紙の本
うまいとは思うが、作り物めいた感じを否めない
2008/01/23 19:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:悠々楽園 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あとがき(角川文庫版)で本人が言うとおり、今のところ「日本語を綺麗に扱える黒人女は世の中で私だけ」であるに違いない、それは納得できる。しかしそのこと自体にどんな価値があるのかというと私にはよくわからない。世界で彼女一人にしかできないなら希少価値という価値があるとは言えるのかもしれない。
山田詠美がいかに魅力的な女であるかを語る、やや自慢めいた村上龍の解説(角川文庫版)も、きっとその通りだろうと納得してしまう。「ゾクゾクするほど」魅力的な女なのだと思う。しかしそれと小説の出来とどう関係があるのだろうか? 魅力的な人間が書く小説は必ず魅力にあふれた小説になるということだろうか? 直木賞をもらえるくらい文章がうまい、ということ。さらに女として魅力があるということ。事実はそれ以上でもそれ以下でもないという気がする。こう書きながら、少々やっかみが入っている気が自分でもしてしまうのがなんだか悔しい。
ここに描かれた男と女はみな美しい、と村上龍は書いている。確かに私も美しいと思わないではないが、その美しさがそれほど特別だという印象をもてなかった。また私には8つの短編のどれもが基本的にあまり違いがないように思えてしまう。中では最後の「男が女を愛する時」が一番良かった。
紙の本
様々な別れ、残る想い。
2003/08/25 09:27
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投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書に匂いがあるとしたら、それはとても甘ったるい匂いだと思う。深夜のベッドルームに漂うような、咽るような…。詠美さんは結構、色っぽいというか本格的な大人の恋愛を描く。主人公が高校生でも、詠美さんが描くと大人っぽくなるのだ。そしてなぜか、詠美さんの名を思い浮かべると、黒人が過る。汚い英語を詠美さんが用いると、どうしてか汚い言葉に思えない。詠美さんの魔法、だろうか。
そしてこれは恥というものだろうが、私は本書を手に取るまで詠美さんが直木賞作家だということを知らなかったのだ…。そして本書を読み終えて、詠美さんへの憧憬は不動のものとなった。
本書の登場人物は、色々な別れを体験している。喧嘩別れだったり、死別だったり、旅立ちだったり…。異性を愛しいと想う心が、とても激しく表現されている。肉体関係を、意味の在るものとして描いている。無意味なものが何もない。海外特有の匂いをとても有効に使っている(バーでの出来事など)。女が魅力的なために病的に嫉妬するし、良い男というのが中身や外見でなくて雰囲気によるものだったりする。
心から愛する者を亡くした喪失感は、きっと想像を絶するのだろう。恋人の死が与えた衝撃は、凄まじい。そして残された者の想い。身を裂かれるように痛いのだ。
詠美さんの作品には(私は触れたことがないが)懐かしい洋楽が登場する。名も知らない歌手や楽曲、接したことがなくても薄々イメージになる。だから古い洋楽に詳しい人がその楽曲をイメージして(あるいは実際に聴きながら)読んだらとても満足できるのではないでしょうか。
詠美さんが描くと、全てが意味の深いものとなる。本書は短編で成り立っているが、一編一編心が行き届いていて、深く濃い匂いが漂っている。哀しい匂い、愛しい匂い、嬉しい匂いがたち込めている。匂いに酔い、本を閉じた。
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街の雑踏で覚えのある香水の香りがして泣きたくなる…ベタだけど私にもある「分かる!」な瞬間が散りばめられてます。
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はじめて読んだ山田詠美。自分の住んでいる世界からは遠い話なのに、なぜだかとても身近に感じる。ひとりの夜に、気付くと手にとって読んでしまう。
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山田詠美の第97回直木賞受賞作品。海外旅行の飛行機での暇つぶしに成田空港の書店で購入したけど、海外旅行中読んでいました。
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あとがきに「ひとりの男を愛すると30枚の短編小説が書ける」とあった。作家になりたい人にとって、シンプルでわかりやすい言葉だろう。かっこいいです。
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第97回直木賞受賞作品。7つの短編集からなる本でどの話もセックスがキーになっているのに嫌らしさを感じさせない洒落な短編映画のような物語。
