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家族という神話 アメリカン・ファミリーの夢と現実 みんなのレビュー
- ステファニー・クーンツ (著), 岡村 ひとみ (訳)
- 税込価格:4,180円(38pt)
- 出版社:筑摩書房
- 発行年月:1998.3
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紙の本
神話の役割と強さ
2011/11/13 22:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「両親が女性」という家族のアメリカ映画を見た。大きくなった子どもは、精子提供者である生物学上の「父」に関心をもち、探し出して・・・、とそのてんやわんやが描かれる。子どもをもった同性婚カップルの「その後」という、先端的な設定で話題をつくろうとしたのだろうが、その描かれ方はとても「ふつう」であった。言い換えれば、「両親共に女性だろうがなんだろうが、家族は家族だ」というメッセージ満載だった。むしろ、このふつうさのほうに驚いてしまった。
本書は、そのアメリカにおける「家族は家族だ」を歴史的に問い返す試みである。著者のことばを借りれば、「伝統的」とおもわれる家族は、アメリカの歴史の中で一度も存在しなかった、ということである。もしくは、1950年代のごく一部の白人中流家庭によって実現されていたに過ぎないイメージが、普遍的な価値を持つものとして理想化されたにすぎない、ということである。「近代家族」の議論になじんだ人ならば、さして新味はないだろう。しかし、ここでとりあげられる、さまざまなエピソードや事実、そしてテレビドラマなどメディア上のイメージなどの丹念な収集からは、日本の家族論議においても、多くの刺激を得ることができるだろう。
目を惹くのは、アメリカンファミリーと対になる価値観としてあった「自立の精神」についての議論である。アメリカにおける自立の精神の原像は、家族単位で行なわれた西部開拓民にある。そう、あの「大草原の小さな家」である。家族こそが自立のための基本単位なのである。本書では、そうしたイメージはあくまで虚像でしかなく、国家による支えなくしては成り立たないものであったことを詳細に明らかにしていく。アメリカ社会における格差の大きさは、こうした自立の精神によって肯定されてきたといってよい。いいかえれば「私がこれだけの報酬が得られるのは、私が自立した精神でがんばってきたからである」と。著者の議論は、そこに「自分の得た報酬は。実は自分の能力や努力によるものではないかもしれない」という考えを入れるきっかけとなるはずだ。
本書の原書が刊行されてからだいぶ日が経っているようだが、本書は明らかに80年代の「家族回帰」へのアンチテーゼとして出されていることがわかる。この時間差は、本書の受け止め方にも差をもたらしているのであろう。日本でも、近代家族論議も一時期のようにははやらないようだ。「無縁社会」など「現実」からの別のインプットが大きな影響を与えていかにみえる。もしからしたら、家族は神話でしかないことに皆が気がついてしまっているからかもしれない。しかし、「児童虐待」の問題など、(本書でも繰り返し取り上げられ)本来であれば当時の論客が踏み込むべき課題はまだまだあるように感じるが、いかがか。家族に代わる絆は何なのか、議論すべきものは山ほどあるのではないだろうか。
ところで、本書で著者はアメリカの伝統的家族のもつ虚像性を繰り返し指摘している訳で、それは説得力もある。しかし、これだけ根拠がうすかったにもかかわらず、なにゆえそのイメージが強力に広がったのかが、かえって気になってしまう。
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