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紙の本
異国の風景を視るような視線
2001/03/15 21:30
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投稿者:鍼原神無〔はりはら・かんな〕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供の頃から孤立趣味で、二十前にニホンを去った男。アメリカで結婚した妻にも「個人主義の徹底が異常」と言われた男。
交通事故で意識不明になった妻が死に、彼は戻ってきた。妻の事故は自分の責任だとの、拭えない自責の念を抱えて。
国際調査・巽探偵事務所を継いだ、私立探偵飛鳥井のプロフィールです。
アメリカの私立探偵って免許制度で、それで探偵小説、成り立ってる面もあります。日本では私立探偵の小説やドラマ、あまりリアルでないですよね。もちろんリアルでなきゃいけない、ってこともなく。浮世離れした名探偵も、カリカチュアされた私立探偵も、効果的に面白く描けてればよいんですけど。
笠井潔の私立探偵飛鳥井は、ロスで探偵事務所に勤めてた関係で、引退する巽探偵の事務所を引き継ぎました。戦後駐留軍相手の仕事もしてた巽老人、ロスの事務所とコネをもっています。
巽事務所は普段とてもヒマ。業務は主に失踪人探し。個人営業なので拘束時間が長くなる素行調査はできない。とても地味でリアルです。時折、ロスからの紹介で、外資系企業からビジネス関係の信用調査の依頼が入り、それでなんとか成り立ってます。
この設定で保証されたリアリティを元に、地味な依頼の関係に、今のニホンの世情を絡めて描くのが「私立探偵飛鳥井の事件簿」の趣向です。
二十数年ぶりに帰ってきた男には、今のニホンがまるでみ知らぬ国のように観えます。
笠井は「ハード・ボイルド探偵とは社会を外部から観る視点」って趣旨の意見を述べてて。アタシにはこの意見、魅力的に思えます。この小説には、笠井が自分のハード・ボイルド観を実作で試みてみた面があるのではないかな。
もちろん、HIV感染症でもあった意識不明状態の妻に対する主人公の関わりとか、いかにも笠井らしい切り口もみえます。
『道 ジェルソミーナ』は「私立探偵飛鳥井の事件簿」2冊目で中編集。「小説の醍醐味は長編」と公言し、短編集も1冊だけの笠井にしては珍しい中編連作4作が収められています。そこのとこも注目の1冊。
そう言えば、飛鳥井ってアメリカ国籍なのかな? 結婚や就業もしてたしアメリカ国籍取得してても不思議でないけど。今度1冊目の長編も読み直してみましょう。
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