紙の本
閉鎖空間の効果
2022/09/16 10:01
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投稿者:令和4年・寅年 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全体を通じ得体の知れない気味の悪さを感じる。海、船、そして閉ざされた島という閉鎖空間の舞台がそれに一役買っている。科学実験の材料にされるのではないかという恐怖。
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外の世界から隔絶された孤島で行われているモロー博士の実験とは?「人間」と「動物」の境界線を考えさせるSF小説です。
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他の有名な作品に比べると、レトロフューチャー感が薄くて、フランケンシュタインの怪物みたいなSF要素の入ったホラーといった感覚。ひたすらに獣人が不気味というか気持ち悪いというか、モロー博士の手腕とか全然関係ないままに物語が展開していくのが残念。
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むしろホラーに近いと感じるほどダークサイドなサイエンス・フィクション。獣人たちの異形の姿は想像するだに怖ろしいです。科学によって歪められたものは野性(自然?)により在るべき場所へ戻ろうとしたのでしょうか。
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フランケンシュタインと似たような感じだが、もっと獣分が多い
フランケンシュタインの方が苦悩が描かれていて好き
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エドワードは漂流中のところを救われ、とある島に着く。
そこにはモロー博士とその助手、奇妙な姿をした人々がいた。
やがてエドワードはモロー博士の研究内容とその成果を知る。
こういうマッドサイエンティストというか、研究を第一に考えるあまり倫理観や道徳といったものを重視しないキャラクターは好きなので、とても面白かった。
もう少し島の生活を細部まで見たかったほどだ。残念。
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ゆるやかに獣に戻っていく島の住人より、モロー博士の無邪気で無責任な探究心が怖かった。
これが100年以上前に書かれたSFだっていうのがすごい。
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[作品]
1896年。原題「The Island of Dr.Moreau」
H・G・ウェルズ 著
[内容・あらすじ]
海難事故に遭遇したが運よく一命を取り留めた主人公のエドワードであったが、成り行きから謎の科学者モロー博士の住む島にたどり着く。
化け物のような風貌の島の住民や夜な夜な聞こえる叫び声がきこえる怪しい島。その島でモロー博士の手によって密かに行われていた実験とは、動物を改造し人間に近づける研究だった。
[感想]
全編通して短くかつ読みやすかった。物語終盤の狂気に満ちた展開は、ハラハラすると同時に動物と人間、自然界と人間界の共通点と相違点を考えさせられた。他にも、モロー博士の動物を人間に近づける理由である、人間の真理を解明するためというヤツは現代の科学全般に通じる考え方なのでは?と思い感心した。
本作で何より驚きなのが、発表された年だ。1896年といえば日本で言えば日清戦争が終わった直後である。だからどうした?という話だが、ついこの間までちょんまげを結っていた人間がぞろぞろいるようなそんな昔にこれほど科学と空想をたくみに掛け合わせた作品が存在するということは、単純にすごいと思うという話である。
本作は100年前の作品だが、我々が享受している様な文化文明も100年後の人類には驚きと感動を持って受け入れられるのだろうか?もしそうなるなら自分自身とはあまり関係ない気がするが、うれしいものだ。
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動物改造の恐ろしい話ではあるが、この島から脱出した後の、人間社会に戻ってからの話も、何気に恐ろしいと感じた。
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あのB級の映画がいけないのだ。読みながらあの映画のシーンが目に浮かぶのだ。ノベライズのような気がしてくるくらいだ。無人島で新しい人間を創造しようとする老いた天才科学者。その秘密を覗き見てしまった青年に襲いかかる恐怖。海野十三、蘭郁次郎、日本でも多くの作家に影響を与えたホラーSFの傑作のはずなのだが…。読まないと気が済まない話ではある。