紙の本
伝統を守り続けて欲しい老舗
2012/11/18 21:19
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
10月になって、6年もの歳月をかけて東京駅の中にある東京ステーションホテルが営業を再開した。随分時間がかかったものである。外壁や骨格をそのまま維持して内装を大幅に変更し、4階を復活させるという工事であった。それまでJRの事務所がかなりの面積を占めていたのが、外に出され、そのほとんどがホテルとして拡張される。
ただ一つ残念なのは、メインダイニングの『ばら』が消えてしまったことである。そこのビーフシチューの味は格別であった。また、ここのホテル従業員の躾は大したもので、客の一挙手一投足を見逃さず、必要な時にはすぐにそばに来てくれる気のつかいようは、ホテル従業員のお手本だと思う。さて、新装なったホテルの評価は如何に。
冒頭での松本清張、夏樹静子、川端康成、池波正太郎など著名な作家のエピソードが楽しい。実際、松本清張の部屋などと命名していた時期もあったようである。
本書はホテルの歴史を中心に書かれているのだが、それだけに留まらない。ホテルの沿革に登場するプレイヤーたちも含まれている。すなわち、大雑把に言えば第一部はホテルの色々な角度からの紹介である。東京駅という日本の中央駅の中にあるホテルである。その歴史は多彩である。とくに「客室支配人のひとりごと」や、「大学卒社員の二十五年」などは、その辺の解説記事をいくら集めても得られないエピソードが詰まっている。
第2部は東京駅と共に歩んできたホテルを描くために、東京駅や鉄道自体の歴史を紐解いている。ホテルについて知りたいので、鉄道は勘弁してくれという読者もいるかもしれないが、そこはステーション・ホテルである。鉄道の発展や歴史を知らずしてこのホテルの役割の変化や後ろにいる経営者、資本家などの変遷も知っておく必要がある。
今はJTBとして知られているが、かつてはこの日本交通公社が親会社であったこともある。それは国鉄とJTBの関係の歴史ともいえるであろう。それにしてもこのホテルの存在は特異であることが本書を読んでみるとよく理解できるのである。
本書は1990年代に書かれたものである。つい最近赤レンガの東京駅が昔の姿で蘇った。と同時にステーション・ホテル自体の面積が大きく拡大し、客室数も倍以上に増えたわけである。赤レンガ東京駅を高層ビルにする計画も何度も出ては消えている。昔の姿で蘇った東京ステーションホテルは名門かつ一流ホテルになるのだろうか? それにしても高級化で近寄りがたくなってしまうのは残念である。
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東京ステーションホテル80周年を記念して、レイルウェイ・ライターの種村直樹さんが書き下した1冊であります。単行本発行時が1995(平成7)年なので、今年で95周年といふことになります。現在は工事中で営業を休止してゐるさうです。重要文化財に指定されてしまつた関係のやうですね。営業再開は再来年の予定と聞いてゐます。
「太平洋戦争前は帝国ホテルと並び立つ存在で、数々の賓客を迎えた。戦争末期に米軍機の爆撃を受け駅舎もろとも炎上しているが、被災前に近い姿で復興した。リニューアルの遅れによって一時荒れ果てた時期もあったが、足場が良いので、常連客と旅行者に支えられ、今日に至った。顧客の一人は、「一流ではないが名門」と評したそうで、言い得て妙である。」(「赤レンガの異色空間」より)
二部構成になつてゐまして、第一部は、当ホテルに係つてきた関係者や有名常連客の話などをからめて東京ステーションホテルを案内する「東京ステーションホテルへの誘い」
何しろ東京駅構内といふ絶好の立地なので、作家などが缶詰になるには都合が良かつたさうです。松本清張『点と線』との係りは有名ですね。209号室が「松本清張の部屋」とされてゐます。『点と線』は交通公社(今のJTB)の雑誌「旅」に連載されたのですが、当時の編集委員だつた岡田喜秋(のち作家に転身)によりますと、清張は当初、『縄』といふタイトルで執筆するつもりだつたやうです。クロフツ『樽』が念頭にあつたかも知れぬが、『縄』ではちよつとまづい(抽象的すぎて読者が意味を理解できない)と岡田さんが提言した結果、『点と線』になつたさうです。