個人的には、最後の話に出てきたウイリーの「僕も、セックスは大好きなんですけど、セックスを我慢するのも大好きなんです」という台詞にびっくりしました(笑)。
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直木賞受賞作品で8つの短編が収められた一冊。
日本人とは違う黒人から醸し出される香りや空気・リズムを文章でリアルに伝えてくれる、山田詠美さん独特の作品。
登場する黒人女(シスター)、黒人男(ブラザー)の言葉遣い一つ一つがとても魅力的。
個人的には「PRECIOUS PRECIOUS」と「男が女を愛する時」が好き。(07年5月30日)
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直木賞受賞作品。体を得る=心を得るでは決してないこと、けど心無くては体を合わせることも出来ないこと。あぁいう場面も
ダイレクトな表現じゃないのにダイレクトに伝わってくるとこが凄い。
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大好きな山田詠美。セレクトしていただきました。
性について奔放、その一言に尽きるように感じます。
驚いたことにあとがき曰く、彼女の実体験に基づいているとか。
内容はソウルミュージックナンバーが奏でられる8つの短編。
どれも黒人の活き活きとした躍動感に溢れています。
こんなに恋愛や情事に熱中できる彼らをある意味すごいと思ったり。
それにしてもこんな内容なのにいやらしくなく、
そして的確にツボを押さえてくる彼女の文才にはいつもながら舌を巻きます。
やっぱり山田詠美好きです。
それからこの作品は直木賞受賞作ということも特筆すべき点。
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“したいときだけにしてたら、僕たちの間ではそれは遊びで終わるよ”ってのに、むっちゃ、はっとさせられました。内容としてはどれも切羽詰ってるかんぢで好きなのだけど、挙げるとすれば「me and mrs. jones」と「黒い夜」が好き。読み始めて思う。似ているけど、どこか違う香りがすると。ざわざわした雰囲気の中に、その香りを作っている1冊です。どこか何かが違う香りを8種類も味わえてしまう1冊。あとがきを読んで笑ってしまった。amyさん。
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いやーこれはエイミーの数ある短編集の中でも秀逸な一作ですよ。だってどれもめっちゃいいもんマジで。好きな曲がたくさん出てきたのも嬉しかったし。ただ「FEEL THE FIRE」の終わり方だけはエイミーに珍しくチ陳腐イプイだった気がするんだけど!w
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はやく読める本がいい本だ、という決まりはない。実際、わたしはこの本を読みながら何度も立ち止まったし、何度もページを閉じた。つまり、それだけ感情の動きに耐えられなかったのだ。決して悪い意味ではないけれど、正直にいうといまのわたしには刺激的過ぎた。どの作品も過去の傷をえぐるし、いまの恋心をいっそう深くさせるからだ。
中高生のころのわたしは、ある一部の作品を抜かして山田詠美が好きではなかった。今回読んで見て、その理由がよくわかった。山田詠美の書く恋愛は、学生のころのどこか守られた位置にいてする恋愛ではなくて、大人になって自分の孤独を思い知った者がする恋愛なのだ。思い知る。あのころの恋愛といまの恋愛は、地続きにあるものだとしてもまったく異なるものなのだと。
というのも、わたしにはその孤独が、自分でお金を稼いで自分の暮らしを保ってゆく者にしか味わえないものに見えるからだ。自分しか自分を守れないシビアで当たり前の現実に身を置かねば、ここに書かれたような恋愛はできないと思うからだ。だから、いっそうに不思議である。当時、山田詠美を好きだといっていた少女たちは、背伸びでそういっていたのだろうか。それとも、本当にこんな気持ちを味わっていっていたのだろうかと。
なんにせよ、わたしは恋するあの人に逢いたくなった。かなわないけれど、いますぐに。
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初めて読んだ山田詠美作品です。イケイケな感じの女性達が主人公ですが、内面はか弱くて傷つきやすかったり実は強がりだったり、みんなとても女のコで可愛い。そこそこ遊んできた方なら彼女達の気持ちに頷かずにはおれないでしょう。大好きな一冊です。
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2009.6
1987年の直木賞受賞作。これは時代だね。村上龍もきっとそう。Amy Yamada、嫌いじゃないなー!