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この本は1998年頃、府中にある競馬博物館で買いました。
丁度、PCゲームをきっかけに実際の歴代の競走馬たちに魅了され、スポーツとしての競馬が大好きになっていた時期で名実況で知られる杉本アナが書いた自伝的エッセイということもあり購入。
話は流星の貴公子・テンポイントからスタート。
冷静であるべき実況アナウンサーが我を忘れた実況をして許される場合があることや、競馬のロマンとは何かを教えてくれたテンポイントについて杉本さんは「思い出とか好きといったものを超えて、縁のようなものを感じる恩馬」と表現しています。
その思い入れゆえに、菊花賞でグリーングラスが勝った時は、後半悲痛な声での実況になっていたことや、菊花賞の前夜祭でファンの人から「(グリーングラスの父)インターメゾの血統を教えてください」という質問が出たためにグリーングラスという名前をちゃんと言えたなどのエピソードも満載。
続いて関西テレビでアナウンサーになるまでの経緯や競馬アナ初仕事となったパドック解説の進行、初実況、名手加賀がどんな質問をしても「馬が強かった」で片づけてしまう話など。
栗田騎手の影響もあり初のG?実況で通過時計を入れたこと、ヒカルイマイ、アカネテンリュウ、エリモジョージ、タイテエム、テスコガビーなどの実況話など「杉本さんが選ぶ思い出のレース」について。
後半は、武邦彦、福永洋一、田島良保、武豊といった騎手たちとの交友録について書かれています。
私自身が過去の名馬たちのエピソードや舞台裏といったものに興味を持っていることもあり、非常に面白い1冊でした。
また勝負服の書き込みをして馬を判別していることや、モニターを見て馬を見失わないようにしていることなど、どうやって実況をしているのか?の説明や、それらの重要性に気付いたレースの紹介もあり、実況アナとしての成長録として読むこともできる1冊です。
最後に杉本さんが(わかりやすい実況ができたという意味で)一番気に入っているレースについて。
それは昭和53年、インターグシケンが勝った菊花賞で、この時杉本さんは風邪をひいていたため、余計なことは言わずに淡々としゃべったとのこと。
結果的に、馬の名前をきっちり実況し、淡々と3000mをしゃべり切ることができたそうです。
わかりやすさ、的確さの大切さを踏まえた上で、名フレーズが飛び出ることが杉本節の魅力なんだと教えてくれるエピソードです。