ほかに207号室「森瑤子の部屋」、216・218号室「江戸川乱歩の部屋」、317号室「川端康成の部屋」、322号室「内田百閒の部屋」、ミニロビー「夏樹静子の世界」など、作家たちに好まれた宿であることがわかります。
第二部は「東京駅と共に歩んだ八〇年」。このホテルの歴史を辿るのですが、それはまさに日本の近現代史とそのまま重なるのであります。日本鉄道の黎明期の話、主要幹線のルート決定にまつはる話など、興味深い。
種村直樹氏の筆ですから、当然鉄道好きも満足する内容でありますが、歴史好き、文学好きが読んでも良いでせう。
http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-148.html
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1999年の本の二版。東京駅の改装に合わせての増刷だろうが、本の中身のホテルにもう泊まれないのが悲しい。何回も前は通ったのだが、昼休めたり、レストランに歴史があったりと初めて知ることばかりで楽しかった。古きよき東京駅を懐古するにはお勧めの一冊。表装もいい感じ。
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題名通り、東京ステーションホテルの特色や歴史を余すところ無く紹介した作品。
ホテルは先般、駅舎復原に合わせてリニューアルオープンしましたが、本作単行本の書き下ろしは1995年。たびたび浮上した丸の内駅舎高層ビル化構想が沈静化し、赤レンガ駅舎を後世まで残そうという方向性がほぼ固まった頃のルポです。戦前の姿への復原も話題には上っていますが、まだ夢物語と思われていた時代。種村氏と同様、僕自身ももはや八角屋根の東京駅は日本人の目に馴染んでおり、無理に復古調とする必要は無いと思っていました。でも出来上がってみると、丸屋根の東京駅もいいものですね。
独特の文体と内輪ネタの多さで、とかくアレルギー反応を示す読者が多い種村氏の著作ですが、本作ではその癖を意図的に(でしょう、恐らくは)封印、非常に読みやすく、また教養に満ちた出来上がりとなっています。詳細な歴史解説も、人間模様の描写も素晴らしい。元・新聞記者という氏の素養が、良い意味で発揮された佳作だと思います。これとミステリ「長浜鉄道記念館」は万人に勧められると思うのですが。
レトロとモダンが見事に融合した新・ステーションホテル、一度は泊まってみたいものです。でも、高いなあ…
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赤レンガの丸の内駅舎内にあるホテル。表紙絵の戦後仮復旧した駅舎の時に知り、ネット会員になるも宿泊する機会がなく、2012年に駅舎が再開業して現在に至るまで宿泊できていないが、いつかは泊まりたい憧れのホテルだ。その立地から中央停車場(東京駅)と国鉄・JRの歴史に紙面を多く割いているのは致し方ないことだ。内田百閒の『東京日記』『東京焼盡』も併せて読みたくなった。
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最初おもしろくなくてどうしようかと思ったけど、途中から東京ステーションホテルの歴史みたいのになってからはおもしろかった。
今は改装中だけど、新しくなったらどんな感じになるのか楽しみ。
高そうだから泊まれないだろうけど。
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ステーションホテルの現在に至る歴史。制約のある構造の中で、時代の要請に応えようとしてきた経緯が、興味深い。
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第一部は東京ステーションホテルを利用した作家の逸話などエピソード紹介。第二部が「東京駅」と「ホテル」が共に歩んできた80年の歴史を、明治五年に鉄道をはじめて品川ー横浜間に導入したところから全国への鉄道網の広がり、中央停車場建設からの関東大震災、第二次大戦と、「東京駅」を中心に据えて歴史を辿っていくのが面白かった!