紙の本
スリリング
2001/08/30 11:55
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投稿者:山猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が、今はなき文芸雑誌「海燕」に寄せた中上健二論は衝撃的だった。「現代思想」のエラリー・クイーン論も斬新だった。文学性や社会性を云々する従来のミステリー批評とは一線を画し、ミステリーの構造そのものを洗い直し、そこから社会性を逆方向に打ち抜いてみせる。本書には、残念ながらクイーン論は収録されていないが、日本人作家論を中心に硬軟取り混ぜた充実したエッセイが収められている。
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最初の中上健次論以外は、すべて解説用に書きあげた文章。
熱の込もった論調がときおり見られるのが印象的。
収録されたなかだと「フーダニット・サバイバル」が面白かった。
野崎六助の『夕焼け探偵帖』の意義を、探偵小説のもつ反動性や、探偵小説が教養であった時代に触れつつ、中井英夫が『虚無への供物』で目指した「最後の探偵小説」が不可能であることを確認する点に求めている。
……と書いたけど、あんまり理解してないので読み返します。
あと、山田正紀の『女囮捜査官』をだいぶ褒めているので今度読んでみる。
Ⅰ 安全ネットを突き破って
「誰が浜村龍造を殺そうとかまうものか
ーー中上健次論」
「フーダニット・サバイバル 194x
あるいは、フーダニット・サバイバル 1994
ーー野崎六助『夕焼け探偵帖』」
Ⅱ 楽園のこちら側
「天然カー
ーー倉知淳『過ぎ行く風はみどり色』」
「ネバー・セイ、ネバー・アゲイン
ーー東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』」
「復活への、俺の予約を取り消してくれ
ーー山口雅也『生ける屍の死』」
「座敷童子のいる「館」
ーー綾辻行人『黒猫館の殺人』」
「現代ミステリーの枠を集めたこのシリーズが、本格ビッグバンのはじまりだった
ーー山田正紀『女囮捜査官1触覚』」
「ぐりーん・れくいえむ
ーー竹本健治『緑衣の牙』」
Ⅲ イエスタデイ&トゥデイ[海外編]
「「贋作ホームズ百周年」を祝う
ーージューン・トムスン『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』」
「植民地は女である
ーージャネット・ドーソン『古狐が死ぬまで』」
「デクスターを擁護する
ーーコリン・デクスター『オックスフォード運河の殺人』」
「セイヤーズを解剖する
ーードロシー・L・セイヤーズ『死体をどうぞ』」
「ニコラス・ブレイクを読む若い人たちのために
ーーニコラス・ブレイク『殺しにいたるメモ』」