚され、他に類を見ない多様性に満ちた論考に仕
上がっている。
上記の内容を含んだ論考については後述するとして、始めに本書の
なかでは、比較的オーソドックスな論考と思われる、新贈与論序説
を概観してみたいと思う。勿論、本論においての思考のベースは、
レヴィ=ストロースの思想であるが、ここでも突然シュールレアリ
スムの諸理論をリミックスすることにより、ストロースのサンタク
ロースの神話分析という有名な論考を、はるかなる地平にまで到達
させる離れ技を繰り出す。163ページに掲載されているサンタク
ロースと子供たちが向かい合っている図版が本論の映像化された場
面といえるであろう。そしてこの論考の目標と思われる、マルセル
・モースの贈与論の現代的解釈に見事に到達している。
ゴダールとマルクス、という論考は短いながらも刺激に満ちている。
ゴダールのマリア、における映像の一場面を精緻に分析しながら資
本主義の本質に肉迫していく手つきは、氏の面目躍如といった感が
あるし、マルクス的実践の先端部をゴダールは生きつづけてきたと
いう結語は、再びゴダール映像を異なる思考回路によって視ること
を要請される鋭いことばであると思われる。
本書のなかでも、バルトークにかえれ、という論考は、バルトーク
の、夜の音楽、というロマンティックなひびきを持つ作品に冠せら
れたイメージを、一気に論理的かつ思想的な次元にまで引き上げて
展開していることにおいて本書のなかでも白眉である。このような
現代音楽を氏独自の手法によりスピーディーに現代思想のエッセン
スとリンクさせながら展開していく様は、読者がことさら難解な思
念を張り巡らさなくても、イメージとして充分に感知できる豊かさ
を備えていると思われるし、より深い思考の必要性を感じたのであ
れば、ここには、ベルクソン、マラルメといったキーワードも布置
されているので、それらのテクストとのインタープレイを楽しみな
がら再び本論を読みかえすことも可能である。
氏のテクストは、常に外部に開かれている。ゆえに、深刻に読む必
要などないとここでは思いきって断言してしまおう。音楽を聴くよ
うに軽快に読み、サンプリングされた他の優れたテクストに即座に
ジャンプする。氏の論考のスタイルそのままに読者も気ままにリミ
ックスを繰返しながら、氏の論考を再点検する。そのような読書の
楽しみが保証されているおすすめの一冊である。
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