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紙の本
こわーい!!
2007/06/03 00:50
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
2021年1月1日の日記から始まるこの話。最初から最後までこわーい。
この地球で誕生した最後の人間が死んだ?1995年10月19日を最後に、子どもが生まれていないんだって。
1994年には実験と人工授精のために凍結貯蔵されていた精子まで能力を失っていることが発見され、1995年生まれの世代「オメガ」が性的に成熟して検査が完了し、誰一人として生殖能力のある精子を作れないとわかったんだって。
人類の終焉。少子化が進んだら、現実のものとなるかも・・・あって欲しくないけれど、ありうるかもしれないから怖いんだなぁ。ゾッ。
注目され甘やかされて育った、「オメガ」と呼ばれる青年たちは美しく粗暴。女性たちも人間らしい同情心を持たない。ゾクッ。
日記を書くのは、
「オックスフォード大学マートン・カレッジ教授、ヴィクトリア朝時代を専門とする歴史博士、離婚暦あり、子どもなしの独身男、唯一目立つ点といえば、独裁者イングランド国守ザン・リピアットのいとこ、というだけのセオドア・ファロン」
二人の関係は、夏休みを一緒に過ごしただけ。普段の生活環境は全く違った。子どもとはいえ、めったと心動かすということがない。二人とも「銃眼付きの心と頭を守る落とし格子」を持っていたそうな。
そのセオドアが、なぜか、一人の女性に心惹かれるようになる。ジュリアンは、夫ロルフが指導者の「5匹の魚」の一員。たった5人で独裁政治に反対するのは無謀だが、逆に言えば、そのほかの人たちは、人類への希望を失っているが故に無気力。何も見ようとせず、考えようとせず、弱者のことなど省みようともしないし、国の体制を変えようともせずに、ただひたすら、自分たちだけの死ぬまでの安楽を願っている。今の日本の状況に似ているような・・・ゾクゾクッ
逃避行では、なんとなく、仲間意識が芽生える。セオドアが、「他の人間に感じたことのない安らぎを、この4人の他人に感じた」のだ。
その後のこわーい状況、こわーい心理、追い詰められるという恐怖。
ラストシーンすら、「ローズマリーの赤ちゃん」に匹敵するまた別な怖さがある。人間って、女性って、不可思議で、凄い。
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