紙の本
幕末に向けて重量級の薩摩、長州が音を立てて動き始めた。しかし竜馬の周りの人間関係も目が離せない。
2020/10/04 17:35
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この巻はまず長州藩を巡る動向から幕を開ける。
政治的な信条も主義も持たない単なる武力軍団、頭脳もない殺し屋集団である新選組がそのーダー網にかかった長州・土佐浪士を中心とした集会に踏込む池田屋ノ変、そして薩摩藩の政治工作によって京都を追われた長州藩が再興をかけ、敗れ去った蛤御門ノ変へと展開してゆく。
われらの竜馬と勝先生は神戸や大坂、江戸を忙しく駆け回り京都の情勢がわからない。が、彼らの神戸海軍塾の塾生の数名がこの長州の動きにくみしたことから、後にその責任を追及されることになる。
そして本巻で最も重要なのは竜馬と西郷吉之助が出会い、それぞれに惹かれあっていくところである。
しかしながら読んでいて愉しいのは、いそがしく駆け抜けていく竜馬の旅の足跡を追っていく寺田屋のおりょう、そして龍馬に好意以上の感情を抱くお登勢、思わぬ登場で読者のどきもを抜くお田鶴さま、それぞれの竜馬を挟んでの機微に富んだ心情の遣り取りである。これは司馬先生の人物活写力そのものであり、今回も脱帽させられた。
また西郷どんは薩摩ことばを喋り、竜馬は土佐ことばを話し、それぞれ朴訥な性格が活き活きと表現されている。司馬先生はモンゴル語学科の出身ながら、日本語方言まで使い分けるバイリンガルだったかと見直した次第である。
いま、河原町三条から三条通りを高瀬川に向かってすぐの池田屋は居酒屋のチェーン店の経営になるが、それらしい店構えが復活しており懐古の情に駆られる。またそこから高瀬川沿いを少し北に上って御池通りを越えたところには桂小五郎の愛した婦人の名を冠した料亭幾松がある。ここは鴨川堤への抜け穴があることで知られている。また鴨川とは反対側の高瀬川には当時の高瀬舟を浮かべた一の舟入の入り口があり、当時の伏見と京を結ぶ船運の様子が再現されている。
この辺りの高瀬川はソメイヨシノやオオシマザクラが植えられていて、祇園東山の円山公園と同じ時に見事な都心の花見が楽しめる。それが散ったあと1-2週間後には同じこの場所で、これまた見事な八重桜が満開を迎える。無念にも散っていった志士たちの思いを慰めるかのような大輪の八重桜が華々しさの中に悲哀を語っているかのように感じる。
この巻を読んでから、それぞれ歩いて数分の距離にあるこれらの地を訪ねて幕末の一舞台に思いを馳せるのも一興である。
紙の本
神戸海軍塾
2002/03/03 03:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:LR45 - この投稿者のレビュー一覧を見る
池田屋の変、蛤御門の変などが相次ぎ、にわかに幕威を回復した幕府は、竜馬の巣、神戸海軍塾を不逞浪士の巣であるとして、塾に解散を命ずる。
そんな中で、後に幕府を倒す原動力となる薩長同盟、その締結の兆しが見えてくる。竜馬天昇の開始ののろしとなる一巻。
投稿元:
レビューを見る
勝海舟、西郷隆盛とのそれぞれのドラマが面白い。
またサブストーリーとしてお田鶴の男装してまで竜馬を追う姿、そしておりょうの大胆さが心に響く。
投稿元:
レビューを見る
勝には、妖精のにおいがする。そのいたずらっぽさ、底知れぬ智恵、幕臣という立場を超越しているその発想力、しかも時流のわきにいながら、神だけが知っているはずの時流の転轍機がどこにあるかを知っている。さらに竜馬と西郷という転轍手を発見し、さりげなく会わせようとするあたり、この男の存在は、神が日本の幕末の混乱をあわれんで派遣したいっぴきの妖精としかおもえない。(p.219)
西郷というひとは人間分類のどの分類表の項目にも入りにくい。たとえば西郷は、革命家であり、政治家であり、武将であり、詩人であり、教育家であったが、しかしそのいずれをあてはめても西郷像は映り出てこないし、たとえむりにその一項に押しこんでも、西郷は有能な職能人ではなかった。つまり職業技術者ではなかった。
哲人というほかない。
西郷は「敬天愛人」という言葉をこのんだが、これほど私心のない男はなかった。若いころから私心をのぞいて大事をなす、ということを自分の理想像とし、必死に自己を教育し、ついに中年にいたって、ほとんどそれにちかい人間ができた。
