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紙の本
天才老人。
2001/02/17 21:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真鍮 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は関川夏央が、山田風太郎との一年半あまりに渡る時折の面接を、物語へと再構成しなおしたものである。なぜ再構成?聞き書きでいいのに。当然わき起こる疑問だけれども、関川夏央自身当初はそのつもりだったらしい。山田風太郎のエッセイ集、例えば『死言状』など読んでいると、饒舌な作者像が浮かんでくる。しかし実際はそうではないようだ。
「とにかく彼の談話は過剰に融通無碍であって、そのままでは到底原稿とはなりがたい。」
文庫版のあとがきではこんな事がかかれている。なんだか苦労したようだ。
「戦中派」「天才」「老人」、山田風太郎をその三つの枠組みに分解し、関川夏央らしいユーモアが加わって、そのすべてが多少、強調されすぎてるんじゃないか?作ってるだろっ。と言いたくなるようなエピソードもまあ、多少、ないわけではない、…気がする。しかし氏曰く、「材料はすべて山田風太郎の著作と発言の中にあり、一個も恣意的に加えられることがなかった」空起請ではないだろう。たぶん。
昔bk1の荒俣宏インタビューで、老いて魂のステージがあがった水木しげるの話がかかれていたけれども、山田風太郎にもそれに相通じるものがあるのではないか。天才老人のアフォリズムはもう、食傷気味。しかしえがかれる天才老人の機知、健忘はそれはもう、恐るべきものである。惚けてるのだかなんだかわからない。健忘だか機知だかは誰も知らない。そのあたりもまた、読みどころだ。というわけで、最後に帯裏からの引用を。
——— 山田さん、結構おんなじこといいますね。
「実はぼくはもうこの世の人じゃないんだ」
——— は?
「実は昭和64年、僕は例のごとく酔っぱらって階段から落ちた。そして死んだ」
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