紙の本
読書の反省
2009/10/11 09:54
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ー本を読み終えたあと、大抵の人は、今読んだものについて、なんらかの感慨を持つ。
どういう感慨かというと、大した感慨ではない。
「おもしろかった」とか「つまらなかった」とか、そういった程度の感慨である。
どうです? ここまでの文章。
これ、東海林さだおさんの「食後の反省」(『ナマズの丸かじり』所載)の冒頭部分のパクリなんです。
著作権とか愛知県とかの侵害になるのかどうかはわかりませんが、読書と食事とはかくも似ているということでしょうかね。
だから、ということもないですが、もう少しつづけます。
ー何を読んでも「おもしろかった」も「つまらなかった」もない人というものはいるものなのだ。
「高かった」「安かった」という感慨もある。
読後、反省のようなものをする人も多い。
(パクリはここまで)
どうです? やっぱり読書と食事は似ているでしょ?
特に、値段の高低なんかそうで、「この値段はどこからつけたのか」みたいな憮然たる態度で本を閉じることもままあるわけです。
昔は一流シェフ(ちがった。著者でした)だったかもしれないが、それがこれじゃあなあ、なんて思ったりするわけです。
文庫本になるまで待っとけばよかった、いやいや、ブックオフでいいか、いやいやバザーでいいか、みたいな無茶なことを思うわけです。
これが無名の新人シェフ(ちがった。著者でした)だったら、おおこの新人なかなかやるな、と相手を褒めつつ、「その新人を見つけたのは俺だしな」みたいな納得感がたまらないわけです。
いつの間にか一流スカウトみたいになっています。
ついでだから、サングラスでもかけちゃおか。
「きみ、いい線いってるよ」と、閉じた表紙をなぜてみたりします。
それに著者の顔写真でもあれば、自分を指差し、「おれ、おれ」みたいに発掘した自分を売り込みにかかります。
これで、若い女の子だったりしたら、もうムフフとしてしまって、「赤い糸の伝説ってあるんだな」と一人ご満悦であります。
もちろん、著者の方は所詮顔写真ですから、顔を赤らめたりはしませんよ。
でも、こういう読者ばかりでなくて、「重たかった」とか「軽かった」みたいな、肉体系の読者もいます。
でっかい写真集なんかを仰向けになりながら見ている人なんか、読み終わった後、腕が痺れてビリビリしています。
それでも、「いやあ、いい筋肉ついた」と、満足するわけです。
こういう人が、薄い文庫本なんか読むと、「バカにするな」と突然その文庫本を放り投げたりします。
そのうち、この「薄文庫本投げ」がオリンピック競技に採用されて、12メートル43センチメートルが世界記録になったりします。
投げられた文庫本はどうなるか。
ぴひゃーって飛んでいって、著者の顔写真を下にべちゃってグラウンドに落下します。泥濘だったら、著者の顔写真が泥まみれになる。
もちろん、著者の方は所詮顔写真ですから、泥まみれになっても、笑っています。
そういうことが、本を読み終えたあと、起こるわけです。
もっとも東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズだけは、いつも満腹になって、反省もなく終わることになります。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でご覧いただけます。
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「ナマズの丸かじり」3
著者 東海林さだお
出版 文藝春秋
p119より引用
“その昔「魚肉ソーセージ定食」というものがありました。”
漫画家でエッセイストである著者による、
食べ物に関するエッセイをまとめた一冊。
駅弁からふぐまで、
おおよそ身近な食べ物について楽しい文体で書かれています。
上記の引用は、
魚肉ソーセージについての項の中のイラストに添えられた一文。
外で食事をする時のメニューでは見かける事はないですが、
自宅で特に食べる物が無い時は、
買い置きの魚肉ソーセージとインスタントの味噌汁で、
この定食を楽しみます。
昔ではなく今でも現役のおうちメニューの一つです。
表題に出てくるナマズについてですが、
私は生まれてこの方食べた事が無いのですが、
著者がおっしゃるにはどうやらおいしいようです。
美味しくて川や沼で捕れるはずなのに、
日本ではどうしてメジャーではないのでしょう。
近所のお年寄りの話の中で鯉をよく食べた話は聞くのですが、
ナマズを食べた話は聞いた事がありません。
釣りの対象として難易度が高いせいなのかも知れない、
と思いました。
ーーーーー