天性によるだろうが、そういう鍛錬によって、異常なばかりに人を魅きつける人格ができあがった。この異常な吸引力がかれの原動力となり、かれのためには命も要らぬという人間がむらがってあつまり、それが大集団となり、ついには薩摩藩を動かし、この藩を幕末のなかに投ずることによって、維新が完成した。(p.264)
「おいも無口じゃと人に叱られもすが、坂本サンも劣らんでごわすなあ」
といった。
竜馬も、ニコニコした。その笑顔が、ひどく愛嬌があり、
(おお、みごとな男じゃ)
と西郷はおもった。漢は愛嬌こそ大事だと西郷はおもっている。鈴虫が草の露を慕うように万人がその愛嬌に慕い寄り、いつのまにか人を動かし世を動かし、大事をなすにいたる、と西郷はおもっている。
もっとも、西郷の哲学では、愛嬌とは女の愛嬌ではない。無欲と至誠からにじみ出る分泌液だとおもっている。(p.278)
「塾生の大部分は藩に帰る。残留してわしについてくるのは一割ほどの人間だ。その一割ほどの人数が金を独り占めした、と評判をたてられてたまるか」
「しかし」
「も、くそもない。さっさと分配するこった。なるほど浪人会社をおこすにはこのさき金が頼りだが、金よりも大事なものに評判というものがある。世間で大仕事をなすのにこれほど大事なものはない。金なんぞは、評判のあるところに自然とあつまってくるさ」(p.335)
投稿元:
レビューを見る
西郷隆盛など、歴史上の有名人が次々とあらわれる第5巻。有名だけれども何をやった人なのかは知らなかった。しかし、竜馬がゆくを読みながら、その人となりや仕事がみえてきて面白い。それにしても興味深いのは、竜馬とおりょうの関係。おりょうという女に魅かれるというのは、うーん、納得がいく気がするけど、ちょっとイヤな気分もある。
投稿元:
レビューを見る
5巻では長州の物語が詳しく書かれ、また薩摩の西郷さんと竜馬さんの出会いがあり、薩と長が同盟を結ぶ運びがわかります。その他、おりょうさんとの濡れるストーリーも展開します。
投稿元:
レビューを見る
ついに池田屋事件が起きてしまった。こういう事件だったのね・・・しかも、新撰組ってなんかイメージと違う・・・といっても、私のイメージは、大河ドラマの香取しんごだけだけど。
投稿元:
レビューを見る
新撰組が登場する池田屋ノ変を皮切りに、長州と幕府の関係が悪化し、薩摩・会津を含めた3つの藩が日本の一時期に大きく関与する。神戸の海軍塾も解散させられ、世の動向が激しくなる。
投稿元:
レビューを見る
池田屋事件・蛤御門の変など時勢は急速に緊迫。まだ幕府はゆるんだようにもみえず、次々に死にゆく同志を思い竜馬も悲嘆にくれた。
投稿元:
レビューを見る
池田屋の変、蛤御門の変などの血が流れる事件が続いていく。
竜馬の海軍塾も解散。
時代は暗雲を進んでいく。
投稿元:
レビューを見る
竜馬が西郷隆盛に薩藩邸を訪れた鈴虫のくだりが好き。
お邪魔した上、鈴虫を捕まえ、虫籠を要求した竜馬も竜馬だけど、
竜馬が置いて帰った鈴虫を入念に飼い育て、
次に竜馬が来るまで面倒見て、
生かしておいた西郷どんは人を惹きつけますな。
この二人の行動おもしろい。
「人をもてなす心のはたらき」
投稿元:
レビューを見る
忠実な竜馬像では無いと言われていますが、大好きです。
坂本竜馬みたいな人間になりたいです。
この本が初めての歴史小説でしたが、なんの抵抗も無く読めます。
投稿元:
レビューを見る
5巻では、坂本竜馬のみならず、歴史の偉大な人物には、偉大な師匠がいるのだと痛感しました。 坂本竜馬の勝にたいする忠誠心は、尊敬します。「勝を守る」とのシーンがよく出てきます。坂本竜馬は、勝に自分の未来を感じたのでしょう。
投稿元:
レビューを見る
<三好一男副代表オススメ!>
司馬遼太郎の作品にはいろいろ影響を受けていますが、中でもこの1冊は印象的でした。竜馬は千葉道場の免許皆伝でありながら、生涯1度も人を斬ったことがない。強さの中にある優しさが魅力ですね。この作品は高知支部の原点です。
投稿元:
レビューを見る
池田屋の話とかから始まります。
新撰組の視点の話は読んだことがあるのですが、
別の視点から見るとこんな話だったのかぁ。