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紙の本
ちょいファン
2007/05/13 00:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇妙な味とでも言えそうな中編3作。
「始祖鶏物語」人工的に作り出したという未確認のニワトリの祖先、始祖鳥ならぬ始祖鶏、黒鶏を巡ってどこまでも膨らむドタバマ騒動劇。設定自体SF的でもあり、すぐにも実現できそうでもあり、微妙なところ。その黒鶏を偶然目撃してしまう、動物学で博士号を目指す研究者。そもそも、なぜ鶏なのか。研究者の執念の延長上にあるべき幻想ということなのだろうか。その執念とは作者の思い入れと等価なはずだ。どういうシチュエーションで目にしたのか分からないが、そこには地を駈け空を奔る力強さへの憧憬があるように思える。鷲や狼だけでなく、あらゆる生き物から感動を受け取っている感性に虚を突かれる。
「幽鬼犬」警察庁特別処理係・徳田左近もの。徳田の自宅の庭に居着いた鳩が、ある日何者かに足を切り取られている。そこに異常な精神を見る。動物との関わりに傷ついて訪ねた多摩山中で殺された猟犬を発見し、再度神経を刺激される。徳田は、異様な出来事の背後にある精神を読み取り、そこからの世界の広がりを幻視する。そしてその「勘」は当たる。今でこそその手のプロファイリングはありきたり(かつ的外れ)であるが、これを90年代に着想していた。徳田は特殊な能力を持つことは認められている。動物に対して尋常でない感受性を持ち、勤務中に酒を飲むことを黙認され、彼が動けば刑事がフォローに張り付く。その異能者の真似を僕らができるわけもなく、しかし感嘆するばかりでいいのか悩む、その不安さがが残る。
「世にも不幸な男の物語」本当に悲惨な境遇に陥った男で、散々な目に逢った上にに自身も癌に犯されて、余命幾許もない身となる。死に向かう旅路でそこを狙われて、悪時に利用され、これも奇妙な道筋を辿る。
全体にファンタスティックと言えるかどうかの線上にある。それすなわち近い未来に必ず起きるということ=リアルだ。文庫カバーに「ハードロマン集」となっているのも誤解を招きそうで、普通にサスペンス小説、あるいは超サスペンスでもといったところかもしれない。不思議に軽い、人物達は深刻な事態にも達観がある。極限状況を潜り抜けた人々にはその明るさが持てるのだろうか。それは強靭さの現われなのだろうかとも思うのだ。
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