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ホットドッグは軽食界の問題児だ、心身健康お天気快晴の日はトンカツに限る、ナスとキュウリとどっちが偉いか、コンニャクは頑固者、懐かしや魚肉ソーセージ…。食に関する縦横無尽な筆致がすごいエッセイです。
筆者の人気シリーズ『丸かじり』の第5弾です。この本を読んでいたときはちょうどすきっ腹のときだったので、本当に苦しゅうございました。今回も筆者の縦横無尽な食に関する筆致のすばらしさは面白く、1時間ほどで読める手軽さもあって、一気に読み終えてしまいました。豚肉のしょうが焼き。とんかつの食べ方。筆者はとんかつ専門店でロースかつ定食を頼み、出てきたかつにソースとからしをドバドバとかけて食べるのがすきなんだそうです。実は僕もそうで、読みながら口の中が椿でいっぱいになってしまいました。
さらに、ナマズ料理にふぐ料理と筆者の旺盛な食への好奇心は続き、なつかしの魚肉ソーセージ定食やホットドッグがいかに食における問題児か、ということを論じつつ、増えてしまった体重を『一日の摂取カロリーを消費カロリー以上にしない』というシンプルにしてディープなダイエットを敢行し、3年がかりで10キロの減量に成功した、ということを自慢も交えて書いたりと、最後まで笑わせてくれ、イラストも的確で『一粒で二度おいしい』エッセイであると思います。
個人的には新宿駅西口の定食屋で繰り広げられる人間模様を書いたエッセイも捨てがたい味がございまして、僕の根っこというのはこういうところにあるのかな、などと、そんなことをつい考えてしまいました。
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1990年頃に書かれたもの。
昔の作品の方が、ネタがまだまだ溢れ出てくる感じがして面白い気がする。
問題児ホットドッグ が一番面白かった。
ホットドッグを食べると服が汚れる、というだけの話なのに電車でニヤニヤしてしまった。
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1996年刊行(底本1991年、初出1989~90年)。丸かじりシリーズ№5。
本書の中では、蕎麦屋のメニュー「いたち」探検談一択である。
結論から言えば、関西風呼称での「たぬき+ハイカラ」とのことだが…。
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伝統芸能のような東海林さだおさんのエッセイは、昔かなりの冊数売ってしまったので今またコツコツ買い集めています。くだらないのはくだらないのですが、このくだらなさを理解できる人とはいい酒が飲めそうだとしみじみ思います。
この中ではデパートで買った漬物の臭い漏れが気になって、座席の目の前の人達に殺意を憶える話が秀逸です。ガストで読んでいて変な引き笑いが出て往生しました。
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『駅弁のため息』
『イチゴ白書』
『問題児ホットドッグ』
東海林さんはホットドッグが大好物なんですね
『ラーメンのサンダル現象』
『ふりかけの真実』
『ナマズの丸かじり』
タイトル回収。ナマズ尽くし。
『トンカツの祝宴』
『恐怖のラッキョウ』
『いま、学食は?』
『豚肉生姜焼きの一途』
『鮎の月』
『風流川下り』
『ナスの偉さ』
『食後の反省』
『納豆・ネバこそ命』
『魚肉ソーセージ再見』
捨てる神あれば拾う神あり。
この章での神とは、東海林さだおさんのことである。
『わが減量法』
『模擬店は女子大!』
『ヌーボー解禁・大騒ぎ』
『イカ天ニッポン』
イカにとって日本は天国だそうだ。
私もイカが大好きです
『新宿西口飲食街の夕食』
『コンニャクの不気味』
『待つか、待たせるか』
すごーくわかる。
待たせるほうが、辛いんだ!!!!
『おばさんと「ちらし」の関係』
『餅・せんべい・納豆の作法』
『おかゆ物語』
『いたちそば』
東海林さんと蕎麦屋のおばさんのいたちごっこ
『食後のひととき』
『雪の夜のモツ煮込み』
『合格弁当』
『エキサイティング・ふぐ』
『ネギの憂鬱』
『熱海梅園干物事件』
『バッテラ大好き』
『興奮!焼き肉バイキング』
食べ放題だけど残しちゃいけないバイキング、
加減が難しい
解説は高島俊男さんです
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折に触れ 手が届くところに
置いておく一冊がある
折に触れ ちよっと読みたい
そんな一冊がある
折に触れ 間違いなく気分よく
させてくれる一冊がある
そんな一冊が
東海林さだおさんの「食べものエツセイ」であります
特に この一冊の文庫の解説は
あの「お言葉ですが…」の名エッセイスト
高島俊男さんですから
私にとっては 特別の一冊でもあります